ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

Vol.12 エチオピア人と犬のしつこい要求の止めさせ方の意外な共通点

ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。


2016年12月中旬から約1ヶ月かけてエチオピアを旅しました。
エチオピアの自然は雄大で火山の火口からマグマを間近で見た時は地球の鼓動を感じ地球は生きているんだと実感が湧きました。

このように力強く生きているのは、人も同じで、様々な勧誘が非常にしつこく、自分の利益ためには平気で嘘をつく、いらない親切に対してお金を要求してくるなど旅行者にとっての1つの楽しみである、現地人と楽しくコミュニケーションをとりながら旅をするということがやりにくい国でもありました。

エチオピア人から受けたしつこい要求を止めさせる1番効果があった方法が、犬のしつこい要求をやめさせる方法と同じだったので今回はそのことについて書こうと思います。

暇だ遊んでよ、お腹減ったご飯はまだ?そろそろお散歩行こうよ、など犬は様々なことを飼い主に要求してきます。要求をお知らせする方法も、犬により様々です。例えば、ジッと飼い主の目を見つめる子、飼い主のひざを軽く引っ掻く子、吠える子、軽く噛む子などなど。
飼い主に要求するということは、犬からこの人ならなんとかしてくれるという、ある種の信頼の現れでもありますが、その要求が叶えられない時に起きる、要求をお知らせする方法がしつこいと困る場合があります。
例えば人がご飯を食べていると、それが欲しくて、くれるまで長時間でも吠え続けたり、遊んで欲しい時にしつこく飛びついたり甘噛みしたりなど、近所迷惑になったり誰かを傷つける方法だと困ります。

そんな時、どのように対応するのが良いのでしょうか?

話はエチオピアに戻ります。

私達はエチオピアにいる間中、一部の人間から様々なしつこい勧誘(要求)を受け、とても困りました。
『ハロー。どこに行くの?』から始り、何を話しても根底にあるのは、お金や物が欲しいという要求でした。
彼らは外国人からどうしたらお金を少しでも多く取れるかしか考えていませんでした。
もちろん良いエチオピア人もたくさんいましたが、自分から話しかけてくる人の大半は、頼んでもないのに着いてきて、ガイドをしたのだからや、勝手に様々な交渉を行いお金を要求してくるものでした。

子供はもっとストレートで、『ギブミーマニー』と繰り返しながらずっとついてきます。

『必要ないよ。』とか『お金持ってないからごめんね』など、優しく断っても効果はなく永遠に着いてきて要求し続けます。
あまりにしつこい場合は、怒鳴ったり睨んだりして威嚇しても、全然効果はなく、要求を叶えようとする行動は更にエスカレートするばかりでした。

それは、優しく断ろうが怒鳴ろうが、相手からすると自分の行動が、私から何らかの反応を引き出したことになり、要求を叶えるための第一段階の『相手からの注意を引く』に成功したことになるからだと気づきました。

ですので、ある日から『どこ行くの?』と話しかけてきた時点から、相手の方を見ることもなく心を無にして、完全に無視し前方だけみて歩き続けることにしました。
追いかけてこられても、何を話しかけられても完璧に無視です。相手がいないかのように振る舞います。
実はこの無視に関して私は、とても下手くそで主人は完璧にやってのけたので、主人にしつこく着いてくることはなくなったのですが、私はしばらく、しつこくつきまとわれました。

それというのも、最初に話しかけられた時に、もしこの人が良い人で無視したことで相手が傷ついたらどうしようなど考えてしまって、相手の方を見てしまったり、最初の挨拶さえも無視するのってどんな相手に対しても失礼なのでは?と考え、最初に挨拶だけはしてしまったり、あまりに相手がしつこいと、根負けして質問に答えてしまったり、相手の方を見てしまったり、心の底では相手のことを考えてしまったりと、完璧な無視ができていなかったのです。
まして子供に関しては、ついつい構ってしまっていたのです。

主人は心を無にして歩くことだけを考える、途中で出会ったポーランド人は、イヤホンで音楽を聞きながら歩き、外からの刺激を完全にシャットダウン、フランス人は子供に『ギブミーマニー』と言われた時、その子の方は一切見ず歩き続けながら、『No』と1言いっただけでした。
私にはずっと着いてきた子供でしたが、その対応で一瞬のうちにフランス人から離れ私の元に帰ってきました。

無視は、要求が始まった最初から一貫して行わなければ意味がありません。ましてや、途中で反応することは相手にしつこくすれば相手の注意を引けると学習させ、行動をよりしつこく行うように導いてしまいます。

犬の要求に対しては完全に無視できた私ですが、人に対してはいろいろと考えてしまい、完璧な無視を行うのはかなり難しかったです。
このように、全員が完璧に無視するという対策をとらないのも、エチオピア人がしつこくなる要因の1つなのでしょう。

犬の場合も要求に対して無視することだけが正解ではない場面もあります。
もしかしたら、突然はじまった激しい要求やしつこい要求は、病気のせいかもしれませんし、普段から栄養や運動が足りていなかったりと健康に生活する為の要求が満たされていないからかもしれません。そういう場合は、普段から要求をしっかり満たしてあげる必要もあります。

ですが、事前にその犬の行動をしっかり観察して原因によってはもっとも無視が有効的な手段になります。
無視を上手に行うポイントをまとめました。

  • 無視をする場合は、最初から一貫して相手が諦めるまで行う。
  • 途中で根負けしてしまうのであればやらない方がましです。行動は更にエスカレートする場合あります。
  • その為には、無視できる環境をこちらが作り、行う必要もあります。
  • 完璧な無視は要求に応えないだけではなく、相手の方を見ること、考えることも含め一切やめ、無になること。

このように、有効的な対策は、正しく行うことも大切です。
困った行動に対しての対応は無視だけでは決してありませんが、今まで無視がうまくいかなかった人へ少しでも参考になれば嬉しいです。

結局1カ月滞在したエチオピアでしたが、私が完璧な無視を行えた日は一度もなく、出国するまでしつこいエチオピア人の勧誘(要求)を上手にかわすことは出来ないままでした。
もちろん完璧な無視を行った主人に付きまとうエチオピアはいなくなりました。

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プロフィール

磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。

Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana

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