ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!
Vol.34ドッグレースとは?ベトナムのアミューズメントパークに見に行き感じたこと
299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。
2017年1月中旬からの15日間ベトナムを旅しました。
ベトナムと言えばハロン湾やフォー、コーヒーが有名です。
ベトナムのフォー
また、交通手段にバイクが使われることが多く、道路はバイクだらけで道路を横断するのが毎回、一苦労でした。
縦に長い国なので私達は、南の「カントウ」から入り首都「ハノイ」まで北上しながら観光しました。
カントウには「ミーカン・ツーリスト・ヴィレッジ」というアミューズメントパークがあります。
そこでドッグレースが行われていると聞いて、見に行きました。
みなさんは、ドッグレースとはどのようなものかご存知でしょうか?
その名の通り、犬がレースを行いどの犬が勝つのか当てるギャンブルです。
言わば、犬が行う競馬のようなものです。
しかし、テーマパークで行われるドッグレースは賭博は行われない場合もあります。
私達が今回行ったところでも一応、お金を賭けることはできましたが、賭けている人はいませんでした。
ドッグレースは20世紀の初頭にアメリカで始まり全世界に広がりました。
しかし現在では、レースを行う犬に負担がかかること、怪我をした場合に殺処分されてしまうこと、レースに出る以前に足の遅い犬は殺処分されることもあることなど、動物愛護の観点から廃止すべきだという人々と、犬の本能を満たす為に続けるべきだという主催側との意見が対立しています。
更に、昔と比べると他の娯楽もあることからも、以前よりドッグレースを行う場所や回数は減少傾向にあります。
ドッグレースによく出場するのは、グレイハウンドという犬種です。
彼らは、ウサギなどの小動物を狩猟する為につくられました。
その為、動くものに敏感に反応し、追い掛ける習性が他の犬種よりも強いです。
またとても足が速く、走ることが好きな犬種です。
足が早いととても迫力があり、レースも白熱します。
しかし、この施設でドッグレースを行っていたのはMix犬達でした。
スタートの合図で、犬達が一斉に走り出し、コース内にあるトンネルを抜けたり、水池を渡ったりしてゴールしました。
コース内に設置された水池
複数の犬がじゃれながら、ゆっくりとゴールまで駆け抜けるという、本場のレースとは程遠いものでしたが、見ていてとても微笑ましいレースでした。
ドッグレーススタート
じゃれながら走る犬達
レースが終わると犬達はご飯がもらえます。
それをご褒美に、ゴールを目指していたのです。
ゴールした犬達は、レースに出ていない犬達と一緒にご飯を食べ、排泄を済ませた後は、ゆっくりとくつろいでいました。
レースが終わった後のご飯の時間
本格的なドッグレースは、トラックコースを半周か一周して約400mを走ります。
トラックコースの内柵のレールに兎の似せた小動物のぬいぐるみなどのダミーを走らせ、それを犬が追いかけることでレースを行います。
1レースに出場する犬は6頭程。
出走犬の能力によりクラス分けされたり、重量によるハンディがつけられたりします。
競馬のように、出走犬の経歴(これまでの成績やトレーニングの状況、最近の怪我など)や専門家による予測などが書かれたドッグレース専門の新聞が発行されている所もあります。
その新聞を参考にして賭ける犬を決め、馬券ならぬ犬券を購入し、勝った場合その犬券と交換で配当金が支払われる仕組みです。
ちなみに本格的なドッグレースは、ベトナムではブンタウで週2回開催されているそうです。
レースは凄いスピードで展開されるので、犬に過度な負担がかかり、脚に怪我を負う犬もでてきます。
怪我が重症だった場合は、引退したり(新しい飼い主に引き取られる)安楽死させられたりするそうです。
このような理由から、現在は、ドッグレースは失くすべきだと言う声が多くあがっていますが、引退した犬や怪我をした犬のケアや里親探しをしっかり行い、犬に過度の負担がかからない仕組みさえあれば、続けてもいいのではないかと私は思います。
現在は、ドッグレースを引退した犬の飼い主を探すボランティア団体も数多く存在し、ほとんどの犬が新しい飼い主さんを見つけることが出来るそうです。
また、レース用に作られた犬達は丈夫で、グレーハウンドは全ての犬が受けとれる型の血液を持っているとされ、献血犬としての役割を果たす場合もあるそうです。
一方、私が見に行った施設でドッグレースを行っていたのは、同じ犬種で統一されていなかったので、何かしらの理由で保護された犬達なのではないかと思います。
また、ゆっくり楽しそうに走っていたので、犬に負担になることは、なさそうです。
犬達の生活空間も見ましたが、自由に室内と野外を行き来できるようになっており、掃除もきちんとされていたので、比較的快適に生活出来ているように見えました。
犬達のいるスペース
捨てられたペットが増え、スペースや資金の問題で安楽死されることが、多くの国で問題になっています。
保護された犬達でドッグレースを行うことで、自分達の生活費を稼いでいるのです。
怪我する程の速いスピードは出ないし、ドッグレースは1日2回しか行われないし、犬の頭数的に毎日出走することはなさそです。
このような理由から、犬への負担はほとんどないように思いました。
現地の人に確認していないので、もしかしたら保護された犬達ではないかも知れませんが、飼い主のいない犬達を飼育する1つの手段とすれば、良い試みだと思いました。
たくさんの動物が毎日どこかで、捨てられています。
その動物を全て保護するには、莫大な資金が必要です。
みんなで知恵を出し合って、その資金を捻出できる良い仕組みがたくさん出来るといいなあと思います。
また、なんでも否定するのではなく、現在に合うようにアレンジすることも必要だと、このレースを見て感じました。
人と動物との関係は日々変化し、地域によっても様々です。風土にあった最良の方法をみんなで知恵を出し合って作っていけたらいいなぁと思います。
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プロフィール
磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。
Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana
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