ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

Vol.20 南アフリカ 宿の犬に持ってこいを教え2日で習得したトレーニングのコツとは

ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。


2017年5月末からの約2週間、南アフリカを旅しました。
エジプトから南下してきたアフリカ大陸の旅の最後の国です。
南アフリカに行く前から、いろいろな人に南アフリカは別格、現代的過ぎてアフリカというよりヨーロッパのようだと聞かされていたのですが、ケープタウンに着いてその言葉の意味を実感しました。
南アフリカ在住のヨーロッパ人も多く、私達が宿泊したホステルの何軒かもヨーロッパ人が経営するものでした。
そういうホステルでは、だいたい犬を飼っていて、犬達はホステルのマスコット的な存在になっていました。

南アフリカの代表的な観光エリアでもある、ガーデンルートの1つ『プレッテンバーグベイ』という町で泊まったホステルでも犬が飼われていました。犬種は、ボーダーコリーでした。

ホステルのボーダーコリー
ホステルのボーダーコリー

そのボーダーコリーにあることを教えたのですが、さすがはボーダーコリー。頭の回転が早く私達が滞在したわずか2日間でしっかり学習してくれました。

飼い主が投げた何かしらを拾って持ってくる「持ってこい遊び」が大好きな犬は、多いと思います。
ホステルにいたボーダーコリーもこの遊びが大好きで、私達が滞在してる間中、お気に入りの葉っぱを持ってきては、投げて!!と何度も遊びに誘われました。

葉っぱをくわえて遊びをねだる
葉っぱをくわえて遊びをねだる

しかし、投げたものを追いかけて咥えるまでは簡単に教えることができても、その後、それを持ってきて人の手に乗せて返してくれるまで出来る子は少ないと思います。
宿で出会ったボーダーコリーも、投げた葉っぱを追いかけて咥えて私の近くまでは持ってきてくれるのですが、数メートル手前に落として、もう一度投げてとアピールしながら次に投げてもらうのを数メートル離れて待っていました。

この子は、この遊びが大好きで、何度も繰り返すので、私はその度、葉っぱを拾いに行かなければならず、それが面倒だったので、持ってきたものを人の手に返すまでを教えることにしました。

そこで今回は、このボーダーコリーに教えたことを通じて、犬に何かを教える時のコツを書きたいと思います。

まず私がしたことは、自分が教えたいことを明確にすること。
犬に何か教える前に自分が何を教えたいのかゴールを明確にすることが大切です。
例えば、「○○しないように」ではなく、「○○するように」の方がゴールはっきりします。「いつでもどんな状況でも吠えないようになる」ではなく、「他の犬が隣にいても落ち着いていられるようになる」などです。
今回私が教えたいことは、『拾って持ってきたものを私の手の上に離してのせる』ことです。

これを教える方法は、いくつか思いつきます。
ですので、次にどういう方法で教えるのがこの子にとって受け入れ安いのかを探ります。
犬の性格も千差万別。その子によって受け入れやすい方法、受け入れにくい方法というものがあります。
別の子に教えた方法がこの子でも上手くいくとは限りません。
私は、持ってこい遊びをしながらいろいろと試してみました。

まず、投げるものが葉っぱでは、小さすぎて咥えた時に口にすっぽり入ってしまい、教えにくそうなので、庭に落ちていた枝やトイレットペーパーの芯など他のもので遊ぶことを試みます。
これなら、引っ張り合い遊びもできるので、引っ張り合いをしながら、『Off』の言葉で離すことを教えて手の上に返してもらうのはどうだろうと考えたからです。
引っ張り合いが楽しくなると、引っ張ってもらう為に咥えて手に渡してくれるようにもなるかなという狙いもありました。

しかし、その思惑はハズレでした。
この子の今一番のブームは、葉っぱを投げてもらうことだと分かったのです。
枝やトイレットペーパーの芯を投げても取りには行きますが、持って帰ってくるのは葉っぱなのです。

葉っぱを投げた時のどこに飛ぶかわからない、ヒラヒラしたのを追いかけて咥えるのが楽しくて仕方ないようでした。

葉っぱが落ちてくるのを狙いをさだめて
葉っぱが落ちてくるのを狙いをさだめて

葉っぱをキャッチ
葉っぱをキャッチ

また、引っ張り合いがあまり好きではないようでした。
これは、今回使ったのが枝やトイレットペーパーの芯など、硬いものだったからで、もしもぬいぐるみなどがあれば、楽しく引張っり合いができたのかも知れません。
また口の近くに手を近づけられることもあまり好きではなく、葉っぱをどこかに落とす前に手で受け止めようとしても、手が近づいた瞬間に、顔を背け逃げてしまう傾向がありました。
葉っぱを投げて欲しいという気持ちは強く、私を見つけると、葉っぱを運んできて目の前に落とし、自分は前に周りこみ、葉っぱと私の目を交互に見てアピールするのです。
目の前に周りこめない環境だと、葉っぱを咥えたまま、鼻で後ろからツンツンして、投げて欲しいとアピールします。

これらのことに目をつけ、思いついた方法で、教えることにしました。
それは、ベンチを使って教える方法です。

まずは、犬に背を向けて、机とセットになった横長のベンチに座り、犬のことを無視します。
机があって通路が狭いので、前に周り込んでアピールすることが難しい犬は、座っている私の後ろから鼻先で腰をツンツンとして遊んでアピールをしてきます。
私が振り向くと、葉っぱを落として投げてくれるのを待つのですが、それでも無視すると、私から少しでも見えるベンチの上に、咥えてきた葉っぱを落として遊んで欲しいことをアピールしてきます。
まさにこれが、私がやって欲しかった行動なので、犬がベンチに葉っぱを置いた瞬間、振り返り、葉っぱを投げ、遊んであげます。

ベンチと葉っぱをくわえたボーダーコリー
ベンチ と 葉っぱをくわえたボーダーコリー

これを繰り返すと、葉っぱをベンチの上に正確に置くようになります。
そうなると、犬の方に身体を向けて同じように対応します。
ベンチに葉っぱを置けなかった時も背を向けるのではなく、じっと無言で犬の行動を見るか、顔を背けて、無視をしながらベンチに葉っぱを置くのを待ちます。

最初は、葉っぱがベンチから落ちてしまっても、葉っぱを離したのがベンチの上で、ベンチの上に置こうとする意識があれば、拾って遊んであげますが、段々と葉っぱをしっかりベンチの上に乗せた時だけしか遊んであげないようにします。
持ってきた葉っぱをほぼ100%ベンチの上に置けるようになったら次の段階ですが、ここで一旦遊びを終了し、私達は観光に出かけました。

犬に何か教える時は、うまくいっている段階で一旦休憩するのも必要です。
やりすぎると犬の集中力もなくなり上手くいかなくなりドツボにはまってしまいます。
1時間、根を詰めて教えるより、10分~15分の学習を1日4~6回行った方が効率が良いです。

観光を終えて帰ってきたら、次の段階です。
私達が帰ってくると待ってましたとばかりに葉っぱを咥えてやってきました。
次の段階に行くのもいきなりではなく、復習から行います。
ベンチの上に葉っぱを置くようにさっきの段階を同じように踏みますが、さっき学習しているので、私が犬の方を見ていても、ベンチの上に葉っぱを置くことが出来るまで、さっきより時間が短くて済みます。

次の段階は、犬が咥えた葉っぱを手にのせるように、こちらが仕向けて成功させることです。
この子は口に手を近付けると顔を背けてしまう傾向がありました。ですので、自ら葉っぱを置くようになったベンチと犬の口の間に、葉っぱを離すタイミングで手を出し、手の上に葉っぱを乗せるように仕向けます。

最初は、手に葉っぱが乗らなくても、近くに手がある状態で葉っぱを口から出してくれたら、葉っぱを投げて遊んであげます。
徐々に葉っぱが手に乗った時だけ遊び、乗らない時は、落ちた葉っぱをもう一度手に乗せてくれるのを待ち、乗せてくれたら遊ぶようにします。

1日目は、これで終了し、2日目は仕上げです。

まずは復習から始め、昨日の最終段階、椅子においた手の上に咥えた葉っぱを離してくれる行動が、何度か続いて理解しているなと判断したら、レベルアップです。
次の段階は、ベンチがなくても手の上に葉っぱを乗せることを教えます。

それを教えるには、手を出す位置を段々とベンチから遠ざけて行き、ベンチにのせるのではなく、手の上にのせる意識に変えていきます。
ある程度できるようになると、遊ぶ場所もベンチの近くから色々な場所に変えていき、最終的には、どこで遊んでも咥えた葉っぱは、私の手に返してくれるようになりました。

最後葉っぱを投げたら
最後葉っぱを投げたら

手に返してくれるようになった
手に返してくれるようになった

今回、この行動を教えたのは完全に私の自己満足ですが、犬と向き合う過程で、この子のことをより深く知るきっかけになり、他の宿泊者よりも仲良くなれたと思います。

最後に、ここで出てきた『犬に何か教える時のコツ』をまとめます。


①犬に何かを教える時はまず、何を教えたいのか明確なゴールを具体的に設定します。

②次にどのように教えるのが一番その犬が受け入れやすいのかを探ります。1つの教え方にこだわらず柔軟に変更することが大切です。

③出来た時のご褒美はどんな物が適切かを探ります。この子の場合、葉っぱを投げてもらうことが、1番の楽しみだったのでそれを活用しました。

④ご褒美は、その行動ができた直後に与えましょう。タイミングがずれると、何の行動対してご褒美がもらえたのか曖昧になってしまいます。

⑤うまくいっている場合も、1回の練習時間は5分~15分程度に留めておきましょう。犬が飽きて終了ではなく、もっとしようよと思っているうちに終えることが大切です。

⑥休憩をはさんだら、必ず前回の復習から始め、次の段階に移ります。

⑦教える段階は出来るだけ細く、少しずつレベルアップできるように工夫してあげましょう。いきなり難しくしてしまうと、ご褒美をもらえるチャンスが少なくなり、集中力が持たなくなってしまいます。


他にもコツはたくさんありますが、今回はこの7つを紹介しました。愛犬との関係を築く上で何かしらのヒントになれば嬉しいです。
何か教えることで、愛犬との対話をぜひ楽しんで下さいね。

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プロフィール

磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。

Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
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