ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!
Vol.37 ミャンマー続編 パピーに教えたら良い3項目の教え方
299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。
今回は始めての続きものです。
前回のコラム「ミャンマーの宿にいたシェパードの子犬に教えた5つのこと」では、ミャンマーのバガンで宿にいたシェパードのラッキーに教えた項目と、なぜそれを教えるのかについて書きました。
今回のコラムはその項目の教え方について書きたいと思います。
ちなみに、ラッキーは、700,000チャット(55,300円)でブリーダーから購入し、毎日ご飯に鶏肉をもらってるようです。
一食150円で食べれるミャンマーでの55,300円は、日本の物価に換算すると20万円程の価値があります。
また、決して裕福な国ではないミャンマーで毎日、鶏肉を食べるのは贅沢です。
ミャンマーでシェパードを飼うことは、お金持ちであることの一種のステイタスでもあるようです。
ラッキー
ラッキーに教えた項目は以下の通りです。
①くわえているおもちゃを「オフ」の号令で放すこと
②興奮していても、こちらの合図で落ち着くこと
③大人しく身体のどこでも触らせること
④お座り
⑤持ってこい
今回はこの中から特に重要な①から③の項目をどのように教えたかについて書きたいと思います。
※なぜこの項目が大切なのかは、前回のコラムをご覧下さい。
Vol.36 ミャンマーの宿にいたシェパードの子犬に教えた5つのこと
まず何かを教える前にラッキーとコミュニケーションをとりながら、ラッキーはどんなことが好きなのか?苦手なのか?どんなことに反応するのか?を探ります。
どうやらラッキーは引っ張りあいや、触ってもらったり構ってもらうのが大好きですが、興奮しやすくじっとするのが苦手のようです。
まずは、コミュニケーションとエネルギーの発散も兼ねて引っ張りあいの遊びを楽しく行う為に「オフ」を教えることにしました。
①くわえているおもちゃを「オフ」の号令で放すこと
引っ張りあいが好きな犬に「オフ」を教えるのは比較的簡単で、ぜひ教えて欲しい項目の1つです。
1:まずは、おもちゃ(今回は空のペットボトルを使いました)で押したり引いたり動かして、楽しく遊びます。
ペットボトルを返してくれるように教える
引っ張り合い遊び
2:ラッキーは引っ張ってもらうのが好きなので、こちらが引っ張らなくなると、つまらなくなって引っ張るのを止め、おもちゃを離します。ですので、「オフ」の合図でおもちゃを動かさないように、自分の身体にくっつけ、自然と離すまで待ちます。
※ここでのポイントは、少しもおもちゃを動かさないこと。その為に自分の身体におもちゃをピッタリくっつけ無言で、根気よく待ちます。
離すまで動かさない
3:ラッキーが、おもちゃを離したら、褒め言葉を言い、すぐにおもちゃを動かし遊んであげます。
※おもちゃを動かしてもらうことが、おもちゃを離したご褒美になります。
これを繰り返すことで「オフ」の合図で、おもちゃを離してくれるようになります。
②興奮していても、こちらの合図で落ち着くこと
これは遊ぶ時と落ち着く時のメリハリをつけることで教えます。
1:引っ張りあいである程度遊んだら、「おしまい」(号令は何でも構いません)と言いおもちゃを片付けます。
2:ラッキーはまだ遊びたくて、飛びついたり、吠えたり引っ掻いたり様々なアプローチをしましたが、それらは全て無視し、そっぽを向きラッキーと目を合わさないように無視します。
※この時、余分な動きをしないように注意します。少しでもラッキーのアプローチに反応してしまうと、自分のアプローチは有効であると判断し中々落ち着かなくなります。
3:興奮していたラッキーが落ち着いたら、毛並みにそって、ゆっくり優しく撫でます。
※ここで、ラッキーが興奮して手に戯れてきたら、撫でるのをやめそっぽを向いて無視をします。今は遊ぶ時間ではないし、こちらは遊ぶ気分でもないから遊ばないという態度を徹底します。
これを行うことで、いつも遊んでもらえる訳ではないということ、「おしまい」は遊びを終えて落ち着かなければならないことを学習します。
③大人しく身体のどこでも触らせること
最初は、犬が元気一杯でエネルギーが余っている時ではなく、疲れている時に行う方が良いです。
1:ラッキーに手の匂いを嗅がせたら、その流れでラッキーの頬辺りから尻尾に向けて(毛並みにそって)ゆっくり撫でます。
2:犬は尻尾やマズル、耳、足先など先端が敏感で触られることが苦手な子が多いです。
ですので、ゆっくり毛並みにそって撫でながら、さり気なくラッキーが苦手な部分に近付けていきました。
※素早くではなくゆっくり撫でるのがポイントです。また、こちらが息を止めて緊張すると犬も緊張するので優しい声をゆっくりかけながら行うと良いでしょう。(興奮させるような早口で甲高く、大きな声は逆効果です。)
3:最初は先端部分の手前をさりげなく、少しだけ撫でて、ゆっくり離れます。
日々少しずつ先端まで触れるように距離を縮め、触る時間を長くしていきます。
※この時にしっかり犬の反応を見ながら触ることが大切です。少しでも嫌そうな反応を見せたら嫌がって暴れる前にさり気なくやめ、他の嫌ではない所を触ります。
今回は各項目の導入部分だけ書きましたが、それぞれの項目でレベルアップがあります。これが出来たら、少しずつ難しい状況でも出来るようにレベルアップしていきましょう。
ラッキーに教えたのは、たったの3日間でしかも、私は大半の時間を観光していたので、1回に構う時間は15分程度を1日2、3回でしたが、オフで離すことは1日目で習得しました。
お終いで落ち着くことは、「お終い」と言われてから落ち着くまでの時間が日々早くなっていきました。
身体のどこでも触らせる項目は、まだまだジッとする事が苦手なので難しいですが、1日目より3日目の方がゆったり触らせてくれる時間が長くなりました。
大人しく触らせてくれるようになったラッキー
犬に何かを教える時は、すぐに完璧を求めず時間をかけて、根気よく続けてあげることが大切です。
また、楽しく優しく一貫性を持って様々な場所で行ってあげて下さい。
バックナンバー
プロフィール
磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。
Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana
こちらもおすすめ
バックナンバー
- Vol.45 世界一周わんっ!ワールド!!最終回
- Vol.44 昔ながらの生活をするモンゴルの遊牧民族と犬事情
- Vol.43 過酷な環境で活躍するイスラエル原産の地雷探知犬
- Vol.42 韓国の天然記念物にも指定されている珍島犬
- Vol.41 ドイツの動物保護施設ティアハイムを訪れて知った殺処分の現状
- Vol.40 リシュケシュ ヨガアシュラムの犬においでを教えてみたら
- Vol.39 ポルトガル刑務所が経営するドッグホテル
- Vol.38 タイとミャンマーの犬事情と仏教との関わり
- Vol.37 ミャンマー続編 パピーに教えたら良い3項目の教え方
- Vol.36 ミャンマーの宿にいたシェパードの子犬に教えた5つのこと
- Vol.35 バリ島原産のユニークな名前を持つキンタマーニドッグと島内のペット事情
- Vol.34ドッグレースとは?ベトナムのアミューズメントパークに見に行き感じたこと
- Vol.33 ヒンドゥー教からイスラム教の国へ。宗教の違いと人と犬との関係
- Vol.32 インドの流行りはパグ??宿の主人から聞いたインドの犬事情について
- Vol.31 野良犬だらけのインドでアニマルレスキューの活動に参加しました。
- Vol.30 マラウイ 空気が読める賢い犬『トロさん』
- Vol.29 ドッグショーとは??インドのドッグショーを見学しました。
- Vol.28 グアテマラ 織物教室の犬『カピ』のきままな1日
- Vol.27 ヨガの"緊張"と"リラックス"から学ぶ行動を教えるヒント『吠えろ』と『静かに』
- Vol.26 南インド ヨガを習って実感した犬の躾の基礎はインターネットや本ではなく直接プロに習う方が良い理由
- Vol.25 南インド サイの行動から見た犬の予測行動について
- Vol.24 スリランカ 西洋医学と東洋医学から愛犬の健康を考える
- Vol.23 南アフリカ サーバルキャットに行っていたクリッカートレーニングとは?
- Vol.22 スワジランドで出会った珍しい犬種ブーアブル
- Vol.21 南アフリカ 狼の保護施設で考えた狼と犬の違いについて
- Vol.20 南アフリカ 宿の犬に持ってこいを教え2日で習得したトレーニングのコツとは
- Vol.19 ザンビアのサファリで出会った絶滅危惧種『アフリカンワイルドドッグ』
- Vol.18 フィンランドのホストから聞いたEU圏内のペットとの旅行事情と便利なペットパスポート
- Vol.17 興味深い歴史的背景を持つジンバブエ原産の犬『ローデシアン・リッジバック』
- Vol.16 お金がないと犬を飼えない? ウガンダで出会った女性の一言から考えた犬を飼うということ
- Vol.15 ザンジバル島へ行く船の中で考えた犬の乗り物酔いのメカニズムと対策
- Vol.14 ケニアの象の孤児院で感じた犬を人に慣れさせるということ
- Vol.13 ペルーで毛のない不思議な犬種と出会い、彼らについて調べてみました。
- Vol.12 エチオピア人と犬のしつこい要求の止めさせ方の意外な共通点
- Vol.11 アメリカで出会ったパグの補助犬のお仕事とは?
- Vol.10 アルゼンチンの動物園で意外な役割を担う犬達
- Vol.09 世界大会で何度も優勝経験のあるカナダのグラントさんに聞いたソリ犬の話
- Vol.08 ペット先進国で見た犬とのお出かけ事情
- Vol.07 イスラム教が深く影響しているイランのペット事情。
- Vol.06 アフリカでも活躍するカンガルドッグの素晴らしい能力
- Vol.05 夏のお出かけにご用心!!愛犬と一緒に出かける前に考えて欲しいこと。
- Vol.04 注意!!かわいい子犬に安易に近づいてはいけないその理由。
- Vol.03 ブルガリアで野良犬とハイキングして考えた人と犬との関わり
- Vol.02 トルコの固有種は大きくてアグレッシブな犬だった。
- Vol.01 はじめに。