ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

Vol.27 ヨガの"緊張"と"リラックス"から学ぶ行動を教えるヒント『吠えろ』と『静かに』

ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。


前回も書いたように、南インドのニアルダムにある『Swami Sivananda Yoga Ashram』で24日間ヨガを学びました。

ヨガでは、最初と最後、また、動作と動作の合間に、リラックスして休みます。リラックスするのは、基本中の基本とも言えます。
しかし、完全にリラックスするのは、一番難しいと言われています。リラックスの状態を理解する為には、リラックスしている状態とは反対の、緊張している状態を知る必要があります。それを知る為に、一番最後に身体の様々な部分をわざと緊張させてから、リラックスさせていきます。

これは、犬に何かを教える時にも言えます。

例えば、吠えずに静かにしている状態『静かに』を教える為に、まずはその反対の吠えている状態『吠えろ』を教えることがあります。吠えるのが好きで吠えてしまう子や暇つぶしで吠えてしまう子に吠え止んででもらう為に、また、吠えて良い場所や状況、吠えて悪い場所や状況を教える為に、『吠えろ』と『静かに』をセットで教えることがあります。

愛犬が退屈になると吠えるので、近所迷惑になって困るとトレーニングの依頼を受けた犬に、『吠えろ』と『静かに』を教え、家で吠えた時には『静かに』で静かにしなければならない場所を教え、散歩で広場に来た時に『吠えろ』で吠えさせることで吠えて良い場所と悪い場所を理解してもらったことがあります。
もちろん、これらの号令を教えるだけでなく、吠えるのは複数の要因が重なっている場合があるので、吠える原因を追求し、エネルギーを発散させたり、苦手なものを克服するなど様々なアプローチが必要ですが、今回はその方法の1つ、『吠えろ』と『静かに』の教え方に重点をおいてコラムを進めていきます。

『吠えろ』と『静かに』ですが、まずどちらを先に教えたら良いのでしょうか?

ヨガのクラスでは、リラックスした状態を感じる為に、身体を緊張させることを先に行いました。それと同じで、何かをしている状態の方が明確で分かりやすいので、先に吠える行動を教え、犬がその号令を理解したら次に『静かに』を教えます。

ただここで1つ問題があります。最初に吠えることを教えるので、犬がしっかり『吠えろ』と『静かに』を理解するまでは、今までよりも吠えやすくなるということです。これは、『お座り』を覚えたての犬が、自分の要求がある時や、飼い主がお座りを望んでいない時も『お座り』を繰り返すのと同じです。
しかし、犬がしっかり号令を理解すると、そんな心配はありません。静かにして欲しいから、『静かに』の号令を教える過程で一時的に吠えやすくなることを理解しておいて下さい。

それでは、教え方です。

①まずは、『吠えろ』を教えます。犬が吠える状況をわざとつくります。例えば犬をつないで離れる、おもちゃやおやつを持ってじらすなどです。

②犬が吠えたら、吠えている時に「吠えろ」といい(この時に吠えろの合図のハンドサインをつけても構いません。私は自分の口の横で片手をグーパーさせる合図を使っていました)その後すぐに「good」や「そう」など正解の合図を言い、ご褒美(おもちゃやおやつなど犬が喜ぶもの)を出します。

③②を何度か繰り返し、犬がある程度理解できたと思ったら、吠えている時ではなく、吠えそうな時に「吠えろ」と言い、吠えたら「good」→ご褒美を出す、を何度か繰り返します。

④次は犬が吠える状況を作るのではなく、普通の状態で、でも犬が吠えそうな時に「吠えろ」と号令を出し、吠えたら「good」→ご褒美を出す、を何度か繰り返します。(リラックスしている時よりも興奮している時の方が犬は吠え易いです。)

⑤今度は犬がまったく吠えなさそうな状況で、「吠えろ」と号令を出し、吠えたら「good」→ご褒美を出す、を何度か繰り返します。

⑥様々な状況や環境で「吠えろ」の号令を出し、吠えたら「good」→ご褒美を出す、を何度か繰り返します。

⑦犬が「吠えろ」の号令をしっかり理解したら、いよいよ『静かに』を教えます。
『吠えろ』の号令で吠えた後、必ず一息ついて吠え止む状況があります。その時にすかさず「静かに」と言い(この時に静かにの合図のハンドサインをつけても構いません。私は自分の口の前に人差し指をくっつけた合図を使っていました)その後すぐに「good」→ご褒美を出す、を何度か繰り返します。

⑧最初は一瞬でも吠えなければご褒美をあげます。それからだんだんと吠えない時間(静かにしている時間)を伸ばして行きます。

「吠えろ」 → 吠えた → 「good」 → ご褒美 → 吠えていない時に「静かに」 → 一瞬でも静かにしていた(2秒静かにできた→3秒、4秒、5秒、、、) → 「good」 → ご褒美

⑨次は犬が吠えている状況で、「静かに」と号令を出し、犬が吠え止んだら「good」→ご褒美をあげます。最初は一瞬でも吠え止んだらご褒美をあげ、徐々に静かにしている時間を伸ばしていきます。

⑩様々な環境や状況で練習します。

これで、『吠えろ』と『静かに』の号令を犬が理解しました。犬の興奮状態を落ち着ける『静止』も教え方は同じです。どちらも生活に役立つ号令ですので、今回の内容を応用して教えてみて下さい。
そして、ぜひ愛犬に様々な状況で、人間社会で暮らす為のルールを教えるのに役立てて下さい。

愛犬との対話する手段が増え、お互いに理解し合えるきっかけとなりますように。

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プロフィール

磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。

Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana

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