ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

Vol.25 南インド サイの行動から見た犬の予測行動について

ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。


2017年7月初旬から8月後半までの約2ヶ月南インドを旅しました。スリランカから、南インドのマドゥライ空港に飛行機で到着し、最南端のカーニャクマリからインドを北上することにしました。

インド人の約80%はヒンドゥー教徒です。カーニャクマレはヒンドゥー教の聖地の1つなので、たくさんのインド人旅行者が訪れていました。
カーニャクマレの次に向かった町『トリバントラム』で、動物園に行きました。

そこで見たサイの行動が、犬にも当てはまるなぁと面白く感じたので、今回は、そのことについて書きたいと思います。

動物園の名前はそのまま『Tiruvanthapuram Zoo』。そこには、インドサイが飼育されていました。アフリカでアフリカシロサイ、クロサイと両方見ましたが、インドのサイはそれとはまた違った風貌で、まるでプラモデルや恐竜のような身体付きに、思わず見入ってしまいました。
私達が訪れた時、サイはご飯の葉っぱを、ゆっくりゆっくり一生懸命食べていました。

そんなサイが突然、耳をピクピク動かし、動きを止め、何かしらに集中したかと思うと、一目散に早足でバックヤードの方に歩いて行き、見えなくなってしまいました。あんなに一生懸命、ご飯を食べていたのに、突然どうしたんだろうと思っていたら、すぐに謎が解けました。
サイがバックヤードに入った後、しばらくしてから、ご飯を乗せたトラックがやってきたのです。普段から置かれている葉っぱよりも、もっとおいしい食べ物が届いたのだと思います。サイはこのトラックが来ることを予測して動いたのです。

では、なぜサイはトラックが来ることを予測できたのでしょうか?

サイが動きを止める前、係の人がこれから来る車がバックヤードに入れるように、バックヤードに続く道を塞いでいる鎖を外しました。その時、ジャラジャラと鎖が外れる音がしていたので、おそらくサイはその音を聞き、トラックが来ることを予測して動いたのだと思います。

この動物園では夜間、動物達をバックヤードで寝かせるので、閉園直前にバックヤードでご飯を食べさせることで、動物達をバックヤードに呼び寄せているのだと思います。
最初はサイをバックヤードに入れる為に、飼育員がサイにご飯を見せて、ご飯の時間を知らせ、呼び寄せていたのかも知れません。でも日々繰り返すことにより、ご飯を見せなくても飼育員が見えただけでサイが自らバックヤードに戻るようなり、そのうち、車がバックヤードの前に着いたら戻るようになり、車が見えるか、音がしただけで戻るようになり、今では車が来る前に鎖が必ず外れるということまで学習して、その音に反応して行動するようになったのだと思います。

このように、動物は自分に関係のある出来事の前に、何が起きたのかをきちんと把握し、予測して動くようになることがあります。

これを犬の行動で見てみましょう。
例えば、散歩に行こうと飼い主が立ち上がっただけで、早く行きたくて興奮して騒ぐ犬や、行きたくなくてどこかに隠れる犬がいます。
最初は、全ての準備が終わって玄関を出て初めて散歩だという認識を持ったはずですが、段々とその前に何が起きたかを考えるようになります。

・首輪やリードが自分に着けられたら
・お散歩セットを飼い主が持ったら
・お散歩セットが置かれている場所の前に飼い主が立ったら
・お散歩セットが置かれている場所に、飼い主が向かったら
・お散歩の時にいつも同じ帽子や上着を着ていくなら飼い主がそれを羽織ったら
・お散歩前にお化粧する習慣がある人は飼い主がお化粧をし始めたら、又はそこに向かったら

このように、お散歩に行く前の前の前の・・・行動は何なのか犬はよく分かっています。
大好きなお散歩前になると、興奮する犬は多いのですが、玄関先で興奮した状態でお散歩に出掛けていると、その興奮も前の前の前の・・・行動の時から起こるようになり、興奮時間が長いとより興奮度もあがり、準備中ずっと吠えたり、ジャンプして近所迷惑になったり、玄関を出た瞬間からリードを強く引っ張り、飼い主にとっても犬にとってもしんどい散歩のスタートとなってしまいます。

こうならない為には、玄関の前で犬を座らせるか、まだお座りを覚えていない子は、立ったままでも良いので大人しく動きを止めた状態になってから玄関の扉を開けるようにしたほうが良いです。吠えたり動き回ったりしている間は、玄関の扉を開けないようにします。
マンションで飼っていて、抱っこで外まで出ないといけない場合は、抱っこで暴れている間は玄関から出ないようにし、落ち着いて初めてお散歩に出かけます。外に出て、抱っこから地面に下ろす時も同じです。暴れている状態ではなく、大人しい状態で初めて地面に下ろし、散歩をスタートさせます。下ろしている途中に暴れだしたら、最初に抱っこした位置まで抱き上げ、やり直しです。

お散歩は犬にとって、とても楽しみな出来事の1つです。喜ぶのはとても微笑ましいのですが、過剰な興奮は飼い主にとって困った行動の原因になり兼ねません。悪い行動の癖がついてから改善するよりも、悪い癖がつく前に予防する方が遥かに簡単です。
特に子犬の時から良い習慣を付けておくことで、悪い習慣がつくことを予防出来ます。

また、散歩中ずっと興奮状態だと、散歩=興奮することになってしまいます。ですので、公園を歩いたり原っぱで遊んだ後にベンチなどに座り、ゆったりした時間を過ごしてから帰ったり、帰り道に誰かと少し立ち話しなどをすると良いでしょう。(立ち話中もしっかり犬の様子は見ておきましょう。)
散歩中、しっかり遊ぶことも大切ですが、とにかく散歩中、犬がずっと動いたままの状態ではなくゆったり止まっている時間も作って欲しいのです。

もうすでに、前の前の前の行動から先読みして興奮が抑えられない時は、お散歩に行くまでの自分の行動の順番を変えるなどして犬に予測させないようにしている間に、良い習慣をつけましょう。

留守番も同じです。
飼い主の些細な行動から、もうすぐ出かけることを犬は察知します。この時、もう飼い主は構ってくれないと予測して、寝に行く子もいれば、飼い主に行って欲しくなくて騒ぐ子もいます。
スーツ姿で出る時は大人しく見送る犬も、私服だと、一緒に連れて行ってと騒ぐ子もいます。それはこれまでの経験で、スーツ姿だとお留守、私服だと散歩に連れて行ってもらえる可能性が高いと学習しているからです。

犬がなぜ次の自分の行動を知っているのか?と疑問に感じたら、自分がその前に何をしていたのか辿って行くと良いでしょう。自分が思いがけず、ルーティーン化している行動に気付ずき、犬がどこに注目しているのか知ることは、とてもおもしろく犬を理解する1つのきっかけとなるでしょう。

動物は私達が思っているよりずっと観察力があり、自分に関係があることに関して、素晴らしい学習能力を発揮します。
それを理解して良い行動を習慣化すれば、今よりもっと、犬との生活が楽しくなると思います。

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プロフィール

磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。

Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana

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