ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!
Vol.07 イスラム教が深く影響しているイランのペット事情。
299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。
2016年8月下旬から約1ヶ月間イランを旅しました。
イランに入国するにはビザを取得する必要があります。
私達はジョージアにあるイラン大使館でビザを取得しました。
そこでたまたま出会ったイラン人の家に旅行中大変お世話になりました。イラン人はとても親切でたまたま出会った人と連絡先を交換して家に招待してもらうこともしばしばありました。その為、現地の人達とたくさん会話をする機会に恵まれ、私達が思っていたイランのイメージと現実は異なることに気づきました。
今回は宗教とも密接に関係するイランのペット事情についてお伝えしたいと思います。
イランの国教と言えばイスラム教。
国教を定めているイランでは宗教の教えがそのまま法律になります。
イスラム教の教えによると、匂いのするもの大きな音をだすものなどはけがらわしいものとされていて、30年前革命がおき、国教がイスラム教になって以来、犬を飼うことは法律で禁止されていました。(ちなみに猫を飼うことは法律上問題ありません)
昔は豚肉を食べたり犬に噛まれて亡くなることが多かったので命を守るための教えでもあったのでしょうが、衛生環境の整った現在にはあわない教えになってきたのか、段々と取り締まりも厳しくなくなり、少しずつ犬飼う人も増えてきたようです。
特に元々はゾロアスター教だった北部のほうは仕方なく国教に従っている人が多く、南部に行く程忠実にイスラム教の教えを守っている人が多いそうです。
その為かイランの北と南ではペットを飼うことに関しても明確な違いが見えました。
北部の町ラシュトでお世話になったホストはココという名のシーズーを飼っていました。
ココちゃんはお散歩が大好きで毎日のお散歩時間を楽しみにしていてお散歩という言葉に喜んで反応します。
ただ法律上、犬を飼うことは禁止されているので、堂々と公園に散歩に行ったり、一緒に旅行したりは難しいようです。
首都のテヘランでは、犬の幼稚園も存在するそうですが、ペットと一緒に泊まれるホテルなどはないようです。
また、ホストの友人も犬を飼っており、犬の為に首都テヘランから郊外の町に引っ越し大きな庭つきの家でハスキー2頭と路上で保護したMix犬を飼っています。
ラシュトの中心地から離れた田舎のほうなので近くの湖まで一緒に出かけ、泳いだりと遠出はできないものの、自分達に出来る限りで犬との生活を楽しんでいました。
一方、南部の町ファサでお世話になったホストにペットを飼うことについて話しをきくと北の人達とは違う答えが返ってきました。
そのホストによるとペットを飼うことは問題ないと思う。なぜなら実際に牧羊犬だったり警察犬、災害救助犬など働く犬はたくさんいるから。
でも飼ってる犬が病気になることが問題。犬が病気になると不衛生で特に女の人には良くないらしく奇形児などを産む原因になると信じられている様子でした。
その為、病気になったら手放すのだそうです。イランでも動物病院は存在します。病気になったら連れて行って治ったら問題ないのでは?と聞くと一度病気になった犬は再発する可能性が強いので飼えないのだそうです。
また庭で飼うのはいいけれど、室内で飼うことは衛生上の問題からありえないとのことでした。
そのホストの家では、家の中でもヒジャブを被る程、信仰心の強いほうのイスラム教徒でした。(大抵の家は家の中ではヒジャブ脱いで服も着替えてねと家に入るとすぐに言われました。)
イスラム教では犬は汚らわしいものとされていること、清潔にすることも大切な教えの1つであることが関係しているのでしょう。
このように犬を飼ってはいけないと法律で決められているイランですが、なんとペットショップでは暗黙の了解でパピーや犬用品を販売しています。
さらにシェルターも存在します。シェルターは、5,6年前に国から活動する権利を勝ち取って運営しているのだそうです。
もちろん迷い犬の保護や飼えなくなった犬の新しい飼い主を探すことなどもおこなっていますが、イランのシェルターと日本のシェルターとの大きな違いは、路上で生活している野良犬が弱っていたりするのを連絡して持ち込み治療して治ったらまた同じところに放すのが主な役割なのだそうです。
日本では毎年何万頭も殺処分されている犬がいると話すとなぜそうなるのか本当に理解できないようでした。
イランでは本当に飼いたい人だけが飼う前によく考えて犬を飼い始めるからか、飼い犬をシェルターに持ち込む人はほとんどいないようです。
またそんな環境でも犬を飼うのは富裕層が多く、それに加えて人との結びつきが強いイランでは、誰かが犬を飼えなくなっても自分達のネットワークで新しい飼い主を見つけることができるので施設が一杯になることはないようで、場所がなかったりお世話をする人や資金が不足することは考えもつかず説明してもわからないようでした。(私の英語力の低さも原因の1つですが。。)
また飼うことへのハードルが高い為に犬を飼っている絶対値が低いというのもあるのでしょう。
ちなみに野良犬に関して政府は目をつぶっているところもありますが、政府に捕まると殺されるそうで殺処分がゼロという訳ではありませんが殺される犬の数は日本よりも低そうです。
外国に行くと宗教は何かと必ず聞かれます。日本にいると宗教に関してあまり意識せずに生活していましたが、世界の生活は宗教と密接に関係して成り立っています。宗教がペット事情とも大きく関係しているイランの事情を知れば知る程おもしろく、宗教とペットの関係について更に知りたくなりました。
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プロフィール
磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。
Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana
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