ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!
Vol.16 お金がないと犬を飼えない? ウガンダで出会った女性の一言から考えた犬を飼うということ
299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。
2017年1月下旬の10日間程、ウガンダを旅しました。
ウガンダと言ってもピンとこない人が多いと思いますが、ケニアの東に位置する小さな国です。
ウガンダは貧しい国の1つとされていますが、首都カンパラの市場は、今まで行った国の中で最も活気があると感じた場所でした。
ウガンダ最終日の夜は、カバレと言うルワンダとの国境の町で過ごしました。
その日の夜、地元民が集う、日本で言う居酒屋のようなお店に行きました。
そこで仲良くなった女の子の一言が印象的でした。
以前、お金がない人は犬を飼うべきではないというツイートが物議を呼びましたが、今回はそれにも関係する、女の子の一言から考えた犬を飼うことについて書きたいと思います。
女の子から言われた私にとって衝撃的な一言。
それは、『犬にご飯をあげる余裕があるなら自分達が食べる』です。
その会話の流れはこうでした。
それぞれの職業についての話の流れで『ウガンダの人は犬を飼っているの?』という私の質問の答えが『ウガンダでも犬を飼っている人はいるけれど、お世話はしないわ。セキュリティのためにいてもらうの。犬にご飯をあげる余裕があるなら自分達が食べる。食べ終わった骨をもらえる日があれば、その日はラッキーね。』でした。
この答えがウガンダの現状をよく表していると思いました。
ウガンダでは、その日のご飯も十分に食べられない人がいます。
タクシーに乗ってもすぐにお金を回収し、そのお金でガソリンを入れてから出発するなど、その日暮らしをしている人も多くいます。
その人達にとって、犬に高級なご飯を与え、服を着せ、学校に通わせて教育するなんてとても考えられないことです。
そんなお金や時間があるなら、自分達が食べるご飯を買い、子供達を学校に通わせ、そのお金を稼ぐための時間にまわすでしょう。
確かにエジプト、スーダン、エチオピア、ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダでは、野良犬・飼い犬ともにあまり見かけませんでした。
女の子の言う通り、あまり裕福ではない国では、犬を飼う余裕はないのでしょうか。
しかし、貧しい国の1つとされるマラウイでは犬を飼っている人に多く出会いました。
また、ウガンダの首都カンパラの屋台に、毎日愛犬と一緒に訪れるおじさんに出会いました。
おじさんは愛犬をとてもかわいがっています。
愛犬のことをベストパートナーだと言い、毎日お手入れをし、ご飯をあげ、一緒に出かけます。
犬の飼い方は、人や地域により、様々です。
ケニアのマサイ族の村でも犬を飼っていましたが、日本の飼い方とは違います。
犬は怪しい出来事が起きると人に吠えて知らせる代わりに、その周辺で自由に住んでもいいことを許可され(安全な寝床を手に入れ)、人間の食べ残しをもらったり、たまに犬用の食べ物ももらえます。
最初に犬が人と一緒に生活するようになった関係です。
同じケニアでも、ナイロビ市内では、そもそも犬自体を見る機会が少なかったのですが、リードなしで歩いている犬は一切見かけず、首輪とリードをつけ飼い主と一緒に歩いている犬を見かけました。
エジプトのダハブでは犬を飼うことがお金持ちの象徴となっているようで、エジプト人も白人の真似をして犬を飼うのよと、ダハブで暮らす日本人女性が話してくれました。
マラウイのホステルで飼われていた犬は、リードをつけられることなく、好きな時に外にでて好きな時に戻ってくるという生活をしていました。
町の人は、みんなその犬のことを知っていて自由に出入りすることを認めているようでした。
ドイツでお世話になったホストの妹は、犬に医療保険をかけ、高級なご飯を与え、犬のしつけ教室に通いまるで自分達の子供のようにかわいがっていました。
彼女が犬に多額のお金と時間を使うことに対して、私達のホストは信じられないと言っていました。
このように、どんな飼い方ができるか、どれぐらい犬に対してお金や自分の時間をかけてあげられるかは、地域や飼い主により違います。
日本でアフリカの田舎町と同じように犬を飼うのは不可能です。
元気に健やかに生活する為には、自分の大切なお金や時間を犬の為に割く必要があります。
それが生き物を飼うということ。
ウガンダで出会った女の子は、そんなお金や時間があれば自分の為に使いたいのでしょう。
それは決して悪いことではなく、彼女は犬を飼う事は犬に対して自分のお金や時間を割かなければならないことをきちんと理解しているのです。
そして、飼わない選択をしているのです。
飼う、飼わないを自由に選択できる中で、飼うことを選んだ瞬間から、責任が生まれることをしっかり理解して飼って欲しいと思います。
犬を飼う責任とは、最低限その犬が一生を終えるまで飼い続けること。
止むを得ない事情で飼えなくなった時は、代わりの飼い主を自分で見つけること。
その為には、誰が飼っても困らないように、普段から犬に教育をしておく必要もあります。
またその犬の生活の質の充実も大切です。
生活の質は人により考えは様々で追求すればきりがありません。
しかし最低限、安心できる寝床、健康を維持できる栄養のあるご飯や医療、お手入れ、運動、刺激、人間社会で暮らす為の教育の提供は必要です。
何度もいいますが、それらを提供するには、自分の大切なお金や時間を愛犬にかける必要があります。
物を買うことと違い、生き物を飼うということは、飼う瞬間だけでなく飼った後も継続して費用がかかります。
そのことを考えずに飼うと後で後悔することになるでしょう。
生き物は、愛情をかけてあげればあげる程、あなたにとってかけがえの無いパートナーになります。
あなたが、その犬を飼うという選択をした時から、その犬の運命は飼い主が握ることになります。
お互いの幸せな未来の為に、飼う前に、飼ってからも時々これらのことを冷静に考えてみて下さい。
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プロフィール
磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。
Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana
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