ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!
Vol.38 タイとミャンマーの犬事情と仏教との関わり
299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。
以前にも書きましたが、2018年3月初旬からの2週間ミャンマーを2018年2月中旬からの約3週間タイを旅しました。
タイもミャンマーも言わずと知れた仏教の国です。
早朝からお坊さんが托鉢している姿を良く見かけました。
また、朝の托鉢は観光の1つになっていて、場所によってはたくさんの人が見に来ていました。
朝の托鉢と犬
今回はタイとミャンマーの犬事情に触れつつ、人々と動物との関わりと仏教について書きたいと思います。
以前のコラム『イスラム教が深く影響しているイランのペット事情』と『ヒンドゥー教からイスラム教の国へ。宗教の違いと人と犬との関わり』にも書きましたが、宗教により犬と人との関わり方は変わってきます。
イスラム教の教えでは、犬は病気をもたらす汚いものとされ、イスラム教徒は犬に触れることを嫌います。厳格なイスラム教徒にとって、犬を飼うなんてもっての他です。
一方ヒンドゥー教の教えでは、全ての動物の中には数は違えど神様が存在するので、犬を含め全ての動物は神聖だと考えられています。
特にネパールでは、犬はヒンドゥー教や仏教の中での地獄、冥界の王ヤマラージャの使いという信仰があり、犬を称える風習があるそうです。
寺院に寝る犬
それでは、仏教の教えではどうなのでしょうか?
仏教は全ての命あるものを慈しみ、尊重することを推奨しています。
生きる為に仕方ない行為でない限り、動物をむやみに殺したり、傷付けてもいけないとされています。
これは、仏教の輪廻転生の考えからきています。
輪廻転生とは、生まれ変わりの概念で、私達は現在人間として生きていますが、来世は人間以外の動物に生まれ変わる可能性もあります。
例えば現在、人間であっても前世は犬や蝶だったかも知れないし、来世は猫や鳥に生まれ変わるかも知れないということです。
つまり仏教では、生きとし生けるものは全て平等であると考えられています。
また、生き方により、仏に生まれ変わる可能性は全ての動物に与えられているとされています。
このような考え方から、前世や来世に動物に生まれる可能性があり、この世全ての生き物と自分とは無関係ではないので比較的、動物に対して優しく考えることのできる宗教なのではないかと思います。
ホテルで飼われていた犬
だからと言って全ての人が動物に優しい訳ではありません。
ミャンマーでは、その地域で野良犬が増えすぎると毒餌を撒いて数を調整するようです。
また、人を噛んだり凶暴な犬は通報されて殺されます。
ミャンマーでは、だいたいこの犬はこの辺りに住み、この辺りの人からご飯をもらっているというのが決まっている地域もありました。地域の人が犬にご飯を与え育てる半野良犬です。
お店の前で寝転ぶ犬
インドの一部の地域のように完全に野良犬になった場合は、犬が群れを作り人間とはまったく別に生活するので、人に懐いていない犬が多く、夜は犬同士の抗争が繰り広げらていた為、夜中や早朝などは外を出歩くのが怖かっのですが、少しでも人との関わりがある半野良犬は比較的穏やかだと感じました。
また、餌をもらえる場所が決まっていることで、その犬の縄張りがだいたい決まり争いが少なくなる為か、夜に争う犬の声をきくことはほとんどありませんでした。
ミャンマーにも、もちろん飼い犬も存在するし、寄付で成り立っている保護団体も活動しています。
保護団体への国からの援助はなく、お金持ちが保護団体に資金を寄付し、その寄付金で運営がなりたっているそうです。
ゴールデンロックにいた犬
もう1つの仏教の国、タイはどうでしょうか?
私はタイに合計3回訪れました。
1度目は2004年2月
2度目は2014年7月
3度目は2018年2月
1度目に訪れた時は、犬が人とあまり関わらず群れで生活しているように感じました。
仏教の教えの全てのものが平等という考えからか、タイの人は犬が何をしても怒ったり注意することはなく、かといって可愛がることもなく、それぞれが別々に生活しているようでした。
ですので、犬は犬で自分の縄張りを護る為に、自転車に乗っている人を追いかけたり、近づく人を威嚇したり、その時の人が注意しようとも聞く耳を持たない感じがしました。
私も自転車でサイクリングをした時に犬の群れに追いかけられて、怖い思いをしました。
3度目にタイを訪れた時には、群れで生活する犬が減り、半野良犬が増え、犬の人に対する態度が以前よりも友好的に変わってきたように感じました。
今から一代前のタイの国王「プミポン」が犬が好きで、2002年に野良犬を保護し、その犬をかわいがる様子が取材され、その影響で国民が犬に餌をあげたり、触れたりと可愛がるようになったようです。
タイの国王は、国民からとても尊敬されています。
その証拠の至るところで国王の肖像画が飾ってありました。それは強制的にではなく、国民が自主的に飾っているのが分かりました。
2002年から人の犬への接し方が少しずつかわることで、長い時間をかけて犬の態度も徐々に変わっていったのだと思います。
根底にある動物への考え方で、人の動物への接し方が日々かわり、人の接し方により動物の態度もかわってきます。
動物の先進国と言われる国々は、キリスト教の国が多いです。
では、キリスト教はどんな考え方なのでしょうか?
キリスト教の国々もたくさん訪れたので、機会があれば、キリスト教と動物の関わりについても書きたいと思います。
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プロフィール
磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。
Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana
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