ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

Vol.28 グアテマラ 織物教室の犬『カピ』のきままな1日

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299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。


インドの話が続いたので、ここで一先ずインドから離れて、他の国のコラムを書きたいと思います。

2014年11月後半から約3週間グアテマラを旅しました。グアテマラの庶民の移動手段は『チキンバス』と言われるバスです。『チキンバス』はアメリカのスクールバスの中古を使っていて、グアテマラ全土を網羅していますが、運転手の運転が荒く事故が多いことでも有名です。その為、外国からの旅行者はツーリストバスを使って移動するのが一般的ですが、私達はローカルバスで全土を周りました。

グアテマラは織物が盛んで、様々な民族が生活していて、民族ごとに様々な布を使った伝統的な衣装を着ているので、そんな人々の衣装やカラフルな布を使った小物は、見ているだけで楽しかったです。

そんなグアテマラの伝統を学ぼうと3泊4日で、一般宅に泊まりながら、織物体験をしました。今回はそこで飼われていた犬の『カピ』について書きたいと思います。

グアテマラは、中米にある発展途上の経済的にも貧しい国の1つです。その為、道路も未舗装な場所が多く、ライフラインの整備も完璧ではありませんでした。路上では、たくさんの野良犬が生活しており、人々もそれを受け入れて暮らしていました。

そんな環境で犬を飼うということ、『野良犬』と『飼い犬』の境界線は何なのでしょうか?

私が子供の頃は、野良犬を良く見かけました。それがいつの頃からか、まったく見かけなくなりました。
私の父の子供時代は、犬は家の外で飼うもの、また、犬の散歩は、繋いでいた鎖を外し自由に外を徘徊させるものだったそうです。しかしいつの頃からか、犬は室内で飼うのが当たり前、犬の散歩はリードをつけて行い、旅行に一緒に出かけたり、犬の学校に愛犬と一緒に通う人まで出て来ました。
自分の子供を学校に通わせるのも精一杯、旅行なんて一生に一度行けるかどうか分からない生活を送っているグアテマラの人達からすると、信じられない事実です。

それでは、グアテマラで飼われている犬は、一体どんな1日を送っているのでしょうか? カピの1日を追ってみました。

カピはラブラドールの男の子。当時3歳でした。カピが基本的に生活しているのは、家の敷地内の庭です。特にそこに犬小屋がある訳でも、敷物の毛布がある訳でもなく、でもなんとなく、その日居たい場所がカピの寝床になっていました。首輪もリードもついていないし、庭は施錠されていないので、好きな時に外に出て、好きな時に帰ってくる生活を送っていますが、彼の中でだいたいのスケジュールは決まっているようでした。

カピは、早朝に家から出て行き、家の近所を歩き周り、マーキングをしたり、他所の家の犬と挨拶したりと巡回します。その巡回の途中で、家から織物の作業場に向かう私達に出会い、そのまま一緒に織物の作業場についてきます。

織物の作業場に行かない時は、事務所に行くのですが、その時は事務所までついて来て、そこで一緒に過ごします。

私達が作業場で、作業している間は、敷地内の好きな場所でお昼寝をして過ごしていました。

お昼ご飯は作業場で食べるのですが、そのお昼ご飯を少し分けてもらっていました。一応、家族を護るお仕事をしていたのでしょうか?
夕方、作業が終わると事務所か、家に戻るのですが、その時にカピも一緒に帰ります。でもだいたい家が近付くと、どこかに行ってしまい、そのまま夜遅くに家に戻ってくるようでした。
小さな村なので、近所の人もカピのことを良く知っていました。愛想の良いカピは、近所の人からも好かれていて、たまに何かを分けてもらっているようでした。

また、家にはカピの他に子犬が2頭いました。この子犬達は、元々は野良犬で、この家に迷いこんでそのまま住み着いて、それを家の人もカピも認めているようでした。

ただ、この子犬の他に新しく1頭の子犬が迷いこんだ日があったのですが、その子犬はその日のうちに追い払われていました。ですので、来た犬は全て受け入れるのではなく、頭数に制限はあるようでした。他の犬もこのようにして迷い込んだ場所で、タイミングが合えばそこに住むことが出来るようで、自分の場所が決まるまでは彷徨うのでしょう。犬にとっては安心して寝られる寝床が手に入り、人にとっては防犯になるという相互関係がうまく出来上がっていました。

グアテマラでの人と犬の関係を見ていると、昔の日本の人と犬の関係を見ているようでした。時代と共に人と犬の関係は移り変わります。昔の日本も防犯の為に犬を飼う家がほとんどでした。ですので、家族以外の人が家に入ったら吠えることが良しとされていました。しかし今では、吠えずに大人しく生活出来る犬の方が良しとされています。
時代と共に、人が犬に望むことも変わってきました。それでも、世界中、人の側には必ず犬がいます。そんな事が当たり前のようで、それがまた不思議な関係だと思います。

今回は、グアテマラで出会ったラブラドールの男の子『カピ』について書きました。
これからも出会った犬と人との関係について、たまに書いてみようと思います。

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プロフィール

磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。

Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana

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