ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

Vol.19 ザンビアのサファリで出会った絶滅危惧種『アフリカンワイルドドッグ』

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299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。


2017年4月下旬からの約10日間ザンビアを旅しました。
ザンビア最大の観光名所と言えばヴィクトリアフォールズ。
私達はちょうど満月の時期に行ったので、満月の前後3日間だけ見れるルナレインボーを見ることができました。

水量が多い時の滝は凄い迫力で、虹と滝とのコラボは、本当に素晴らしかったです。
今回はそんなザンビアでサファリをした時に出会った、絶滅危惧種でもある、アフリカンワイルドドッグについて書きたいと思います。

アフリカンワイルドドッグと出会ったのはマラウイとの国境から近い『South luangwa National Park』でサファリをした時でした。
サファリカーが何台か停車している所があり、近づいた時に姿を現したのが、アフリカンワイルドドッグでした。

最初見た時はハイエナかと思った程、容姿はハイエナに似ているように思いました。
それもそのはず、アフリカンワイルドドッグは英名で、日本ではハイエナイヌやリカオンと呼ばれています。
ただし、ハイエナはハイエナ科、アフリカンワイルドドッグは犬科なので、まったく別の種族です。
容姿が似ていることから、日本名がハイエナイヌになったのでしょうか?

大きさは中型犬ぐらい。大きな耳と身体の模様が特徴的でした。

日本では、よこはま動物園ズーラシアと富士サファリパークの2箇所でしか見られないそうです。

アフリカ大陸では南部に多く生息しているので、ザンビアでサファリをした時に見られたようです。
ただ、アフリカンワイルドドッグは、サイと同じくらい絶滅が危惧されている動物で、世界でも二千~五千頭程しかいないと言われています。
だからなのか、私達がサファリで見た時は大きなカメラを持ったおじさん達がとても熱心にサファリカーの中から観察していました。

私はその時、そんなに珍しい動物だとは知らず、数分観察しただけで立ち去ってしまいました。
それというのも、アフリカンワイルドドッグの群れはサファリカーに囲まれ、どこかに行きたくても行けずとても困っているように見えたからです。
1~3頭が、少しウロウロして伏せて、ウロウロして伏せてを繰り返していました。
他のアフリカンワイルドドッグ数頭は、茂みの中に隠れていて、彼らの合図を待っているかのようでした。
ウロウロしていたアフリカンワイルドドッグ達が伏せてしばらく動かなくなったので、サファリカーに囲まれている以上しばらく動きはないだろうなと思い、その場を離れることにしました。

アフリカンワイルドドッグは犬科なので、群れを作って行動します。
狩猟を行う時も子育ても全て群れで協力して行います。
食べ物を分け合い、群れに病気や怪我をした者がいると助けるというように、チームワークに非常に優れています。
妊娠期間は、犬より少し長い60日~80日。
基本的には、地位の高い雄と雌のみが交尾します。
大人になると、雄はそのまま群れに残り、雌は他の雄がいる群れに移動します。
幼獣は生後11週間で巣穴の外にでるようになり、生後3ヶ月で群れの後を追うようになり、生後6ヶ月で狩りに加わるようになり、生後1年~1年2ヶ月で狩りが行えるようになるそうです。

犬の成長と比べてみましょう。
犬は生後1ヶ月で身体が急激に成長します。
生まれた時は見えていなかった目が見えるようになり、聴覚が発達し乳歯が生え始めます。
よちよち歩き始めたり、排泄が自分で出来るようになるのもこの時期です。
兄弟犬と遊んだり群れの犬と関わることで、犬社会のルールとマナーを学びます。

アフリカンワイルドドッグの幼獣が巣穴の外に出始める生後11週頃の犬はというと、身体機能が少しずつしっかりと発達し始め、外の世界に興味を持ち始める時期です。
この時期(生後6週~12週)の犬は特に、物怖じせずに様々なことを受けいれる時期なので、人間社会で暮らす為に必要な経験をたくさんさせ、様々なことに慣れさせる社会化を行うのに、良い時期です。
また、12週を過ぎても3歳頃まで継続して社会化を行うと性格が安定した子になると言われています。

アフリカンワイルドドッグが群れの後を追うようになる生後3ヶ月の頃の犬は、行動範囲も広くなり自信もでてきて活発に動き回る時期です。
今まで抵抗なく受け入れていたことに警戒したり、怖がるしぐさを見せることもあります。
もちろん継続して社会化は行いますが、怖がる素振りを見せた時は決して無理強いせず、ゆっくり楽しいことと結びつけて、怖くないことを教えてあげます。
また、楽しく簡単なことから人の号令を教え、それに喜んで従うように教え始めると良いでしょう。

アフリカンワイルドドッグが狩りに加わるようになる生後6ヶ月頃の犬は、身体機能もしっかり発達し、筋力も強く若さに満ち溢れた時期です。
散歩中に引っ張ったり、要求吠えをしたりと自己主張もするようになります。
飼い主は毅然とした態度で接し、悪い癖がつかないように、人間社会で暮らす為のルールやマナー、正しい行動を繰り返し、楽しく教えてあげましょう。

アフリカンワイルドドッグが、狩りが出来るようになる1年~1年2ヶ月、この時期の犬は、心身共に発達しエネルギーに満ち溢れた時期です。
様々な場所に一緒にお出かけし、継続した社会化、正しい行動をしっかり教えることで、飼い主さんとの絆をしっかり深めましょう。

同じ犬科だけあって、アフリカンワイルドドッグと犬の成長はとても似ているように感じました。

現在私達の身近にいる犬達は、人間と上手に共存していますが、アフリカンワイルドドッグは、家畜を襲う害獣とみなされ駆除されたり(国立公園の外では、絶滅危惧種であっても家畜を狙う害獣は駆除しても良いというルールがあります)、人間の開発により生息地が減少したこと、飼い犬からの伝染病(狂犬病やジステンパーなど)、交通事故などでドンドン数が減っているそうです。
協力して狩りや子育てを行い、病気の仲間がいると助け合ったりと、素晴らしいチームワークで厳しい自然を生き抜いてきたアフリカンワイルドドッグの生態はとても興味深いものでした。

ナミビアには、傷ついたアフリカンワイルドドッグを保護する施設があるそうです。
保護施設にも機会があれば、訪れてみようと思います。

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プロフィール

磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。

Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana

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