ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

Vol.22 スワジランドで出会った珍しい犬種ブーアブル

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299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。


2017年5月初旬からの約2週間、スワジランドを旅しました。
スワジランドと聞いて、どこにあるかをすぐに思い浮かべられる人は、少ないのではないでしょうか?
南アフリカ内の北東部にある、小さな国です。
そんなマイナーな国ですが、アフリカの中では治安も良く平和で、非常に居心地の良い国でした。

スワジランドの名物は何と言ってもスワジキャンドル。
動物の形をしたかわいいキャンドルは、まだこの国でしか見たことがありません。
職人が作っている工房と一体になっているお店もあるので、スワジランドに行く予定のある人は是非、訪れてみて下さい。
アフリカの布『チテンジ』で作ったおしゃれで、かわいい雑貨も手に入ると思います。

今回はそんなスワジランドで出会った、南アフリカ原産の日本では珍しい犬種『ブーアブル』について書きたいと思います。

スワジランドはとても小さな国です。
一ヶ所に泊まりいろいろな場所に、観光に行くことができます。
ですので私達は、2週間同じ場所に泊まり、同じ道を通って最寄りのバス停まで行き、そこから様々な場所に出かけていました。

私達が泊まっていたホステルからバス停までの間にある家で、ブーアブルは飼われていました。

日本では珍しい犬種ですが、この辺りでは有名な犬のようで『ブーアブルの子犬が産まれました。譲ります』のポスターもスーパーマーケットの掲示板などで、良く見かけました。
また、南アフリカで泊まったホステルでも飼われていたし、飼い主と一緒に散歩しているのも見かけたので、この辺りでは人気のある犬種のようです。

それもそのはず、ブーアブルは、南アフリカ原産の犬です。

アフリカの言葉で、Boer(ブーア)は『農場』、Boel(ブル)は『犬』なので『農場の犬』と言う意味になります。
その名の通り、農場をライオンやハイエナ、盗人などの外敵から護る、ガードドッグの働きをしていました。
また、奴隷の確保や連れ戻しの為にも使われていました。ただし力が強すぎて、奴隷の連れ戻しには、生け捕りが困難だったと言います。

ブーアブルとの最初の出会いは、彼の家の前でした。庭付きの一軒家が、彼と彼の飼い主が住む家です。
私達が通りかかった時に、たまたま門が開いていて、彼は道路と家との間の芝生スペースに、飼い主と一緒にフリーの状態でいました。そして私達が家の前に差し掛かった瞬間に、凄い勢いで吠えながらこちらにやってきました。
夕暮れ過ぎで辺りは真っ暗。まさか犬がいるとは思っていなかったので、びっくりしました。
フリーの状態にしていた飼い主に怒りを覚えつつ、犬に背を向け、犬の方は見ず、空を見て知らんふりしながら、あくびをして、犬の匂いチェックが終わるまで動かずにいました。

その日はスワジランドに到着した日で、主人が大きなトランクを持っていたので「怪しい」と判断されたのでしょうか?
チェックが終わる頃、前の道路を車が通ったので、その犬はその車を吠えながら追いかけて行きました。しばらく観察していると、車が家の前に差し掛かった時に吠え掛かり、追いかけ、車が家を通り過ぎると、追いかけるのも吠えるのもやめていました。
私達はその間に、その場を立ち去りました。

次に通り掛かった時は、門が閉まっていて庭にいました。庭にいる時は、道路を通る車には吠えません。
さすがガードドッグ。門が開いていると、護る範囲が広がるようです。また、その時は、大きなトランクを持っていなかったからか、昨日チェック済みだからか、吠えられることはありませんでした。

それから1日に最低2度は家の前を通ったので、彼と私達はすっかり顔馴染みになりました。彼が私達を見る目も、最初の緊張した力の入った目から、日々少しずつ柔らかい穏やかな目に変わっていきました。

そんなある日、またもや家の前で彼は放されていました。と言うよりも、何らかの理由で外に出た彼は、飼い主が仕事に行く前に門の中に入れてもらい損ねたようでした。
顔見知りになっていたので、その時は比較的友好な態度で近付いて来ました。私がそっとしゃがみ手を出すと、その手の匂いを嗅いだ後、自分から身体をすり寄せて来ました。しばらく触っていましたが、これは遊べそうだと感じたので、遊びに誘ってみると乗ってくれました。

私がしたのはプロレスごっこです。ただあまりに興奮させ過ぎるのも駄目なので、興奮し過ぎる前に「お終い」と言い、自分の動きを止めます。まだ遊びの続きがしたい犬は、飛びついて来たり、軽く噛み付いてきたりして、遊びに誘ってきますが、犬に背を向け無視します。
少し落ち着いて来たら撫でてみますが、その時に構ってくれると思ってじゃれて来たら、また動きを止め「今は遊ばない」の意思を伝えます。しばらくすると落ち着き、比較的大人しく撫でられたら、再び遊びを始める、ということを何度か繰り返しました。
こうすることで、「お終い」の合図が出たら遊びは終わり、いつまでも興奮せず、落ち着かないといけないのだということを犬は学びます。犬の興奮をコントロール出来ることは、飼い主としてとても大切です。遊びにもメリハリが必要なのです。

この日遊んで以来、私達が通ると庭で寝ていても、閉まっている門の近くまで来てくれるようになりました。門の隙間から撫でると、とても気持ち良さそうにしてくれるようにもなりました。

そして私達が去る日。
いつものように立ち去ろうとすると、『クーン、クーン』と鳴いて、門を前足でガリガリ引っかいていました。最初に来た時と同じ、大きな荷物を持っていたので、いつもと違う様子に気付いたのかも知れません。
犬はいつもと違うことに気付く天才です。

このように、2週間ですっかり友達になったブーアブルですが、デンマークでは危険な犬種に指定され、飼育が禁止されています。ガードドッグとしてライオンにも負けない強靭な顎の力と体力があり、警戒心もとても強いので誰にでも懐く訳ではありません。
一時期、乱雑なブリーディングで絶滅しかけた歴史もありますが、今も昔も実用犬としてブリーディングされています。
そのようなことから、日本の一般家庭で飼うには難しい犬種だと思います。

スワジランドは治安が比較的良いと言われていますが日本の比ではありません。
また、南アフリカは治安が悪いので、警備犬としてこの犬が飼われているのでしょう。
私達が出会ったブーアブルも、立派に家を警備していました。
お仕事をする為に人為的に作り出された犬種は、飼うべき場所で飼われて初めて、輝けるのだと思います。

お互い幸せに生活する為に、家に迎え入れる前に是非、その犬種について調べてみて下さい。

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プロフィール

磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。

Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana

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