ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!
Vol.06 アフリカでも活躍するカンガルドッグの素晴らしい能力
299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。
トルコのカンガルという町にやってきました。
この町は、以前のコラムに書いたトルコ原産犬、カンガルドッグの発祥の地でもあり、繁殖施設を見学したくて訪れました。
様々な話をききたかったので、カウチサーフィンを利用し、英語のできるホストのお宅にホームステイさせてもらいました。
私たちが訪れたのは、クーデターがあって間もない頃でしたが、小さな町はとても平和で市長が開いた会食に参加するという貴重な体験もさせてもらいました。
カンガルドッグの繁殖施設は、町の中心から4キロ程離れた町の入口付近にあります。
通常は徒歩か、タクシーを利用して訪れるのですが、私たちのホストは親切で車で連れて行ってくれました。
施設の前に着いた時、誰もいなくて鍵がかかっていましたが、ホストの友人が電話をすると施設のオーナーの知り合いが鍵を開けてくれました。
余談になりますが、トルコ人のネットワークには、いつも驚かされます。特におじさんは、チャイを飲みながら一日中話しているので近所のことは良く知っているし、知り合いも多いので大抵のことは知り合いの知り合いまでいくとなんとかなります。
カンガルドッグは、1000年以上も前から、外敵から家畜を守る護羊犬として活躍し、戦争中には、軍用犬としても活躍してきました。
近年はアフリカに輸入されアフリカでも護羊犬として活躍しています。
アフリカでは昔から家畜を襲うチーターに困っていました。しかし、チーターから家畜を護るすべは銃で撃ち殺すしかなく、絶滅危惧種であるチーターを護らなければならないけれど、自分達の生活の為には、家畜を襲うチーターを放っておくわけにはいかないという葛藤があり困っていたのだそうです。
そこで輸入されたのがトルコのカンガルドッグ。家畜の群れと一緒に行動させ家畜を仲間と認識させることで、仲間の家畜を外敵から守ってくれるようになります。
身体の大きいカンガルドッグはチーターを殺すことなく吠えたり、追いかけたり、威嚇することで、追い払うことができるので、その結果チーターも殺されることもなく、家畜を護ることができるのです。
これを聞いた時に犬の能力は本当に素晴らしいなと感心しました。犬でないとできない仕事です。
私達の訪れた施設では、カンガルドッグは一頭ずつ犬舎にはいっていました。
犬舎の前を通るとどの犬も尻尾をふってよってきてくれ、性格は温厚でフレンドリーだと感じました。
ご飯の器にはいっていたのはパン。話をきくとカンガルドッグには決して生肉は与えず与えるなら必ず熱を通してから与えるのだそうです。生肉の味を覚えて家畜を襲わない予防なのだそうです。
近年、トルコ政府から国宝に指定されたカンガルドッグの繁殖は国で護られていて、カンガル以外で飼育する場合はきちんとした許可を取らなければ飼えないそうです。
ブリーダーもきちんと登録し許可証をもらう必要があります。
この施設のオーナーは今日は来れず会えませんでしたが、許可証は見せてもらいました。
また、友人のおじさんが、この犬舎の中にいた1番大きいカンガルドッグのオスをだしてくれました。
さすが大きい。おじさんも両手でリード持って両足踏ん張らないと連れていかれそうです。
何年かに1度(不定期だそうです)カンガルでは、カンガルドッグのフェスティバルが開かれます。そこには、もっと大きなカンガルドッグもいるそうです。
サービス精神旺盛のトルコのおじさんは、カンガルドッグの攻撃的な姿も見せたかったのか、そのオス犬を犬舎にいるオス犬の前に連れて行きました。
この状況でオス同士が向かい合うと当然、吠え合います。
穏やかだけではない、カンガルドッグの攻撃的な一面も見せてもらいました。
立ち上がると大人の身長も超える2頭が吠え合う姿は迫力満点でした。
最後にオス犬とメス犬が仲良く遊ぶ姿を見せてもらい見学終了。
運動量が多く、仲間といつも一緒にいないとストレスがかかるので町で愛玩犬として飼うのは難しいけれど、お仕事をさせると、素晴らしい能力を発揮するカンガルドッグ。
本来の仕事ができる職場があるのは犬にとっても幸せなことだとつくづく思いました。
犬種本来の作られた目的を理解し、適切なお仕事(遊び)を与えてあげることは犬の生活の質を考える上でとても大切なことです。
家庭で飼われている犬は本来のお仕事をする機会を作ってあげることは難しいですが、おもちゃを使ったり、週末に出かけたり、遊びを考えたりと能力を発揮する機会を作るように工夫をすることで、犬の作業欲求を満たしてあげることができます。
これを機会に愛犬の歴史を調べ、愛犬の欲求を満たす独自の楽しい遊び、考えてみてはいかがでしょうか。
バックナンバー
プロフィール
磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。
Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana
こちらもおすすめ
バックナンバー
- Vol.45 世界一周わんっ!ワールド!!最終回
- Vol.44 昔ながらの生活をするモンゴルの遊牧民族と犬事情
- Vol.43 過酷な環境で活躍するイスラエル原産の地雷探知犬
- Vol.42 韓国の天然記念物にも指定されている珍島犬
- Vol.41 ドイツの動物保護施設ティアハイムを訪れて知った殺処分の現状
- Vol.40 リシュケシュ ヨガアシュラムの犬においでを教えてみたら
- Vol.39 ポルトガル刑務所が経営するドッグホテル
- Vol.38 タイとミャンマーの犬事情と仏教との関わり
- Vol.37 ミャンマー続編 パピーに教えたら良い3項目の教え方
- Vol.36 ミャンマーの宿にいたシェパードの子犬に教えた5つのこと
- Vol.35 バリ島原産のユニークな名前を持つキンタマーニドッグと島内のペット事情
- Vol.34ドッグレースとは?ベトナムのアミューズメントパークに見に行き感じたこと
- Vol.33 ヒンドゥー教からイスラム教の国へ。宗教の違いと人と犬との関係
- Vol.32 インドの流行りはパグ??宿の主人から聞いたインドの犬事情について
- Vol.31 野良犬だらけのインドでアニマルレスキューの活動に参加しました。
- Vol.30 マラウイ 空気が読める賢い犬『トロさん』
- Vol.29 ドッグショーとは??インドのドッグショーを見学しました。
- Vol.28 グアテマラ 織物教室の犬『カピ』のきままな1日
- Vol.27 ヨガの"緊張"と"リラックス"から学ぶ行動を教えるヒント『吠えろ』と『静かに』
- Vol.26 南インド ヨガを習って実感した犬の躾の基礎はインターネットや本ではなく直接プロに習う方が良い理由
- Vol.25 南インド サイの行動から見た犬の予測行動について
- Vol.24 スリランカ 西洋医学と東洋医学から愛犬の健康を考える
- Vol.23 南アフリカ サーバルキャットに行っていたクリッカートレーニングとは?
- Vol.22 スワジランドで出会った珍しい犬種ブーアブル
- Vol.21 南アフリカ 狼の保護施設で考えた狼と犬の違いについて
- Vol.20 南アフリカ 宿の犬に持ってこいを教え2日で習得したトレーニングのコツとは
- Vol.19 ザンビアのサファリで出会った絶滅危惧種『アフリカンワイルドドッグ』
- Vol.18 フィンランドのホストから聞いたEU圏内のペットとの旅行事情と便利なペットパスポート
- Vol.17 興味深い歴史的背景を持つジンバブエ原産の犬『ローデシアン・リッジバック』
- Vol.16 お金がないと犬を飼えない? ウガンダで出会った女性の一言から考えた犬を飼うということ
- Vol.15 ザンジバル島へ行く船の中で考えた犬の乗り物酔いのメカニズムと対策
- Vol.14 ケニアの象の孤児院で感じた犬を人に慣れさせるということ
- Vol.13 ペルーで毛のない不思議な犬種と出会い、彼らについて調べてみました。
- Vol.12 エチオピア人と犬のしつこい要求の止めさせ方の意外な共通点
- Vol.11 アメリカで出会ったパグの補助犬のお仕事とは?
- Vol.10 アルゼンチンの動物園で意外な役割を担う犬達
- Vol.09 世界大会で何度も優勝経験のあるカナダのグラントさんに聞いたソリ犬の話
- Vol.08 ペット先進国で見た犬とのお出かけ事情
- Vol.07 イスラム教が深く影響しているイランのペット事情。
- Vol.06 アフリカでも活躍するカンガルドッグの素晴らしい能力
- Vol.05 夏のお出かけにご用心!!愛犬と一緒に出かける前に考えて欲しいこと。
- Vol.04 注意!!かわいい子犬に安易に近づいてはいけないその理由。
- Vol.03 ブルガリアで野良犬とハイキングして考えた人と犬との関わり
- Vol.02 トルコの固有種は大きくてアグレッシブな犬だった。
- Vol.01 はじめに。