ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

Vol.35 バリ島原産のユニークな名前を持つキンタマーニドッグと島内のペット事情

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299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。


2017年12月初旬からの約1週間、インドネシアのバリ島を旅行しました。
バリ島は、日本人なら誰もが知る有名なリゾート地です。
私達が行った時期は、火山の噴火が危惧されていたからか、観光客が激減し、宿泊料金が下がり、とてもリーズナブルな価格で宿泊することが出来ました。
バリ島の伝統家屋や寺院はとても格好良く、他の国では見ることが出来ない特徴的なものでした。


バリ島の伝統的な建物

また、たくさんのスパイスを使いこなして調理するバリ島の料理は、非常に興味深いものでした。


バリ島の料理

もう1つ、バリ島にしかないものと言えばキンタマーニドッグです。

皆さんは、バリ島原産のキンタマーニドッグという犬種をご存知でしょうか?
私は、そんな犬種は聞いたこともなく、バリ島について調べていた時に、その情報をたまたま見つけましたが、そのユニークな名前は一瞬で覚えることが出来ました。
バイクを借りて観光する日があったので、その犬が生まれたキンタマーニ村までバイクを走らせ会いに行きました。
そこで今回は、バリ島のキンタマーニ村原産の犬「キンタマーニドッグ」について書きたいと思います。

キンタマーニドッグは、インドネシアのバリ島にのみ生息し、他の国で見かけることはほぼありません。
ただ、一部の観光客が観光の記念に持ち帰り、自分の国でペットとして飼育することはあるそうです。
キンタマーニドッグの起源は様々な憶測が飛び交いますが、600年程前に食用の為に持ち込まれた中国のチャウチャウと、元々バリ島にいたカチャン犬が交雑してできたものが、元になっていると言われています。

現在インドネシアにいるキンタマーニドッグの半分は、純血を保つためにしっかりした管理の元に交配されているそうですが、半数は半野良生活を行い、乱雑に交配している為、純血のキンタマーニドッグではないそうです。
私達がキンタマーニ村を訪れ、村人にキンタマーニドッグはどこにいますか?と聞いた時にそこら中にいる犬を指差し、キンタマーニドッグだと言っていました。
「全部そうなの?」と聞くと、「全部そうだよ」と答えたので、地元住民の意識からすると、この村で生活している犬は全てキンタマーニドッグのようです。

キンタマーニドッグは、スピッツタイプの犬で目や尾っぽなどの外観は、日本犬に似ています。
毛色は、真っ白だったり、真っ黒、茶色、これらの色が混じっていたりと様々でした。


村にいたキンタマーニドッグ


毛色は様々


村の子供とキンタマーニドッグ

性格は、日本犬のように、なかなか他人に心を開きにくく、なつきにくいそうです。
しかし、飼い主に対しては忠実なので、家庭で飼われると良い番犬になるようです。
私が見たキンタマーニドッグは、子供に良く馴れ、何をされても受けいれていましたが、私達が近づくと一気に警戒態勢に入りました。
そこで足を止め、無視すると子供だけに集中し、その子供について行ってしまいました。
他のキンタマーニドッグも地元の人には良く懐いているようでしたが、私達に友好的な態度を見せることはなく、ひたすら無視をするか、近づき過ぎた時には身体に力が入り、緊張しているのが分かりました。

キンタマーニ村では犬にリードをつける習慣がなく、どの犬が飼い犬でどの犬が野良犬なのか分かりませんでした。誰が飼い主か明確なものはなく、地域で飼われている半野良犬も存在していました。

そんな固有種を護ろうとしているバリ島ですが、その一方で、犬を食べる犬食文化が存在します。
貧困層にとって鶏肉やヤギ肉は高価な肉で手が届かず(バリ島はヒンドゥー教徒が多いので基本的に牛肉や豚肉は食べません。)、犬肉は貴重なタンパク源になっていると聞きました。
また、そこら中にいる犬を捕まえて肉用として販売しそれで生計を立てている人もいるそうです。
バリ島には狂犬病が存在するように予防接種は徹底されていませんし、飼育環境がいいとは言えません。そこで問題なのは、そんな環境で育った犬は様々な病気に感染している可能性があるということ、また自身で犬肉を食べないように気をつけていても、犬肉を鶏肉と偽って販売している業者がいることです。

村から離れ、中心地に移動した時に、犬を路上で販売している業者がいました。
彼らは、パグやゴールデンレトリバー、ポメラニアンやシェパードなど、様々な犬種を販売していましたが、その中にキンタマーニドッグの子犬もいました。
キンタマーニドッグは3万円程でしたが、外国原産の犬は犬種により値段は異なりますが、4万円?6万円程で販売されていました。


販売されていたキンタマーニドッグ


販売されていたパグの子犬

ペット用に販売しているキンタマーニドッグは純血を守る為に、きちんと管理された場所で、考えられて交配されていると聞きましたが、きちんとしたブリーダーがいるのか?路上で生活する野良犬から産まれた仔犬を販売しているのかは不明です。
私がそう感じたのは、バリ島のペットを販売する業者がいい加減で管理などしているように見えなかったからです。
この犬の販売所の近くは、ペットショップが並ぶ通りがあり、主に鳥や猫、小動物を販売していました。
はっきり言ってこんなに劣悪な環境で販売されている動物は見たことがないと思った程、販売されている動物は、ひどい環境に置かれていました。
狭いケージの中に入るだけの動物がいれられ、彼らは見動きがあまり取れないので、自分達の糞尿で汚れていました。


劣悪な環境のペットショップ

また、猫のケージの下は、鉄の網でその上に布など引かれているはずもなく、足に金網が食い込んで痛そうでした。
また猫のケージも鳥のケージも小動物のケージもお互いとても近くにあり、それは動物達がお互いにとてもストレスを感じる環境だということに間違いありませんでした。
動物に対しての知識がない、その余裕がないのに動物を販売したり飼ったりするのは、凄く怖い事です。

そんなバリ島にも野良犬を保護しようとアニマルシェルターを始めた女性がいるそうですが、地域住民の反対を受け、立ち退きを余儀なくされましたが、現在も継続できるように奮闘しているようです。

新しい試みを始めるのは最初は凄く大変です。
またバリ島は小さな島なので島の住民同士の結びつきが凄く強く、新しいことを受け入れるのに特に時間がかかりそうだと、実際にバリ島を訪れて感じました。

キンタマーニドッグのことを調べ、バリ島を巡った結果、バリ島がかかえる様々な問題点を見つけることが出来ました。
以前のコラムでも書きましたが、その国にはその国なりの動物との関わりがあります。
時代により、その関係性も変化していきます。
それを踏まえてもバリ島の今の現状は、お互いにとって良いものとは言い難い現実がありました。
経済が発展し、動物に関しての正しい知識を学ぶ機会が増え、インドネシアに住む人と動物がもう少し良い関係で住める国になることを願います。

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プロフィール

磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。

Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana

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