ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

Vol.36 ミャンマーの宿にいたシェパードの子犬に教えた5つのこと

ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!

299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。


2018年3月1日から2週間、ミャンマーを旅しました。
ミャンマーで有名な観光地と言えば、落ちそうで落ちない金色に塗られた岩「ゴールデンロック」です。
またインレー湖ものどかな田舎町で、伝統が数多く残りそれを見に行くインレー湖ツアーはとても価値のあるものでした。
その後に訪れたバガンも人気観光地の1つです。
遺跡が数多く点在し、その遺跡群を少し高い場所から眺めると、その風景はまさにドラクエの世界でした。


バガンのドラクエのような世界

そんなバガンで泊まった宿にいた子犬に3日間の短い間でしたが、様々なことを教えました。
そこで今回は遊びを通して子犬の時期から教えておいた方がよいことについて書きたいと思います。

宿にいた子犬の犬種は、シェパードで名前はラッキーです。
ラッキーは元気一杯の遊びたい盛りで、いつもエネルギーが余っていて、楽しいことを探していました。


ラッキー

宿の庭の共有スペースに繋がれていたので、私が時間がある時にラッキーと遊びながら、様々なことを教えてみました。


昼間のラッキーの居場所

1日2~3回、1回の遊びの時間は15分程、下の5つのことを教えました。

①咥えているおもちゃを「オフ」の号令で放すこと
②興奮していても、こちらの合図で落ち着くこと
③大人しく身体のどこでも触らせること
④お座り
⑤持ってこい

3日間でラッキーはこれらの項目を完璧ではありませんが、ある程度は理解してくれるようになりました。

まだ他にも子犬のうちから学んで欲しいことはたくさんありますが、今回はラッキーの様子を見ながらその時に教えやすいものを選んだのでこの5つの項目になりました。
特に①~③の項目は、お家に来た初期の段階から教えると良いでしょう。

④の「お座り」は犬の動きを止める時に有効ですし、比較的教えやすい動作なので、何かの動作を教える初期に学習させるとよい項目ですし、待てを教える基礎となりますが、必ずしも最初に優先して教えなければいけない項目ではありません。

⑤の「持ってこい」も犬のエネルギー発散や人と生活する上での様々ルールを学ぶのにとても有効的なので、教えておくと良いですが、物を咥えて運ぶことが苦手な犬は最初から無理に教える必要はなく、まずは犬が楽しめる遊びを一緒に探し、楽しく遊びながら、その遊びの中でのルールを決め、守るように教える方が良いと思います。

まずは、①~③の項目がなぜ必要なのかをお話します。

①咥えているおもちゃを「オフ」の号令で放すこと

犬にはそれぞれ好きな物とそれ対する好きな度合いがあります。
犬により好きな物その度合いは違います。
その犬にとって特に大事な物をとられた時や、とられそうになった時にトラブルになることが多いです。
おもちゃや食べ物が犬が好きな物の上位に来る場合が多く、特に好きなものは執着し返してくれなくなることがあります。
どれだけ大切なものでも、人に素直に返すこと、人に返した時もまた返ってくるから大丈夫だと思えると、執着心が引き起こすトラブルを避けることが出来ます。
また、誤飲などから犬を護ることも出来ます。

②興奮してもこちらの合図で落ち着くこと

子犬は特に元気で落ち着きがありません。
それは普通のことなので、無理に抑えつける必要はありませんが、興奮しても良い時、落ち着いていなければならない時のメリハリを学ばせることは大切です。
今は興奮しても良い、悪いを最初から、状況により自分で判断することは難しいです。
ですので、興奮した時にもしっかりと飼い主さんがコントロール出来るようし、その場、その場で犬にどうするべきか教える必要があります。
繰り返し教えることで、犬はどこで興奮してもよくて、どこで落ち着かなければならないかを学びます。
そうすると、犬をどこにでも連れて行きやすくなり、お出かけがより楽しくなります。
また、興奮し過ぎると喧嘩やリードの引っ張り、噛むなど様々な良くない行動への引き金になる場合があります。
そういう行動を事前に防ぐ為にも、犬の興奮をコントロール出来るようにしておくことが大切です。

③大人しく身体のどこでも触らせること

先程も言ったように子犬はじっとすることが苦手です。
また動く物は本能的に追いかけてしまう為、子犬の身体を触ろうとすると手を追いかけて戯れ噛みをしようとしたり、それを止めさせようと手を動かすと、更に手を噛んで来て犬が段々興奮してと、悪循環になった経験はありませんか?
犬がどこか怪我をした時に確認したい時や、獣医さんに見て欲しい時も暴れられると、しっかり確認できず治療が長引いてしまうことがあります。
ブラッシングや歯磨きなどのお手入れも暴れられると時間がかかってしまいます。
お手入れの時間がかかると、億劫になりやらなくなり、そうすると余計出来なくなりの悪循環です。
獣医さんで大人しく診察を受ける、お手入れを大人しく受け入れることができる基礎は、大人しく誰にでもリラックスして身体のどこでも触らせることです。


大人しく触らせてくれるようになったラッキー

この他にも、ペットシーツの上でトイレをすること、おいでやリードを引っ張らずに歩く基礎になる人について来ること、人や犬や他の動物と出会った時にどのように接するか、クレートやサークルの中で大人しく寝るなど子犬の時期から教えておきたいことはたくさんあります。
しかし、今回はラッキーに短い時間でこの全てを教える訳にも行かず、その時の状況で出来ること、ラッキーが楽しんで覚えやすい項目を絞って教えてみました。

トレーニングは、犬が社会で苦労せずに生きて行く為に行うお勉強です。
またトレーニングすることで、犬と飼い主さんの世界が広がり、選択肢が増えます。
人と同じで犬も若ければ若い程、考えが柔軟で、新しいことを受け入れやすいです。
また、悪い癖がつく前に良い学習をさせた方が楽です。
そのような理由から出来れば子犬のうちから、様々なことを生活の一部としてその都度、教えてあげて欲しいです。
かと言って老犬だから学ばないということはありません。
お家に来たその日から繰り返し繰り返し、根気良く教えてあげることが大切です。
また、犬の生活環境や未来に犬と一緒にどんなことをしたいのかにより、またそれぞれの時期により、教える項目は変わってきます。
その中から、犬が楽しめて簡単に学習しやすいであろう項目から教えていきます。
犬には得意不得意があり、学習しやすい項目は犬により違います。
それを探るのもトレーニングの楽しみの1つです。
また、教え方もまったく同じではなく犬により変える必要があります。
またそれがトレーニングの面白さでもあり、難しさでもあります。
愛犬との絆を深める為にも、社会のルールを教える為にも、愛犬のことを知る為にも、ぜひ愛犬のトレーニングは飼い主さん自らしてあげて下さいね。

今回のコラムは長くなってしまったので、ラッキーに①~③の項目をどのように教えたかは、次回のコラムで書きたいと思います。


引っ張り合い遊び

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プロフィール

磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。

Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana

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