ドッグトレーナーの世界一周わんっ!ワールド!!
Vol.14 ケニアの象の孤児院で感じた犬を人に慣れさせるということ
299naviコラム「ペットと一緒に暮らすために」の著者 山形祝代さんがご結婚され、現在ご夫婦で世界を旅しています。
そこで出会った世界の犬たち。実際に目で見たり体験したことを、日本で約15年間、ドッグインストラクターとして仕事をしてきた経験も踏まえ、リアルな世界の犬のことを伝えてくれるコラムです。
2017年1月から約2週間ケニアで過ごしました。
ケニアはご存知の通り動物王国。
サファリには参加しませんでしたが、シマウマやイノシシ、カバ、キリンなどたくさんの動物達に出会うことが出来ました。
人々はとても親切で、旅行本やインターネットでは様々な凶悪な伝説がある首都ナイロビを歩いた結果、そこまで危険には感じませんでした。(※私個人の意見です。)
今回は首都ナイロビの郊外にある『象の孤児院』(David Sheldrick Wildlife Trust )と『キリンセンター』(Giraffe Center)に行って感じた、野生動物を人に慣れさせることと、犬を人に慣れさせることの共通点について、書きたいと思います。
象の孤児院とキリンセンターは近くにあるので、私は1日でこの2つの施設を訪れました。
まず訪れたのは、象の孤児院。
そこには、親からはぐれたり母親が殺されたりと、様々な理由で1頭で行動している子象を保護し、有る程度の年齢まで育てて自然に帰す活動を行っています。
この象達のミルクの時間が11時からの約1時間。その時間帯のみ子象達は一般公開されています。
子象達がミルクを飲みに、森の方から広場に走ってやってきました。
彼らはそこでミルクがもらえると知っているので、哺乳瓶を持ったスタッフの方に一直線に駆け寄ります。
ミルクを飲み終えた後は、砂浴びをしたり、水を飲んだり、木を食べたりと思い思いの時間を過ごします。
私達はロープの外側から見学しなければならないので、自ら子象に近付くことはできません。
しかし、手を伸ばせば触れる範囲に子象が来た時のみ触っても良いルールのようです。
ロープの周りには、水や餌となる木が置いてあり、子象がロープに近付きやすいようになっていました。
私の近くにも子象が来てくれたので、彼らの身体を触ることができました。
彼らの身体は厚い皮膚に覆われており、ゴワゴワした感触でした。
アフリカ象はアジア象よりも気性が荒く、飼い慣らすことは難しいと言われています。
でもここの象は触ることもできるし、スタッフに砂をかけてもらったりミルクをもらったりと、人にとても慣れているようでした。
なぜここの象達は人にこんなにも慣れているのでしょうか?
これには犬を人に慣れさせることにも共通する点がたくさんありました。
犬は産まれた時から人に懐き、人に触られることが大好きなのが当たり前だと思っている人も多いと思います。
しかしそれは間違いです。
親犬からの遺伝によるもの、産まれてからの環境による要因で、人に対する反応は変わってきます。
自らどんな人にでも近付き嬉しそうに挨拶する子、初めて会った人には近付かずに遠くから様子を伺う子、逃げる子、近付いて欲しくなくて吠える子、人に触ってもらうのが大好きで自ら身体を寄せて撫でてもらうと気持ちよさそうにする子など、反応は様々です。
家庭犬は人と一緒に生活するので、どんな人にも慣れていたほうが、その犬にとっても飼い主にとっても生活しやすいでしょう。
ここでは、産まれてからの環境的な観点から、特に人に対して慣れさせるにはどうすれば良いかを考えたいと思います。
話は象の孤児院に戻ります。
象の孤児院では人に慣れる為の環境が整っていると、私は感じました。
その理由を箇条書きにすると、以下の通りです。
- ミルクや木の枝を拾ってあげる、水浴びを助けてあげるなど、スタッフが献身的に象のお世話をしている。
→衣食住の世話をすることで、人と象の間に良いコミュニケーションが生れる。 - 象のいる場所はロープで区切られていて、スタッフ以外の人はそこに入れない。
→毎日やってくる新しい人に近付きたければ自ら近付けるし、嫌なら自らどこかに行けるので、逃げ場がしっかり確保されている状態で、象が自由な距離で人と接することができる。 - 象の公開は毎日行われ、国内外から様々な人が見学に訪れる。
→人に会う機会が毎日あり、様々なタイプの人と触れ合う経験を何度も何度も積むことができる。 - 1日1回のミルクをもらうという大好きな時間と人と会う時間が同じ。
→人に会うことに関して良いイメージを作ることができる。 - ここで保護されているのは基本的に子象。
→年齢が若ければ若い程、新しい物事に順応しやすい。
以上のことを犬に当てはめると、以下の通りになります。
- 犬のお世話(ご飯をあげる、お手入れをする、お散歩に行く、一緒に遊ぶなど)を家族全員(できれば家族以外の人も)で行う。
- 様々な人に会う機会を、犬が若い頃からたくさん作る。
- 人に会う時は無理に触れ合わせず、リードは長さに余裕をもって持ち、犬の逃げ場をしっかり確保してあげる。
- 犬が大丈夫だと思って、自ら近付くのを待つ。
- 犬が逃げようとした場合は無理に止めず、飼い主もその人から離れ、一緒に距離を空けてあげる。
- 人に会うことを楽しい経験になるように仕向ける。
これは様々な物事に慣れる社会化をする時にも、応用することができます。
次に訪れたキリンセンターでも、人が高台に上がり、そこでキリンと触れ合うので、人の元に近付くか近付かないかはキリンが自由に判断できるようになっていました。
またここでは、餌をあげながらキリンに触ることもできましが、触られることが苦手なキリンもいました。
同じ環境にいても個体差はあります。
犬も全て同じではありません。
同じようにしても慣れるのに時間がかかる子がいることを理解してあげましょう。
今回はケニアの2つの施設を訪れて感じた野生動物を人に慣れさせることと、犬を人に慣れさせることの共通点について書きました。
家庭犬を人に慣れさせることの必要性、慣れさせる時の心構えについて理解を深めて頂けたら嬉しいです。
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プロフィール
磯崎 祝代
専門学校にて、犬の学習理論やトレーニングについて学んだ後、アシスタントを経て独立し、DOGECO(株式会社do)を設立。動物病院でのしつけ方教室の開催、訪問によるトレーニング、シッター、犬と楽しめるイベント企画運営、犬の幼稚園の運営、専門学校や高校生にむけた授業、コラムの執筆などの業務を行う。
13年運営してきたDOGECOを解散し現在は主人と一緒に世界を旅行中。今まで経験を踏まえ私の目で見た世界の犬のことをお伝えできたらと思います。
Blog→旅やねん(http://ason-de-kurasu.com/)
Facebook→旅やねん(https://www.facebook.com/asondekurasu/)
instagram→japanese_dog_hana
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