ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

第21回 それっておかしくないですか?~前編~

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のワンちゃんの問題行動にまつわるエッセイです。


今回、私がイヌの(人間の!)問題行動カウンセリングをしていて、飼い主さんからよく聞く「あ~、あるある」を紹介しましょう。
いやいやいや、ちょっと待ってよと。冷静に考えて!おかしくない?
でもなぜか皆が口をそろえて言う「あ~、あるある……」という言動です。

おかしな情報あるあるその1:
『チワワは小さいのでお散歩もいらないってペットショップで言われたので』

チワワじゃなくて、トイプードルバージョンもあります。『トイプードルは小さいので以下同文』

小さかったら、散歩が必要じゃないの?!
人間でも、背の高い人間は激しい運動が必要で、背が低かったら運動はほとんど必要ない?
いやいや、この理論、おかしすぎでしょ!と声を大にしていいたい。

確かに大型犬のジャーマンシェパードと比較すると、チワワの運動量は遥かに少ないでしょう。
でも、だからといって、まったく運動が必要ないというわけではありません。
トイプードルだって小さくてもとても活動的な犬種です。

イヌの問題行動で自分のうんちを食べる「食糞」の問題行動を相談されることはよくあります。
この場合、かなりの確率で1週間に1回だとか、散歩時間が極端に少ないとか、イヌは充分に散歩に連れていってもらえてないことが多いです。(この食糞については「あるあるその5」で詳しくお話します。)

おっと、話がそれてしまいましたが、どんなイヌでも散歩は必要です。(老犬や持病がある、外をとてつもなく怖がるイヌでない限り)
散歩は運動だけが目的ではないのです。
子犬の頃は外に出て、様々な人やイヌに出会って社会化経験をしたり、電柱の匂いをかいだり、イヌにとっての刺激や楽しみがたくさんあるのです。
私たち人間だって、特に女性の方だとショッピング好きですよね?
靴1足を買うのに、直接目当てのお店に行って、さっと買って家に帰る。もちろんこうなれば無駄遣いもしなくてすみますが、靴をみて、迷って、服をみて、買うつもりのなかった服を買っちゃって……この一連の流れを楽しみます。

イヌだって同じなのです。

目的地に行くまで、いろんな匂いをかいで、いろんな物を見て。
もちろん、人間と同じように、個体差はあるので、その子にあったお散歩の時間や場所はありますけどね。
そして子犬の頃に、散歩に行かなくていいといわれたからと散歩に行かないでいると、充分に散歩できなかったそのイヌは、自転車や車、外を怖がるため散歩に行くのを嫌がってしまいます。
こういった子達は、なにか新しい環境の変化があったとき、上手に対応できずパニックになってしまい、怖がりがちです。

本当は楽しくて、わくわく、新しい発見がいっぱいのお散歩を楽しめないなんてかわいそうですよね。
だから、愛犬の楽しみをいっぱい増やしていってあげてください。

おかしな情報あるあるその2:
『ケージに入れて無視。鳴いても無視。ケージの中にいるのが当たり前になるから』

その他、『まだ小さいのでケージの外に出すのは1日5分だけ』バージョンなどもあります。
それで1日中鳴いているんです。って言われても……。
すぐお隣で皆が家族団らんしてるのに、ケージの中があたりまえ。
仲間はずれが当たり前になるなんて、ものすごく悲しいと思いませんか?

飼い主さん、あなたは隣でみんなが和気あいあいしてるなか、となりに黙って座ってるのが好きなのですか?と聞きたくなります。
もちろん、ケージやクレートの中でおとなしくすることを学習するのは必要だと思いますが、1日の大半をケージやクレート内で過ごすのは、おかしいとおもいませんか?
あなたは、起きているときの15分以外をトイレだけがある部屋で過ごせといわれたら過ごせますか?刑務所よりひどいですよね……。
ケージの中に閉じ込めたままでは、ケージの外に出たときの興奮やうれしょん、トイレを覚えない(ケージ内ではトイレトレーの上でするが、ケージ外に出たらトイレができない)、要求吠えや無駄吠えといったマイナス面が出てきてしまうのです。

ちなみに欧米では「ケージに入ったままの状態」のイヌは、全然見られません。むしろ国によっては虐待として考えられることもあるのです。
イヌ達はケージの代わりに自分たちのベッドがあり、そこでおとなしく日中はくつろいでいます。
我が家のフラッフィーも、普段はケージを使わずベッドで、他の部屋はどこにでも入れます。
最近では無○良品の通称「人をダメにするソファ」がお気に入りで彼のベッドと化しており、一緒に共有しています。

※次回へ続く

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プロフィール

佐藤 えり奈(さとう えりな)/京都市生まれ
ペット心理行動カウンセラー/行動コンサルタント/CAPBT MEMBER
伴侶動物行動学・養成資格
Diploma in the Practical Aspetcts of Companion Animal Behaviour and Training(英国COAPE公認資格)
ミネソタ大学 理学士
University of Minnesota Twin Cities B.Sc.
生物科学部生態進化行動学科卒業(米国)

幼少の頃から、大の犬好きが高じて犬の行動カウンセラーとなる。アメリカで行動学を、イギリスで犬猫の行動心理学を学び、現在は、関西を中心に犬の心理状態を考慮しつつ、行動学をもとに問題行動を解決するペット心理行動カウンセラーとして活動中。
著書に「イヌの「困った!」を解決する」(サイエンス・アイ新書)

◇関連リンク◇
佐藤えり奈先生のホームページ → http://www.petbehaviorist.info/

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