ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

第2回「おりこうさん」の定義と飼いやすい犬種?

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のワンちゃんの問題行動にまつわるエッセイです。


『トイプードルは頭が良いって聞いたので、トイプードルを飼おうって話になったんです』
先日、9ヵ月のトイプードルの問題行動に悩む飼い主さんがそういって私に話してくれました。

問題行動のカウンセリングをする際、私はどうして今飼っている犬種を選んだのか、飼うきっかけは何だったのかを飼い主さんに聞くことにしています。毛が抜けない、外見がかわいい、ずっとその犬種を飼うのが夢だったというように、理由は様々なのですが、意外と多い答えが『目が合った瞬間にビビッときた』。そう、いわゆる一目惚れという理由だったりするので、驚かされます。一目惚れで失敗してきた経験がある私からすると、なんとも言えない複雑な気分になるのだけれども……。

さて、その中で、この飼い主さんのように『頭が良いから飼いやすいと思った』という人もいます。そして、頭が良い犬種として、大型犬ならばボーダーコリー、小型犬ならトイプードルがあげられます。この2種類の犬種は、最近人気上昇中、街中で見かけることも増えてきました。

しかし、私は「頭が良い」の定義はまちまちだと思うのです。

カウンセリングをしていて思うのですが、確かにボーダーコリーはトレーニング性がすごくある。何か新しい行動を教える時、たとえば「ハウスに戻る」トレーニングだとしたら、目をきらきらさせて指示を待っています。そして恐ろしく覚えが早い。
2004年、ドイツのボーダーコリー、リコ(当時9才)は200種類以上の物体の名前(例:おもちゃ)を理解しているということで話題になりました。さらにリコは、聞いたことのないおもちゃの名前をきくと「聞いたことない名前だし、これかな~?」と自分の知らないおもちゃを持ってくることすらできたと言います。

もちろんトイプードルもトレーニングは好きですが、この犬種のかしこさといえば、状況判断が早いということでしょう。もともと甘えん坊の性格から、どうやって飼い主さんを困らせたら、かまってもらえるのか。物音がして吠えたらおやつをもらえるのか。こちらはその気がなくても、ものの一発で学習してしまうのです。

先日、私はズボラなあまり、愛犬フラッフィーに「ティッシュを持ってくる」ことを教えようとしました。クリッカーを使用してボーダーコリーならすぐ学習するであろう行動も、フラッフィーはなかなかできない。(私はクリッカーを使用するたびに思うのだが、IQ的な賢さは、クリッカーの使用で顕著になるなと感じます)しかし、「見て、こうするんだよ」と私がティッシュ箱からティッシュをくわえてみせると、「あ、なーんだ、こうしたかったんだね」と、1発で学習してくれました。
要は真似をしたのです。フラッフィーは、飼い主の私が言うのもなんですが、IQはすごく高くはなさそうです。ボケーっとしているときの顔は飼い主の私そっくり。しかし、状況を見て、小さい子のように真似をすることはとても得意なのです。

このように秀でている部分がまちまちだとは思うのですが、ただ1つ、声を大にして言いたいことがあります。

「かしこい犬=飼いやすいではない」ということです。

牧羊犬であるボーダーコリーは、自転車や車といった動くものを見つけると追いかける習性(モーターパターン)があります。甘えんぼうのトイプードルはしっかり飼い主がかまってやらないと、飼い主に咬みついたり、吠えたり、四苦八苦してかまってもらう方法を探し出します。
このような問題行動が起きないためにも、ボーダーコリーの習性を満たすために、広い環境でフリスビー遊びをしたり、時間を割いてトレーニングをします。トイプードルならば、たっぷり遊んで欲求を満たしてあげます。
このように、その犬種にあった最低限の欲求を満たして上げるのは飼い主の努めです。私たちにとって問題行動のように思えても、イヌにしてみればあたりまえの行動なのだから。

飼い犬の欲求を満たすことができるのか、飼いやすい犬種は何なのか。それは飼い主の生活スタイルにかかっています。今イヌを飼っている人も、これから飼おうと思っている人も、まずは自分の生活スタイルを見直してみましょう。

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プロフィール

佐藤 えり奈(さとう えりな)/京都市生まれ
ペット心理行動カウンセラー/行動コンサルタント/CAPBT MEMBER
伴侶動物行動学・養成資格
Diploma in the Practical Aspetcts of Companion Animal Behaviour and Training(英国COAPE公認資格)
ミネソタ大学 理学士
University of Minnesota Twin Cities B.Sc.
生物科学部生態進化行動学科卒業(米国)

幼少の頃から、大の犬好きが高じて犬の行動カウンセラーとなる。アメリカで行動学を、イギリスで犬猫の行動心理学を学び、現在は、関西を中心に犬の心理状態を考慮しつつ、行動学をもとに問題行動を解決するペット心理行動カウンセラーとして活動中。
著書に「イヌの「困った!」を解決する」(サイエンス・アイ新書)

◇関連リンク◇
佐藤えり奈先生のホームページ → http://www.petbehaviorist.info/

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