ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

第4回「ごほうび」ってなに?

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のワンちゃんの問題行動にまつわるエッセイです。


まだまだ日中は暑いけれども、朝夕はぐっと涼しくなって秋の兆しをかんじます。

先日、ハワイでイルカとのふれあいアクティビティを体験してきました。
水中のイルカを観察したり、イルカの胸びれをつかんで泳いだり(ベリーライド)、なかなかできない貴重な体験をさせてもらいました。

そこで、イルカの調教師さんと話す機会があり、驚かされました。
このイルカパークでは、行動学を基にイルカをトレーニングしています。
イルカに芸を教える際や、芸をした際にごほうびを与えます。
私はごほうびというと、よくイルカショーでも見かけるエサ(魚)だけだと思っていました。
しかし、それは間違いで、魚だけではなく、ボール、そして中には氷で遊ぶことが好きなイルカもいるらしく、氷を与えることもあるそうです。
個々のイルカによって、ごほうびは異なるし、それをこの調教師さんは熟知しており、状況によってごほうびも変えていました。
さらに、ペンギンの場合は、エサではなく、大好きな飼育員さんがごほうびになることもあるそうです。
正直、ペンギンが人に愛情をそこまで感じると思っていなかったので驚きでした。

さて、「犬との暮らしやしつけにおいて、犬にとってのごほうびとは何ですか?」と聞かれたら、あなたは何と答えるでしょうか?

「ほめられること」、「撫でてもらえること」、「おやつ」。
きっとこの辺りが真っ先に浮かぶことでしょう。
答えは、「そのとき犬が求めていること、したい事」です。

もちろん、撫でてもらえることやほめられること、おやつは犬にとってのごほうびです。
しかし、想像してみてください。
ボール遊びに夢中になって、嬉しそうに飼い主のもとに駆け寄る犬。
このとき、犬はあなたに何を求めているのでしょうか?
おやつでしょうか?
きっと、「もう一度、ボール投げて」と思っているでしょう。
あなたの注意を惹きたくて、吠えている犬に「うるさい!」と怒っても、それはその犬にとっては飼い主さんに注目してもらえた!とごほうびになっているかもしれません。

このように、状況によっては「ボールを投げること」、「叱られること」ですらごほうびになってしまうのです。
だから、何か問題行動で悩んでいるとすれば、そこには犬にとってのごほうびが存在している可能性があります。
忘れてはならないのは、「犬にとっての」という部分です。犬のきもちになって、考えてほしい。

行動学上の難しい言葉で言えば、ごほうびは強化子といわれます。
強化子があることで、その行動は頻繁に起こるようになります。

つまり、おすわりをすると、おやつ(強化子)が与えられる場合、「おすわりをする」という行動が増える。
これは、おすわりをするという行動が、強化されたからです。

うーん、なんだかややこしい。

つまりは、犬にとって嬉しいことがあれば、犬はその行動をくりかえす!ということです。
これは、基本的なしつけを学習するのに役に立つだけでなく、普段の生活やお出かけ先での正しい行動を強化するのにも役に立ちます。

私がカウンセリングをしていていつも思うことは、犬が困った行動をしていると叱るのに、正しい行動をしているとほったらかし。ということです。
せっかく正しい行動を犬に教えてあげられるチャンスなのに!

普段ケージの中にいるために、ケージの外に出ると興奮する。というのはよくあるケース。
まあ当然なのですが、疲れて走り回った後、かならず一息つくためにおとなしくなる時があるでしょう。

このときに、「やっと静かになった」と放っておくのではなく、「おりこうね」と優しく声をかけたり、そっとおやつを与えるのでもいいです。
声のトーンやおやつによって興奮しすぎてしまう場合もあるので、そこは飼い主さんの力量のみせどころ。
その子にあった「ちょうどいいごほうび」を探してあげるのです。(興奮しやすいのなら、静かに優しい声で、おやつで興奮するなら、まあまあ好き程度のおやつを与える)

そうすることで、犬は何が正しい行動なのか学習し、家の中やドッグカフェなどで「おとなしくする」行動が増えるようになります。
私もフラッフィーをドッグカフェに連れていくと、おとなしくフセをしていたり、側で寝ているたびに声をかけたり、少しおやつを与えたりしていた。
おかげで、今はドッグカフェや犬OKな場所にいくと、「おりこうですね!」と周りの人に言われ、「そんなことないですよ〜」なんて言いながらもシメシメ、努力の賜物よ!と心の中でほくそえんでいます。
実際努力したのはフラッフィーなのですが……。

しつけ本や、犬友達の話をきいて、しつけを行うのは良いことだと思います。
ただ、そこで得られた情報を全て鵜呑みにしないでほしい。
大切なのは、あなたの愛犬の様子をしっかり観察し、何が好きで、今どういう気分なのか。愛犬のきもちを理解してあげることです。
そのうえで、ダメな行動はだめ、正しい行動は正しいと犬に伝えてあげてください。

今回は正しい行動の伝え方について話しましたが、次回はダメな行動の伝え方、要は注意の仕方について話そうと思います。

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プロフィール

佐藤 えり奈(さとう えりな)/京都市生まれ
ペット心理行動カウンセラー/行動コンサルタント/CAPBT MEMBER
伴侶動物行動学・養成資格
Diploma in the Practical Aspetcts of Companion Animal Behaviour and Training(英国COAPE公認資格)
ミネソタ大学 理学士
University of Minnesota Twin Cities B.Sc.
生物科学部生態進化行動学科卒業(米国)

幼少の頃から、大の犬好きが高じて犬の行動カウンセラーとなる。アメリカで行動学を、イギリスで犬猫の行動心理学を学び、現在は、関西を中心に犬の心理状態を考慮しつつ、行動学をもとに問題行動を解決するペット心理行動カウンセラーとして活動中。
著書に「イヌの「困った!」を解決する」(サイエンス・アイ新書)

◇関連リンク◇
佐藤えり奈先生のホームページ → http://www.petbehaviorist.info/

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