ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

第20回 子犬の譲渡、ベストな時期は?

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のワンちゃんの問題行動にまつわるエッセイです。


京都はジメジメした梅雨も明けて、カラッとした天気が続き、いよいよ夏まっさかりです。
この時期になると、愛犬のお散歩も早朝や夜遅くと時間を選ぶようになりますよね。

私は現在、「ペットの法と政策研究会」の会員として参加させてもらっています。
ペットの法律に詳しい吉田眞澄弁護士を筆頭に各々の専門家が集められた会で、ペットの法律などについて考える会なのです。
今回のテーマは、猫カフェの夜間営業の是非や、犬猫を販売するにあたっての「8週齢規制導入」についてでした。

さて、今回の会の開催にあたり、ペットに関する条例に目を通す機会がありました。
目を通したのは、京都と札幌、そして和歌山。
正直、京都の条例は、印刷された資料を他の条例と比較すると薄っぺらい!そして中身も薄っぺらい。
ものすごくアバウトにしか書かれていないのです。

和歌山県の条例では「飼い犬の本能、習性、生理等を理解した上で、当該飼い犬に応じたしつけを行い、所有者等の制御に従うように訓練すること」とか、北海道も同じ内容で「犬及び猫にあっては、生後8週間は親子を共に飼養してから譲渡するよう努めること」と、全国に先駆けて8週齢規制導入を進めようという態度を示しています。

ところが京都の条例ときたら「適切な取り扱い」というようにアバウトにしか表記されていないのです。
これだと、結局何をしていいいのかわからないのではないでしょうか。
京都人としてなんだかとても残念な気持ちになりました。もうちょっと具体的に明確にしてほしい。

さて、前述の通り北海道が8週齢規制導入を進めようとしたところ、環境省から8週齢規制の「科学的根拠」を示すようにいわれたそうです。

私は行動カウンセリングを行う際に、飼い主さんにいつ頃、犬を迎えたか飼い主さんに質問します。
ペットショップで購入した方は、生後1ヵ月半頃だったり、生後2ヵ月(8週齢)以下の方が大半です。
小さくて、見かけも子犬らしくてかわいいため、小さければ小さいほど、ペットショップとしては売りやすいのでしょう。

しかし、前回のコラムにも書いたように、多くの欧米諸国は生後2ヵ月を過ぎてからでないと、ブリーダーから子犬を譲り受けることはできないのです。(多くの欧米ではペットショップの店頭で犬猫を販売することは禁止されています)
もちろんそれにはきちんと理由があるのです。

まず、子犬が母犬から、乳離れ、親離れするのは生後2ヵ月頃。
この頃までは子犬は兄弟犬や母犬と時間を共にし、母犬からおっぱいという栄養をもらうだけでなく、犬同士のコミュニケーションを学ぶ時期なのです。

犬について多くの研究をしているScott&Fullerは、生後6週~8週が犬を譲渡するのに最適な時期だと発表していましたが、Slabbert&Rasaにより、生後6週間で親と離されたジャーマンシェパードの子犬たちは、体重及び食欲が減り、ストレスや死亡率、病気にかかる確率も増えたそうです。※1

「科学的な研究」というよりも、多くの事例そしてケーススタディーから、親から早くに離された犬というのは、コミュニケーションが苦手で、興奮しやすく警戒心も高く、過剰に吠えたり攻撃的な行動がみられるというようにいわれています。※2

実際に、私がよく相談を受けるのは、子犬のじゃれ咬みです。
「あま咬み」と飼い主さんはいうけれど、あま咬みなんて優しいものではなく、たいてい飼い主さんの手は傷だらけ!
大人の歯に生え変わる前の、子犬のとがった歯で咬まれると、穴はあくし、咬まれた際に動かすとピッとナイフで切ったように皮膚が避けて出血するのです。
欧米の子犬よりも、日本生まれの子犬の方が遥かにこのじゃれ咬み問題は深刻です。

それもそのはず。
早くに親や兄弟から離されてしまった子犬たちは、通常は子犬同士で、強く咬みすぎないように学び合う貴重な機会もありません。
しかも、この時期に咬み方の抑制を学ばなかった子犬というのは、より激しく強く咬むという傾向があるのです!

8週齢規制。
ほとんど2ヵ月以降の子犬しか譲渡されない欧米では、おそらく科学的根拠がうんぬんという前に、栄養的な面からみた健康面、そして社会性の問題からも「常識」の期限なのでしょう。
果たして日本にその「常識」が通じる日はくるのか。
一刻も早く、その日を楽しみに待ちわびています。

※1 Serpell, James. (1995). The domestic dog. Cambridge.
※2 Londsay R. Steven. (2000). Handbook of applied dog behavior and training. Blackwell.

バックナンバー

プロフィール

佐藤 えり奈(さとう えりな)/京都市生まれ
ペット心理行動カウンセラー/行動コンサルタント/CAPBT MEMBER
伴侶動物行動学・養成資格
Diploma in the Practical Aspetcts of Companion Animal Behaviour and Training(英国COAPE公認資格)
ミネソタ大学 理学士
University of Minnesota Twin Cities B.Sc.
生物科学部生態進化行動学科卒業(米国)

幼少の頃から、大の犬好きが高じて犬の行動カウンセラーとなる。アメリカで行動学を、イギリスで犬猫の行動心理学を学び、現在は、関西を中心に犬の心理状態を考慮しつつ、行動学をもとに問題行動を解決するペット心理行動カウンセラーとして活動中。
著書に「イヌの「困った!」を解決する」(サイエンス・アイ新書)

◇関連リンク◇
佐藤えり奈先生のホームページ → http://www.petbehaviorist.info/

こちらもおすすめ

ペットフォトコンテスト

応募受付中のプレゼント

page top