ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

第8回 ケージは檻ではなく、お部屋です。

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のワンちゃんの問題行動にまつわるエッセイです。


先日、アメリカ人の友人に唐突に質問されました。
『なんで、日本ではイヌをケージの中に入れたままにするの?』と。
一瞬、何と答えていいかわかりませんでした。

日本では皆が当たり前のようにケージ内でイヌを飼っていますが、アメリカやイギリスでは日本のように「ケージに閉じ込めてイヌを飼う」というのは稀です。
ヨーロッパの国(例:ドイツ)では、イヌをケージ内に閉じ込めたままにすることは法律で禁止されてさえいます。

このように欧米では、イヌは家の中を自由に行き来し、リビングにはイヌ専用のベッドが置いてあります。
もちろん、欧米でもケージやクレートを利用することはあります。
しかしそれは、車内の移動中や、子犬の頃のクレートトレーニングとか、あくまでも短時間の間のみです。
日本のように1日10時間近くもケージの中に入れっぱなしというのは稀なのです。

このような話をすると、
「海外の家は日本と違って広いから、比較にならない」だの、
「イヌは狭い所の方が落ち着く」だの、
「だって家の中を自由に行き来させたら、いたずらしたり、トイレはどうするの?」だの、
「床が傷つく」だのと言う飼い主がいらっしゃいます。

まず、海外の家が広いからなんていう、広さは関係ない。
要は、イヌが落ち着ける空間がそこにあるかどうかです。
狭い所が落ち着くならば、無理矢理ケージに入れるたびにキャンキャン要求吠えしているイヌが落ち着いているようにみえるのか!と思ってしまいます。
ケージはあくまでも人間でいう自分の部屋のように、イヌにとって落ち着ける空間であるべきです。
自由に出入りできて、落ち着いておやつを食べたり、寝たりできる部屋。
ケージがなくてもリビングにクレートやふかふかのベッドを置いてやるだけでも、イヌにとっては落ち着ける空間ができます。
だから、様々なしつけ本に書いてある、「犬はケージに。狭い所が落ち着きます」という考えは一度、忘れてほしいのです。

では、いたずらやトイレはどうなのか。
私はアメリカでもイギリスでも、ケージ外で暮らしているイヌを見てきましたが、始終いたずらしっぱなしのイヌなんてほとんどいませんでした。
みんなとてもお行儀よく落ち着いていました。

逆に、日本で1日中ケージの中で飼われているイヌは、ケージの外に出たらいたずらの連続です。
何かおもしろい物はないかと部屋の中を探検する。
普段見慣れないティッシュを発見したら口にいれ、飼い主に再度ケージ内に入れられる。
これじゃあ、悪循環の繰り返しです。

イヌがいたずらをしそうなものはなるべく手の届かないところにおくか、それは口にしてはいけないものだと根気よく教えてあげるのです。

ちなみに、我が家のフラッフィーはケージ内では飼っておらず、部屋を自由に行き来できるようにしています。
子犬の頃はティッシュでよくいたずらしましたが、それはおもちゃではないということをしっかり教えました。
今ではティッシュで遊ぶことなんて全く無いし、コタツの中から横着して私がフラッフィーにティッシュを持ってきてと言えば、1枚出して持ってきてくれるほどです。(こんなことをしているから冬にぶくぶく太ってしまうのです。)

私はいつも、イヌがいたずらをした時は、イヌにやってはいけないことを教えるチャンスだと思っています。
間違えた行動をしたからといってすぐにケージに入れていては、一生正しいことを学ばない。
学ぶチャンスすら与えてあげていません。

イヌは群れで暮らす動物です。
それなのに家の外やケージ内で隔離して育てられると、寂しいがあまり、遠吠えをしたり、要求吠えをしたりするという問題行動に発展します。

ここまで読んで、ケージの外で飼ってみようかなと思っている人は、まずは少しずつでいいので、ケージの外で過ごす時間を増やしていってほしい。
ケージの外で過ごすことが、「普通」になるように。

最初はイヌが口にしてはいけないもの、例えば電気のコードなんかはあらかじめ外しておいてください。
イヌが見た事ない物には興味を示して匂いをかいだりするかもしれません。
その場合はそっと見守ってください。
しかし、口に入れたり、噛んだりしようとしたら、第5回のコラムで書いたようにNRMを使って注意してみましょう。
何度か根気よく繰り返して、イヌはそれが口に入れてはいけないものだと理解します。
こんな風にゆっくりケージの外で過ごすことが普通になればいいと思います。

あなたのイヌは何才ですか?
小型犬や中型犬の寿命は14〜17才、大型犬の寿命は9〜13才といわれています。
余生の大部分を檻の中で過ごさせますか?
それとも、リビングであなたとゴロゴロ、テレビを見ながらくつろぎタイムを楽しむかは、あなた次第です。

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プロフィール

佐藤 えり奈(さとう えりな)/京都市生まれ
ペット心理行動カウンセラー/行動コンサルタント/CAPBT MEMBER
伴侶動物行動学・養成資格
Diploma in the Practical Aspetcts of Companion Animal Behaviour and Training(英国COAPE公認資格)
ミネソタ大学 理学士
University of Minnesota Twin Cities B.Sc.
生物科学部生態進化行動学科卒業(米国)

幼少の頃から、大の犬好きが高じて犬の行動カウンセラーとなる。アメリカで行動学を、イギリスで犬猫の行動心理学を学び、現在は、関西を中心に犬の心理状態を考慮しつつ、行動学をもとに問題行動を解決するペット心理行動カウンセラーとして活動中。
著書に「イヌの「困った!」を解決する」(サイエンス・アイ新書)

◇関連リンク◇
佐藤えり奈先生のホームページ → http://www.petbehaviorist.info/

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