ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

第12回 私がペット心理行動カウンセラーになったきっかけ

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のワンちゃんの問題行動にまつわるエッセイです。


「え?犬の精神科医になるために、日本からはるばるアメリカに来たの?!」

私がアメリカに留学した当時、周りのアメリカ人にしょっちゅう言われた言葉でした。
今でこそ注目されつつある動物の行動学も、当時、日本どころかアメリカでもさほど知られたものではありませんでした。
現在は海外の人と話すと、「ああ!ドッグウィスパーね!!」(ドッグトレーナーのシーザーミラン出演のテレビ番組)なんて言われるため、説明の手間が省けますが……。
しかもごめんなさい、面倒くさいときは「そうそう」ですませてしまいます。

さて、今日はしつけのお話ではなくて、なぜ私がペット心理行動カウンセラー(ドッグビヘイビアリスト)を目指したのか、そして次回はその仕事の詳細についてお話していきたいと思います。

私は小さい頃から動物、特に犬が大好きでした。
小さい頃から、おばあちゃんや親に本を買ってもらえるとなれば、もっぱら犬の本や図鑑。
私が小学校に上がったばかりの頃に、ヨークシャーテリアを迎え入れ、それからはずっと犬と共に育ってきました。
幼稚園や小学校の卒業文集にも、「犬のお医者さん」と書き続け、将来は絶対犬に関わる仕事、犬の命を救う仕事をしたいと思っていました。

私が中学生の頃、図書館で、ピーターネヴィル博士の「犬に精神科は必要か?」という本を見つけました。
その本を読んだとき、「こんな仕事があるなんて!!」と衝撃を受けました。
本には食糞をする犬、雷を怖がる犬、人を怖がる犬、と様々な問題を抱えた犬がでてきて、問題を解決し、安楽死を免れたという話が書いてありました。(ネヴィル博士にいわせると、ここに書かれている問題行動の解決方法は古典的で、今はもうこれらの方法は使用していないのですが。)
犬が大好きで、安楽死から犬の命を救えるなんて!と思った私は、その日を境に犬の精神科医になることを目標にしました。
「犬の精神科医になりたい」ではなく、「犬の精神科医になる」と思い込んでいました。

そして、高校生になる頃には、この欲望は爆発!!
ジブリの映画、「耳をすませば」の影響もあり、一刻でも早く、一歩でも近く夢に近づきたくて、動物の先進国であるアメリカへの留学を希望し、両親と話し合い、渡米が決まりました。
年月が経って考えると、当時、両親もよく娘の単独渡米を許してくれたものだと思います。(だめだと言っても、私は聞く耳をもつ様子ではなかったといわれましたが(笑))
そんなわけで、1冊の本と1つの映画により、私の人生は大きく変わりました。

アメリカ時代、進学校に通っていた私には常に課題の山が待っていました。
ここでギブアップしても日本に帰れない、前に進むしかないプレッシャー、ホームシックにかかる暇すらありませんでした。
こんな風にいうと、大層しっかりした人のように思えますが、正直私のメンタルは豆腐、いや、おぼろ豆腐並みに繊細です。
小さい頃からの友人は今でも私のことを「小心者」と言うし、レストランで混み合ってくると、私はお店をすぐに出ようと言い出すし、学生時代は学校で先生に注意なんてされようものなら1日は落ち込みっぱなしでした。

とまあ、こんな私でしたが、アメリカでは多くの人に助けられ、大学を無事卒業、その後、ビヘイビアリストになりたいと思ったきっかけを与えてくれたイギリスのネヴィル博士の基で勉強し、研修の機会を与えてもらい、確実に夢が現実になりつつありました。

そうして晴れて、日本へ戻り、ペット心理行動カウンセラーへの道を歩きだしました。
しかし、欧米では認知度が高いこの仕事も、日本ではほぼ皆無。
最近では、ドッグトレーナーやしつけ教室、行動学専門の獣医師が「問題行動の専門家」となっているようです。
そんなわけで、次回はこのペット心理行動カウンセラーとは何なのかということについてお話しします。

このコラムを書きながら、よくぞあの頃の私は思い切ったなあって思い出していました。
私自身、特別何か抜きん出ていたわけではないし、普通の女の子だったと思います。
ただ、誰よりも犬がすごく好きだったこと。
それが行動することにつながったのだと思います。

そして、あの日、図書館で本を見つけなかったら、1冊隣にあった本を手にとっていたら、今は全くちがった人生を歩んでいたかもしれません。
ほんの小さなきっかけで人生が変わる事もあるのです。

しかし、夢を叶えたといっても、まだまだペット心理行動カウンセラーの認知度は日本では低いし、これからどのように広がっていくのかもわかりません。
実際に、犬に対しての意識の高い人がいる反面、そうでない人も多いのが今の日本の現状です。
日本の飼い主さんは、トリミングや犬の洋服といった目にみえる事、病院や食べ物といった犬を長生きさせることに関しては、お金も惜しみなく使い、意識も高いと思います。
しかし、「しつけ」や問題行動の「予防」となると、欧米諸国と比較すると、さほど興味がないように思えます。

私自身もまだまだだと思うことはしょっちゅうだし、今後、日本の犬、そして人と共存しやすい社会になっていくためには、私たちひとりひとりがしつけの大切さを自覚していく必要があるのだと思います。
そのために、私が社会にどのように貢献していけるのかというのは、ペット心理行動カウンセラーになるという夢を叶えた私の今後の課題でもあるのです。

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プロフィール

佐藤 えり奈(さとう えりな)/京都市生まれ
ペット心理行動カウンセラー/行動コンサルタント/CAPBT MEMBER
伴侶動物行動学・養成資格
Diploma in the Practical Aspetcts of Companion Animal Behaviour and Training(英国COAPE公認資格)
ミネソタ大学 理学士
University of Minnesota Twin Cities B.Sc.
生物科学部生態進化行動学科卒業(米国)

幼少の頃から、大の犬好きが高じて犬の行動カウンセラーとなる。アメリカで行動学を、イギリスで犬猫の行動心理学を学び、現在は、関西を中心に犬の心理状態を考慮しつつ、行動学をもとに問題行動を解決するペット心理行動カウンセラーとして活動中。
著書に「イヌの「困った!」を解決する」(サイエンス・アイ新書)

◇関連リンク◇
佐藤えり奈先生のホームページ → http://www.petbehaviorist.info/

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