弁護士石井センセイのペット事件簿

第7回 動物虐待を見つけたら

弁護士石井センセイのペット事件簿

京都で弁護士をされている石井一旭先生に、実際にあったペットに関連する事件をご紹介いただきます。
「ペットを愛する方々に楽しく法的知識を身につけていただき、弁護士を身近な相談相手として感じてもらいたいと思っております。」


近所を散歩していたら、公園で猫を木にくくりつけてエアガンで撃っている人を見かけました。止めさせたいのですが、どう対処したらいいでしょうか。
この猫が飼い猫ではなく、野良猫だったらどうでしょうか。また、見かけたのが公園ではなくて、ネット上で映像を見つけたという場合はどうでしょうか。

猫を虐待し、その模様を撮影した動画をネットで配信していた男性が逮捕・起訴されたことが広く報道され耳目を集めました。この男性に対する厳正な処分を求める署名活動が全国規模で行われ、合計22万筆もの署名が集まったそうです。この件から見ても、動物虐待に対する世間の目がどんどん厳しくなっていることは明らかです。

では動物虐待を見つけたときは、どうすればいいのでしょうか。これが今回のテーマです。

動物虐待は犯罪です

まず、愛護動物の虐待は「動物の愛護及び管理に関する法律」(一般には「動物愛護法」と呼ばれていますので、以下では「動物愛護法」と呼びます)に罰則が規定されている立派な犯罪行為です。

動物愛護法44条1項は、犬や猫、「いえばと」などといった「愛護動物」をみだりに殺したり傷つけたりした者を2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処すると定めています。本件でも、エアガンで撃って猫をケガさせたり、殺したりしてしまうと、これに該当します。
また、猫をエアガンで撃ったりせず、木にくくりつけたまま放置したとしても、「健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること」に該当すれば、同条2項により、100万円以下の罰金刑が科せられます。

そして、警察は、犯罪がまさに行われようとしていることを発見した時は、警告を発することができます(警察官職務執行法5条)。

ですので、虐待の現場を目撃した時は、まず警察に動物愛護法違反行為がなされている現場を発見した旨を通報し、対処を求めることが現実的です。通報する際は、警察が対応しやすいよう、いつ、どこで、どのような人物が、何に対してどのようなことをしているのか、冷静に通報することが重要です。通報を受けた警察官が動物愛護法に精通しているとは限りませんので、通報の際には、発見した行為が「動物愛護法所定の罰則に違反していると思う」と付け加えておくと効果的です。

なお、「牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる」については、野良であっても「愛護動物」に当たるとされていますので(動物愛護法44条4項1号)、野良動物であってもこれらを虐待すれば犯罪となります。これらが誰かに飼育されている場合であれば、飼い主に対する動物損壊罪(刑法261条)に該当する可能性もあります。

警察に通報してください

動物愛護法違反行為は犯罪ですから、まさに現場で虐待が行われていることを現認した場合は、行為者を現行犯逮捕することも可能です(刑事訴訟法213条)。 法律上、現行犯逮捕は、警察官に限らず誰でもすることができます。
しかし、法律上誤った逮捕行為に及んでしまうこともありえます。たとえば野生のヘビは「愛護動物」に含まれていませんが、そうとは知らず野生のヘビを虐待している人を動物愛護法違反容疑で現行犯逮捕してしまうと、これは誤った逮捕行為をしたことになってしまい、あなた自身が責任を問われることになります。

また、現行犯逮捕は、あなた自身が虐待者によってケガさせられる、あるいは虐待者にケガをさせてしまうリスクもあります(たとえ現行犯逮捕して良い場合であっても、相手にケガをさせることまで許されるわけではありません)
本件でも、あなたがエアガンで撃たれてしまうかもしれないし、取り押さえるときに虐待者を突き倒してケガさせてしまい、その責任を問われるかもしれません。

こういった諸々のリスクを考えると、やはり一般人は無理に手を出さず、刑事事件捜査のプロである警察官に通報して対処してもらうことが順当でしょう。

ネット上でも同じです

虐待行為を発見したのがネット上であっても、公園で発見した時と変わるものではありません。ネット投稿者や犯行現場を個人の力で突き止めるのは至難の業ですから、やはり基本的には警察に通報し、犯罪行為として捜査してもらうことになるでしょう。

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プロフィール

石井 一旭
京都大学法学部卒業、京都大学法科大学院修了。京都市内で「あさひ法律事務所」を開設、ペット問題をはじめとして、交通事故・相続・離婚・債務整理・不動産・企業実務・登記等、幅広い分野を取り扱う。司法書士有資格者。

あさひ法律事務所HP
https://www.asahilawfirm.com/

弁護士石井一旭のペット法律相談所
https://peraichi.com/landing_pages/view/lawyerishiipettrouble

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