弁護士石井センセイのペット事件簿

第4回 里子に出したペットを取り戻したい!

弁護士石井センセイのペット事件簿

大阪で弁護士をされている石井一旭先生に、実際にあったペットに関連する事件をご紹介いただきます。
「ペットを愛する方々に楽しく法的知識を身につけていただき、弁護士を身近な相談相手として感じてもらいたいと思っております。」


Aさんは、飼っていた猫がたくさん子どもを産んだので、うち何匹かを里子に出しました。ところが里親が、あげた子猫をきちんと世話していないようで、虐待されているのではないかとすら感じられるのです。Aさんは、里親から子猫を取り戻したいと考えています。

時折、「里子に出したペットを取り戻したい」という相談を受けます。
「里子に出してから事情が変わった(また飼えるようになった)」
「受入先できちんと世話されていないようだ」
「月に1度は会わせてくれる約束だったのに守られていない」などなど、その理由は様々です。

さて、Aさんは猫を取り戻すことができるのでしょうか。

このコラムでも何度かお話ししましたように、法律上ペットは「物」として扱われることとされており、「ペットを里子に出す」という事実を法律的に解釈すると、無償であれば里親との間に贈与契約が、有償であれば里親との間で売買(あるいは交換)契約がなされたということになります。

結論から言いますと、有償・無償、いずれの場合でも、Aさんは原則として子猫を返してもらうことはできません。契約によってペットの所有権は里親に移転してしまっているからです。そして、「物」の所有者は、自由にその「物」を使用することができます(民法206条)。
命あるペットについて、敢えて不謹慎な言い方をしてしまえば「一度物をあげたり売ったりした後は、その物をどう使おうと、基本的に、もらった人の自由である」ということになってしまうのです。

ですから、里親が子猫をきちんと飼っていないからといって、子猫を返してもらうことはできません。
それは例えば、買い手が本を乱雑に扱っているからといって、本を売った人が本を返してもらうことはできないことと同じなのです。

それでは、このような事態を防ぐためにはどうしておけばよかったのでしょうか。

まず贈与契約(無償譲渡)の場合、「毎日散歩に連れて行くこと」だとか「病気にかかったら獣医にかからせること」などと、里親に一定の義務を負担させる条件をつけておく(これを「負担付贈与」といいます)と、里親がその義務を果たさない場合は、里親の債務不履行を理由として契約を解除し、子猫を取り返すことができます(民法553条)。

売買契約の場合も同様に、「一定の場合(約束が破られた場合)には契約を解除する」という解除条件をつけて売買契約を締結しておけば、条件が成就したこと=里親が約束を守らなかったことを主張立証して、売買契約を解除し、子猫を取り戻すことができるのです。

どちらにしても重要なのは、ペットを譲り渡す時、すなわち契約の時点で、贈与契約の負担や売買契約の解除条件をきちんと明示した契約書を交わしておくことです。もちろん、そのためには、里親に「万一こんなことがあったら、返してもらいますよ」と説明して、その理解を得ることが必要です(一方的な契約はできません)。

この説明はなかなか難しいかもしれませんが(「ちゃんと世話をすると言っているのに信用していないのか!」と怒る里親もいるかもしれません)、将来のトラブル防止のため、そして何より里子に行くペットのために、契約時にしっかりとした契約書を作っておきましょう。

なお、たとえ里親がペットを虐待していたとしても、このような条件を明確に付さないままペットを譲渡した場合は、里親からペットを強制的に取り戻すことはできません。里子に対する虐待については、動物愛護法違反を理由として、警察や保健所、動物愛護センター等に連絡して対処を求めることができるにとどまります。里子を取り戻すためには、里親と独自に交渉して、ペットを返してもらうよう務めることになります。

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プロフィール

石井 一旭
京都大学法学部卒業、京都大学法科大学院修了。現在、大阪市内で弁護士として、交通事故・相続・債務整理・不動産・刑事・企業実務・登記・ペット問題等、幅広い分野を取り扱う。司法書士有資格者。

弁護士石井一旭のペット法律相談所
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