弁護士石井センセイのペット事件簿

第6回 自分が死んだら、残されたペットはどうなるのだろう…その2

弁護士石井センセイのペット事件簿

大阪で弁護士をされている石井一旭先生に、実際にあったペットに関連する事件をご紹介いただきます。
「ペットを愛する方々に楽しく法的知識を身につけていただき、弁護士を身近な相談相手として感じてもらいたいと思っております。」


柴犬の「サン」を飼い続けているCさんの場合、相続人である息子たちは仲が悪く、自分の死後、相続争いになることが目に見えている様子です。自分に万一のことがあった場合、サンがどうなってしまうのか心配でたまりません。

前回(第5回)では、幸いにもペット飼育を引き受けてくれる相続人がいたのですが、今回のように相続人に期待できない場合は、誰か信頼できる第三者(法人や、団体も含め)に任せるしかありません。
もちろん善意で引き取ってくれる方もおられるでしょうが、「それでは悪い、飼育費は私の財産で賄ってほしい。」あるいはもっと端的に「ペットの今後に自分の財産を使いたい、ペットに私の財産を残したい!」という方もおられるのではないでしょうか。今回はそのための仕組みとして、『信託制度』をご紹介します。

信託制度について

信託とは、特定の者が一定の目的に従い、財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいいます。(信託法2条1項)
要するに、自分の財産を信頼できる人に託して、一定の目的のために管理・使用してもらう制度のことです。この制度を利用すれば、ペットが生きていく上で必要な財産を、ペットのために残すことが可能となります。

具体的には、まずペットの世話をして貰える人(受益者)と、ペットのための財産を管理してくれる人(受託者)を探します。ペットのために財産を残したい人(委託者)は、受託者との間で信託契約を締結して、ペットの飼育に必要な財産を信託します。委託者に万一のことがあって、ペットを飼えなくなった場合、受益者にペットの所有権を引き渡し、受託者は信託財産の中からペットの飼育費用を支払っていきます。信託財産は相続財産から区別されますので、たとえ死後に相続争いがあったとしても、ペットの飼育費用が目減りするなどのトラブルには巻き込まれずに済みます。

実際に信託制度を利用するには?

今回のケースに即して説明しますと、Cさんは「サン」の面倒を見てくれる人(Sさんとします)と、「サン」のために財産を管理してくれる人(Tさんとします)を探して、協力をお願いします。(この場合は、息子さんを選ぶことは避けたほうがいいでしょう)そして、三者で具体的な飼育方法や、そのためにかかる飼育費用などを相談して決定し、Tさんとの間で信託契約を結びます。
Cさんに万一のことがあった場合、SさんはCさんから「サン」の引き渡しを受け、以降、TさんはSさんに、信託契約で決められた一定の飼育費用を支払う、ということになります。

大まかな構図は上記のとおりですが、信託契約は構成が複雑になりがちですし、信託契約の内容があいまいであったり間違ったものであったり、当事者の理解を十分得られないまま契約してしまったりすると、いざ実行となった段階でトラブルとなる危険性もあります。それでは何のために信託制度を利用したのかわからなくなります。本件のようなケースにおいて信託制度の利用を検討される方は、信託契約の作成・締結についてはきちんと専門家に相談・依頼することをお勧めします。

また、受益者がきちんと飼育しているかどうか、受託者がきちんとペット用の資産管理をしているかどうかを監督する信託監督人を選任することもできます。
信託監督人を選ぶ場合も、財産管理業務に長けた弁護士などの、法律の専門家を選任しておくことが望ましいでしょう。

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プロフィール

石井 一旭
京都大学法学部卒業、京都大学法科大学院修了。現在、大阪市内で弁護士として、交通事故・相続・債務整理・不動産・刑事・企業実務・登記・ペット問題等、幅広い分野を取り扱う。司法書士有資格者。

弁護士石井一旭のペット法律相談所
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