旅する獣医師TONOの動物イロイロコラム

【健康診断】人気犬種別、受けておくべき健診での検査項目

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〜日本では獣医師。世界では旅人。〜

世界一周や日本縦断を経験した“旅する獣医師とうの”さんが、日頃のペットの健康や病気に関するアドバイスから、世界の動物たちのリアルな日常まで分かりやすくお話していくコラムです。
自分のペットの事を知り、世界の動物事情を知ることで、よりペットと暮らしやすい日本を一緒に目指しましょう!


みなさんこんにちは。
旅する獣医師とうのです。

今回も前回のコラムに引き続き、犬猫の健康診断について。前回は年齢別で受けておくべき健診項目を解説しましたが、今回は犬種別で解説していきますね。

「犬」と一言で言っても、その種類は実に多様です。全ての犬種が一様になってしまう病気もあれば、遺伝子や体格・体質の関係で、犬種によって“なりやすい病気”にかたよりがあることもあります。

特に日本で飼われている頭数の多い、トイプードル、チワワ、柴犬、ミニチュアダックスフンド、ポメラニアン、フレンチブルドッグについて、それぞれの犬種の特性に合わせたおすすめ検査項目を紹介します。

家で気をつけておくべき事

動物病院での検査より前に、常日頃の体調を飼い主さんが知っておくことは、何よりも大切な健康管理の情報です。ここでは自宅で毎日チェックしておいてもらいたいことを紹介します。

・元気(遊ぶ時間、寝ている時間の変化)
・食欲(多頭飼いの場合はできれば別皿で用意し、食べている量を管理しましょう。)
・便状態(頻度、色、形、柔らかさ)
・尿状態(頻度、色、量)
・飲水量(つぎ足す時の量を測っておくとベストです。)
・呼吸回数(安静にしている時の呼吸回数が30回を超えると危険信号です。)

そのほかにも、体を痒がっている、歩き方がおかしい、咳をする、などの異常がある場合はその記録をして病院を受診しましょう。異変を感じたら、動画を撮ることも診断の助けになります。

動物病院で受けられる検査

次に、健診として“犬猫が一般の動物病院で受けられる検査”とは、どんなものなのか挙げていきます。

・一般身体検査(聴診や触診)
・尿検査
・糞便検査
・耳鏡検査
・レントゲン検査
・超音波検査
(・眼科検査、神経学的検査など)

※上の検査項目は一般的な動物病院で受けられる検査項目の例ですが、あくまで病院によって検査可能な範囲は異なりますし、用意してある健診のプランも異なります。

さらに、MRIやCT検査ができる病院もありますが、これらの検査は動物の場合、麻酔をかけないとできないため、病気が疑われる時に検査を受けることが多く、毎年の健診項目には入らないことがほとんどです。

人気犬種別おすすめ検査項目

次に、人気犬種ごとに“特に診ておいてもらいたい検査項目”を紹介します。

1.トイプードル

・触診:膝のお皿が外れる膝蓋骨脱臼や腰痛など、骨格系の疾患を起こしやすいので、触診をしっかりしてもらいましょう。
・血液検査:クッシング症候群や糖尿病などの内分泌疾患が比較的起きやすい犬種です。その早期発見のためにも毎年の血液検査がすすめられます。

2.チワワ

・触診:小型犬に多い膝蓋骨脱臼などの骨格の病気をチェックしてもらいましょう。
・心臓の検査:特に中年齢以上のチワワでは心臓弁膜症に注意が必要です。早期発見に努めましょう。

3.柴犬

・耳の検査:一般に垂れ耳の犬ほど外耳炎になりやすいですが、柴犬はアレルギー・アトピーに関連した外耳炎を起こしやすいです。
・目の検査:日本犬種では緑内障や白内障を比較的起こしやすいため、定期的な検査が勧められます。

4.ミニチュアダックスフンド

・触診:ダックスフンドはその体型から椎間板ヘルニアを起こしやすい犬種です。一見何も症状がないように見えても、腰の痛みや足に軽度の麻痺が出ていないかなどをチェックしてもらいましょう。
・血液検査:クッシング症候群、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患を比較的起こしやすい犬種ですから、その早期発見に役立ちます。
・超音波検査:犬の死因の上位は悪性腫瘍(ガン)であり、ダックスフンドもガンの発生が多いです。体の中にある腫瘍は超音波検査(肺ならレントゲン検査)などで発見できる可能性が高くなります。

5.ポメラニアン

・触診:小型犬に多い膝蓋骨脱臼などの骨格の病気は、ポメラニアンにも多いです。
・心臓の検査:比較的心臓の病気になりやすい犬種です。中年齢からは毎年、心臓の検査を受けることをお勧めします。

6.フレンチブルドッグ

・耳の検査:柴犬と同じ理由で、アレルギー・アトピーに関連した外耳炎を起こすことがあります。
・脳・神経の検査:先天的な背骨の椎体奇形によって脊髄(背中の神経)が圧迫されやすかったり、中年齢以上では頭蓋内腫瘍が起きやすかったりといった、脳神経系の病気に注意が必要な犬種です。健診として毎回必要なわけではありませんが、歩き方の異変や、突然の性格の変化がありその変化が激しい場合や、けいれんなどの症状が出た場合は積極的に脳神経を調べる検査(MRIなど)をすべきでしょう。

まとめ

もちろん上に挙げた検査だけでなく、全てを均等にチェックすることが理想的です。
一般身体検査や尿検査などの基本的な検査をちゃんと受けて、年齢や犬種に応じて特に気をつけないといけないところを更に検査していくなど、我が家の愛犬にあった検査項目を主治医の先生とよく相談して決めていきましょう。

犬はいつまでも子供のような見た目や仕草で私たちを癒してくれますが、人間の何倍もの早さで成長し、老化していきます。
3歳以上で歯周病、7歳以上でシニア・・・。大型犬であれば10歳にも達さずに亡くなる事も多くあります。
「うちの子はまだ大丈夫。」
とは絶対に思わずに、日頃の体調に常に気を配り1日1日を大切にしてください。

年齢別のおすすめ検査項目については、前回のコラムでも紹介していますので参考にしてみてくださいね。

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プロフィール

唐野 智美
獣医師として、一般外来診療、シェルター診療(東日本大震災の被災動物保護施設)、救急獣医療に従事。
シェルターの閉鎖を機に、幼少期からの目標であった世界一周ひとり旅に出る。
旅の中ではバックパッカーとして各国の路地を歩き、世界中の人と動物たちの生活を等身大で体感する。
世界中で多くの人々の優しさに触れたことから、日本のことも知りたいと強く思うようになり、約1年間の世界一周を達成したその足で、東北から九州までヒッチハイクで縦断。
帰国後、国内5都市で「人と動物の共生」をテーマとした世界一周動物写真展を開催。
世界一周以前から世界中の動物シェルターを巡り、見学やボランティアを経験するなど、海外の動物事情に精通。
日本に持続可能な動物福祉施設(シェルター)を建て、行政殺処分を減らしていくことを人生最大の目標とし、動物病院での診療と並行して、執筆など動物福祉の向上を目指した活動を行なっている。

Webサイト:Animal Traveler 〜犬と猫を探して世界を歩いてみる〜
http://animaltraveler.com/

Blog:今なにしてる??ー動物&旅ブログー
http://animaltraveler.com/blog/new/

instagram:@satooono
https://www.instagram.com/satooono/

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