旅する獣医師TONOの動物イロイロコラム

【犬猫の熱中症】対策・症状・応急処置。夏だけの病気じゃないんです!

旅する獣医師TONOの動物イロイロコラム

〜日本では獣医師。世界では旅人。〜

世界一周や日本縦断を経験した“旅する獣医師とうの”さんが、日頃のペットの健康や病気に関するアドバイスから、世界の動物たちのリアルな日常まで分かりやすくお話していくコラムです。
自分のペットの事を知り、世界の動物事情を知ることで、よりペットと暮らしやすい日本を一緒に目指しましょう!


みなさんこんにちは。
旅する獣医師とうのです。

東北で働いていたり世界一周をしていたため、昨年が久しぶりの地元福岡での夏となりました。

久しぶりの感想は「夏ってこんなに暑かったっけ・・・?」というもの。
なんだか、夏がやたらと暑く、冬の雪も減ったように感じます。
皆さんのお住いの地域はどうでしょうか?

気候変動の問題、グレタさんのおかげか最近ではよく耳にしますよね。
ゴミを減らす努力をしたりエコグッズを選んだり。
私も自分のできる範囲で気にかけているつもりですが、微々たる努力もむなしく温暖化は進んでいます。
(それでも小さなことの積み重ねに意味があると信じて気をつけ続けます!)

そして、人のみならず、ワンちゃんネコちゃんの熱中症も年々増えていっています。
ということで、今日は動物の熱中症のお話をしたいと思います。

熱中症になりやすい時期

九州の救急病院に勤務していた頃、かなりの件数の熱中症、しかもかなり重篤な患者さんに遭遇していました。
九州などの西日本のみならず、関東含む本州も熱中症は多発しています。
東北で仕事をしていた時は九州ほどの実感はありませんでしたが、涼しい地域であってもやはり熱中症は起きていました。

熱中症というと、どうしても”夏の病気”というイメージがありますが、実は真夏でなくとも熱中症にはなるんです!!
早ければ5月のゴールデンウィークに熱中症になる子もいます!!

7〜8月など本格的に気温が上がるより以前から、例えば5月のゴールデンウィークのお出かけの時、湿度の高い梅雨時期も要注意なのです。
単純に気温だけでなく、湿度や犬種、毛質など様々な要因が熱中症に関わっていると言われています。

ペット保険会社アニコムさんが公開しているデータによると、フレンチブルドックやパグなど短頭種さん(鼻の短い犬種)や、ゴールデン&ラブラドールレトリーバーなどの中型犬以上の体格の犬種で報告が多いようです。

では主にワンちゃんについて熱中症の対策、症状、応急処置をそれぞれお話していきますね。

熱中症対策

・エアコンの設定は28度以下に。
人が結構涼しいな〜と思うくらいがワンちゃんの適温です。
お年寄り犬や子犬さんは冷やしすぎにも注意。

・外飼いのワンちゃんもできれば室内に。
夏場だけでもエアコンの効く玄関先や室内に入れることを検討してください。
どうしても室内に入れることができなければ、日陰が十分にあり、風通しの良い場所を選ぶようにしてください。
冷感のある動物用マットなどを利用して少しでも体温の上がりづらい環境を作りましょう。

・陽の高い時間の散歩を避ける。
特に7〜9月は日の出前後までと日の入りから1時間以上後の散歩をお勧めします。

・散歩は短時間
代わりに屋内で遊ぶなど、ワンちゃんのストレス発散を心がけてください。涼しい時期は十分な散歩時間を取ってくださいね。

・散歩中にも水を持参
がぶ飲みは水中毒のリスクがあるので危険ですが、こまめに水を飲んでもらってください。

・外にいる間は首元をアイスノンなどで冷やす。
凍らせたタオル、アイスノン+タオルなどは効果的。首に巻ける熱中症対策グッズを利用するのも手。
ただし、誤飲には気をつけてくださいね。

・車内などの密室に置いていかない。
人間の子供でも問題になっていますが、エアコンの効いていない密室での放置は絶対中の絶対にしてはいけません!!!

症状

・呼吸が早い。ハアハアしている。
・元気がない。動きたがらない。ぼーっとしている。(逆に落ち着きがなくなる場合もあります。)
・よだれが多い。
・食欲がない。
・舌の色がいつもより赤い。(逆に白くなったり紫になっていたらかなり重篤です。)
・嘔吐下痢。(重篤)
・呼びかけに反応しない。(重篤)
・失神、けいれん発作など(重篤)

応急処置

上の症状に当てはまり、心当たりがある場合や、体温が高いかな?と感じたらすぐに動物病院を受診してください。

自宅で体温測定ができれば一番ですが、触った感じで明らかに体温が高く、熱中症が疑わしい場合はすぐさま体を冷やす必要があります。
体全体を水で濡らしたら、首回り、脇、お腹、足の付け根に氷嚢を当ててすぐ病院へ。
※熱中症は高体温の後、低体温になってしまうことがあるため注意が必要です。病院に着くまでの間にシバリング(震え)が出てきた際にはすぐに冷却をやめてください。

重篤な熱中症は急速に死に至ります。
体温が下がったとしても後遺症で苦しんだり、治療しても間も無くして亡くなることがあり得るのが熱中症。

1分1秒でも早く体温管理と点滴、投薬をしてもらう必要があるので、体温が下がればOK!ではない!!ということをよく頭に入れておきましょう!

まとめ

・熱中症は5月から注意する!
・夏場の陽が出ている時間は外に出ない!
・こまめな水分補給!
・怪しいと思ったらすぐ病院へ!

夏前から熱中症対策を開始すると同時に、日頃の健康ケアのためにも犬猫用の体温計を家に常備しておくといいですね。

ワンちゃんは地面に近いので、人間以上にアスファルトの熱の影響にさらされます。
その辺りを意識して快適に夏場を過ごしましょう。

余談。
夏場は愛犬と涼しい山や川辺でキャンプ♪というのも素敵ですが、山や川などに行く場合は”レプトスピラワクチン”を打っていきましょうね!
詳しくは本コラム第2〜3回ワクチンの話を参考にしてください!

参考資料:アニコム家庭どうぶつ白書2018 第3部 どうぶつの疾患統計
https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_201812_3_3.pdf
(最終アクセス2020年3月20日)

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プロフィール

唐野 智美
獣医師として、一般外来診療、シェルター診療(東日本大震災の被災動物保護施設)、救急獣医療に従事。
シェルターの閉鎖を機に、幼少期からの目標であった世界一周ひとり旅に出る。
旅の中ではバックパッカーとして各国の路地を歩き、世界中の人と動物たちの生活を等身大で体感する。
世界中で多くの人々の優しさに触れたことから、日本のことも知りたいと強く思うようになり、約1年間の世界一周を達成したその足で、東北から九州までヒッチハイクで縦断。
帰国後、国内5都市で「人と動物の共生」をテーマとした世界一周動物写真展を開催。
世界一周以前から世界中の動物シェルターを巡り、見学やボランティアを経験するなど、海外の動物事情に精通。
日本に持続可能な動物福祉施設(シェルター)を建て、行政殺処分を減らしていくことを人生最大の目標とし、動物病院での診療と並行して、執筆など動物福祉の向上を目指した活動を行なっている。

Webサイト:Animal Traveler 〜犬と猫を探して世界を歩いてみる〜
http://animaltraveler.com/

Blog:今なにしてる??ー動物&旅ブログー
http://animaltraveler.com/blog/new/

instagram:@satooono
https://www.instagram.com/satooono/

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