旅する獣医師TONOの動物イロイロコラム

【ワクチンの話〜猫編〜】猫ちゃんのワクチンっていつから打つの?毎年打った方がいいの?

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〜日本では獣医師。世界では旅人。〜

世界一周や日本縦断を経験した“旅する獣医師とうの”さんが、日頃のペットの健康や病気に関するアドバイスから、世界の動物たちのリアルな日常まで分かりやすくお話していくコラムです。
自分のペットの事を知り、世界の動物事情を知ることで、よりペットと暮らしやすい日本を一緒に目指しましょう!


みなさんこんにちは。
旅する獣医師とうのです。

私はワンちゃんネコちゃんと一緒に遊ぶのが大好きですが、ネコちゃんに高いところから見下ろされるのも好きです。薄目でジト〜とこちらを見ている感じがたまりません。(笑)

さて、今回は猫ちゃんについて。ワクチンの種類や、ワクチンを毎年打つべきかどうか、獣医師目線でお話をして行きます。ちまたではワクチンは「毎年接種」とか「3年ごとでいい」とか話が右往左往していますけど、実際どうなの??というところを解決していきたいと思います。

ワクチンの種類以外、副反応のことなど基本にはワンちゃんと同じなので、以前のコラムもぜひご覧ください

【ワクチンの話〜犬編その1〜】ワクチンの種類や接種の時期がよくわからない・・・という方のために。
【ワクチンの話〜犬編その2〜】ワクチンの副反応(副作用)が怖い・・・という方のために。

そもそも、猫にワクチンを打つべきか否かですが、私個人の考えとしてはできれば打っておいた方がいい!と考えています。

特に子猫の時のワクチンはとても重要。

ワンちゃんの場合は“必ず”と書きましたが、猫ちゃんは“できれば”としています。この理由はまた後ほど。

*獣医療におけるワクチンについては世界的なガイドラインというものが存在します。
本記事ではWSAVAワクチネーションガイドライングループ(VGG)によって推奨されているガイドラインと、日本獣医学会で推奨している内容を基準に、一般の病院で実際にある私の経験を踏まえてお伝えしていきます。

ワクチンの種類について

第2回目のコラムで犬猫のワクチンにはコアワクチン(全世界の犬猫が打つべきワクチン)とノンコアワクチン(環境次第で打つことが推奨されるワクチン)があることをお話しました。

猫ちゃんのコア&ノンコアワクチンはこちら。

・猫のコアワクチン
猫汎白血球減少症ウイルス(FPV)、猫カリシウイルス(FCV)、猫ヘルペスウイルスⅠ型(FHV-Ⅰ)

・猫のノンコアワクチン
猫白血病ウイルス(FeLV)、猫免疫不全ウイルス(FIV)、猫クラミジア等

猫半白血球減少症ウイルス(FPV)

この中でも、猫汎白血球減少症ウイルス(FPV・猫パルボウイルス)感染症は子猫たちを高確率で死に至らしめる恐ろしい病気です。

私もパルボウイルスに感染し発症してしまった子猫ちゃんの診療を何度か経験しましたが、手を尽くしても助けられる可能性は限りなく低いです。

FPVウイルスはワクチンを打つことで予防できます。

猫カリシウイルス・猫ヘルペスウイルス

通称“猫カゼ”の原因となるウイルスで、野良生活を経験していたらかなりの確率で持っていると考えていいウイルスです。

野良猫ちゃんで目やにや鼻水がひどい子を見たことはありませんか?このカリシ・ヘルペスウイルスが関係していることが多いです。(もちろん、野良経験が無くても持っている可能性はあります。)

発熱や食欲減退だけでなく、ひどい結膜炎の場合は失明する可能性のある感染症です。私も過去に、このウイルスに感染した上、二次感染まで起こし重症化して生死の境をさまよい、命は取り留めたけれども失明してしまった、という子猫ちゃんを治療していたことがあります。

いずれも免疫力が不十分な子猫期に特に影響を受けるため、しっかりワクチンプログラムを受けることをお勧めします。(打つタイミングに関しては後述します。)

ただし、このカリシ&ヘルペスウイルスについては、ワクチンを打てば絶対発症しない!というわけではありません。

残念ながら、これらウイルスに対するワクチンは強毒株に対しては防御力が十分ではないと言われています。一度感染すると、たとえワクチンを打っていても潜伏感染してしまい、免疫力が落ちたときに目やに・鼻水・くしゃみ・口内炎・発熱といった症状を引き起こしてしまいます。

とはいえ、外出したり、ペットホテルに行ったり、ほかの猫ちゃんと触れる機会があるなど、感染リスクのある猫ちゃんには是非とも接種しておいてもらいたいワクチンです。

猫白血病ウイルス・猫エイズウイルス

猫白血病と猫免疫不全(猫エイズ)ウイルスは野良猫さんの世界では良く遭遇するウイルス。

名前の通り、白血病やそれに随伴する癌疾患になったり、猫エイズウイルスは発症すると免疫力が極端に低下するので、普段は何の症状も出さず、どこにでもいるような“日和見菌”にも蝕まれる身体になってしまいます。

猫白血病ウイルスと猫免疫不全ウイルスのワクチンには“アジュバント”(ワクチンの効果をあげるための添加物)が使われており、このアジュバント添加ワクチンは“猫注射部位肉腫”という悪性度の高い腫瘍の原因として重要視されています。

ワクチンは打った方がいいの?

ここまで聞くと、

打った方がいいのか、どうなのか・・・
打つのも怖いなあ・・・

という印象を持たれると思います。

私が猫ちゃんのワクチンについて、診察室で飼い主さんと相談する時はこんな感じでお話していますので、参考にしてください。

・コアワクチン(最低3種)は持病や今までの接種後トラブルがない限りは、定期的に打ちましょう。

・ノンコアワクチンは外に出る猫ちゃんや、保護猫さんなど他の猫ちゃんが出入りする環境であれば打つことをお勧めします。

ワクチンを打つタイミングについて(ワクチンプログラム)

ワクチンのタイミングはワクチンの内容やメーカーさんによっても異なってくるので、かかりつけの先生と相談する必要があります。ここではWSAVAのワクチンガイドラインを元に“大まかな流れ”を説明します。

〜子猫〜
・初回:生後6~8週齢(2ヶ月頃)で3種ワクチン(コアワクチン)
・2回目:初回から1ヶ月後(コアワクチン±ノンコアワクチン*)
・3回目:2回目のワクチンから1ヶ月後、かつ4ヶ月齢になってから(2回目と同じ内容)
・ブースターワクチン:生後26週齢〜52週齢(6〜12ヶ月)(ノンコアワクチンの種類によるが基本的に3回目と同じ内容)

〜成猫(子猫期にワクチンを打っていることが確実な場合)〜
・コアワクチン(3種)は3年毎
・コアワクチンの中でもカリシ&ヘルペスウイルスワクチンは1〜3年毎
(外出する、家に保護猫が来るなど他の猫の出入りがある、ペットホテルに預ける機会があるなどの場合は毎年接種を推奨)
・ノンコアワクチンのうち、猫エイズウイルス&クラミジアワクチンは基本的に毎年接種、猫白血病ウイルスワクチンは3年毎(いずれも必要があれば)

〜成猫(譲渡などで過去のワクチン歴が不明な場合)〜
・コアワクチンのうち、猫半白血球減少症ウイルスのワクチンは1回(ワクチン製造業者によっては2回を推奨している場合もあるので要相談)
・コアワクチンのうち、カリシ&ヘルペスウイルスのワクチンは2〜4週毎に2回
・ノンコアワクチンは基本的に2〜4週間ごと2回(製品による)
・その後のプログラムは上の“成猫(子猫期にワクチンを打っていることが確実な場合)”と同じ。

プログラムの意味

なぜ、子猫期に短期間で何度もワクチンを打ったりと、こんな小難しいプログラムが必要になるのかについては、お母さんからもらう“移行抗体”が関係しています。

こちらについてはワンちゃんと同じなので、【ワクチンの話〜犬編その1〜】のコラムをご覧ください。

ワクチンの副反応(副作用)

一般的な副反応はワンちゃんと同じですので、【ワクチンの話〜犬編その2〜】を参考にしてください。

大きな違いとして、猫ちゃんのワクチンの副反応のうち重大なものに“猫注射部位肉腫”があります。

名前の通り、猫ちゃんは稀に注射した部分に肉腫(悪性腫瘍)ができてしまうのです。特にアジュバントを添加したワクチン(猫白血病、猫エイズウイルスワクチン等)で問題になることがあります。

この腫瘍は悪性度が高いので、発生してしまった場合は手術で大きく取り切らなければいけません。なので、猫ちゃんの予防接種は“最悪、切り取れる場所”として後ろ足に打つことが推奨されています。(足を切り取るって残酷な気もしますが、命には代えられません・・・)

もしノンコワクチンを打つ時に、背中など上半身に打たれそうになったら、獣医さんに違うところに打つようお願いしてもいいと思います。

そして、飼い主さん自身で
・いつ
・どの部位に打ったか(詳しく!)
を記録しておきましょう。(病院でもらえるワクチン証にメモするなど。)

翌年は違う方の足に打つ、という風にしていけばリスクは減らせると言われています。

そして、悪性腫瘍ができる可能性があるのになぜワクチン接種が推奨されるかというのは、

打つメリットの方が、猫注射部位肉腫のデメリットを上回るから。

です。

もちろん、
・1〜数頭飼い
・みんな検査済みでウイルス陰性
・ペットホテルも含め外に出ることがない
・新しい猫ちゃんを迎え入れることがない
といった環境であれば、打つ必要はないと言ってもいいでしょう。

まとめ

状況によっては打つ必要がないとは言いましたが、予期せぬ事態はいつ起こるかわかりません。実際の患者さんでも「子猫を拾ってしまって・・・」「急遽ペットホテルに預けないといけなくなって・・・」「気をつけていたのに脱走してしまって・・・」という話をよく耳にします。

後になってワクチンを打っておけばよかった!と思っても間に合わないこともあります。そういう意味でも、“基本的に打つ”というスタンスでいた方がいいでしょう。

ワクチンプログラムはうちの子を守るためにとても大切なことです。
家族の猫ちゃんの状況を踏まえて、主治医の先生と良く相談して決めてくださいね。

参考文献:WSAVA Global Veterinary Community Vaccination Guidelines 2015
(最終アクセス 2020年3月2日)

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プロフィール

唐野 智美
獣医師資格取得後、東北にて勤務。
一般外来診療ならびに東日本大震災により被災した動物たちのためのシェルター診療を経験。
シェルターの閉鎖を機に、幼少期からの目標であった世界一周ひとり旅に出る。
世界中で多くの人々の優しさに触れたことから、「日本も見てみたい!」と強く思うようになり、約1年間の世界一周を達成したその足で、東北から九州までヒッチハイクで日本縦断。
その後は救急病院の獣医師として研鑽を積みながら、国内5都市で世界一周動物写真展を開催。
自身の人生最大の目標は、日本に持続可能な動物福祉施設(シェルター)を建て、行政殺処分を減らしていくこと。
中学生で初海外を経験して以来、お金を貯めては世界中のシェルターを巡り、見学やボランティアを経験。
2020年現在、動物シェルターが多いという事でオーストラリアに滞在中。

Webサイト:Animal Traveler 〜犬と猫を探して世界を歩いてみる〜
http://animaltraveler.com/

Blog:今なにしてる??ー動物&旅ブログー
http://animaltraveler.com/blog/new/

instagram:@satooono
https://www.instagram.com/satooono/

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