災害とペット~今できることを実行しよう~

より多くの命を救いたい「動物いのちの会いわて」

ツルとカメ。—イケてるシニアライフを目指して—

海外と比べて何かと自然災害が多い日本。全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の20.5%が日本で起こっているそうで、他にも台風、大雨、津波に火山噴火など自然の脅威と常に隣り合わせと言えます。
ペットというかけがえのない家族がいる以上、防災対策は必須。災害が起きたら何が必要なのか?どう行動すればいいのか?
今できることから始めてみましょう。


2013年、東日本大震災から2年が経った頃。岩手県で犬・猫の救出、救援活動を行っている動物愛護団体「動物いのちの会いわて」代表の下机都美子さんにお話を伺いました。

「動物いのちの会いわて」は、命が危うい動物を救いたいという思いから設立され、飼い主に飼育放棄された子や、飼い主さんが亡くなられたり高齢で世話が出来なくなった子の保護・譲渡活動をされています。活動拠点である岩手県は東日本大震災の被災地であり、震災直後から餌の配達や保護をされていました。

あれだけの甚大な被害をもたらした震災を経験された今だから思うことや、今後の活動についてお話して頂きました。

3月11日午後2時46分、この日この時刻を心に刻まない人はいない、そんな大惨事に私たちは遭遇してしまいました。それは動物たちにとっても同じ、むしろ六感が発達している彼らにとってはもっと驚きだったはず。

いのちの会が保健所から引き取り、譲渡した秋田犬「さくら」は、いつもだと岸壁でご主人が漁を終え帰るのを寝そべって待っていた。その日は漁に出るご主人を見送りもせず、小屋を抜けだしひとり高台に陣取って何度呼んでも降りてこなかった。津波がきてご主人が岩に登ったとき、もっと高くもっと高くとでも言うように大声で吠え自分の側まで登らせ、お互いの命を守ったといいます。


「さくら」とご主人

また、ダックスフントの3匹は散歩時間ではないのにリードをくわえて何度も吠え、しょうがなくご主人が外に出たら津波がすぐそこまで来ていた。急いで裏の山道の階段を犬に引かれて登りふり返ったら、自分の後ろを歩いていた人の姿がなかった。

「もう一歩遅れていたら……」

その反対に犬や猫を助けようと逃げ遅れた方も大勢おりました。

やっとガソリンを調達し現地に動物の餌を運べたのは3月20日。見渡す限りがれきの山で逃げ惑う動物などは1匹も見つかりません。それではと避難所めぐりしてみても、動物の所在など聞くのがはばかられるくらいの緊迫感。自分で目に見える範囲の状況を掴むしかありませんでした。その後少しずつ情報が集まり、被害の大きい陸前高田市を中心に餌の配達や保護を続けました。


犬を抱いて物資をもらいに集まった方々(陸前高田)

しかし、やっとの思いで生き延びた子でも避難所では軒下や車の中で暮らすことを余儀なくされた子もいました。また、生き延びても飼い主との別れが待っていた動物もたくさんありました。避難所や仮設住宅に動物と住むことが出来ても、そのあとの暮らしの目途が立たない。自前の家を建てる気力も資力もないというのです。

「だったら今、この子と別れた方がまだ、新しい飼い主を見つけてあげられる」

こんなつらい選択をし、いのちの会に預けていった飼い主。「2年でも3年でも預かりますよ」と言ってもむなしい思いが残ります。

「動物いのちの会いわて」では震災直後から被災地に入り県や保健所、獣医師会と連携を取りながら、動物保護・預かり、被災動物への餌の供給を行ってきました。

現在(2013年取材当時)、震災関連の保護やお預かりした犬・猫は、ほとんどの子が飼い主さんの元に戻るか、新しい家族を見つけることが出来ました。しかし、一旦引き取られても、飼い主さんが長期の出稼ぎに行かれたり、入院される場合や入居先がペット不可などの理由で、再度お預かりする子もいます。

また、家族とはぐれた猫たちが被災地で次々子猫を産んでいます。厳しい震災を生き抜いた者同士という優しい気持ちから、仮設住宅の方が餌を与え、さらにその猫が子猫を産みます。幸い餌付けは地域で問題にはなっていませんが、これ以上不幸な命を作らない為にも母猫の避妊に力を入れております。

こんなに大きな震災は「想定外だった」と思うのではなく、去勢・避妊を行う、キャリーの中に入れるようにしつけをするなど、日常の管理の仕方が大切です。震災で保護した犬・猫のほとんどが、元の飼い主ではなく新しい家族に引き取られました。マイクロチップを装着・登録している場合、元の家族に戻ることができますし、飼い主さんが亡くなられていても親戚の方に引き取ってもらえて、命を繋ぐことができます。『飼う責任』を今一度、考えることが必要なのです。

「動物いのちの会いわて」は設立してから、約3500匹の動物を里親に譲渡してきました。しかし、助けられなかった命もありました。施設から動物病院まで距離があることもあり、日常的な治療が出来ていれば、もう少し早く治療や処置が出来ていれば助かった命があるのでは。また現在施設にいる約200匹の犬・猫に最大限の治療をしたいという思いで、「いのちの会診療所」を建設することになりました。

診察してくださる獣医師の方は、休みの日に来てくださり、遠くは九州から診察に来てくださる先生もいらっしゃいます。

診療所は夢でした。震災も落ち着いてきているので、次のステップとして、より多くの命を救いたい。

「いのちの会」を支えて下さっているのは、全国の皆さんからの物心両面にわたる支援です。その支えがあって初めて被災地に餌を運び、救護することができました。心から感謝を申し上げます。遠く福岡から、東京、北海道などから、たくさんの方がボランティアに駆けつけて下さりました。

皆さんから頂いた義援金は保護した動物へのワクチンや不妊手術、フィラリア予防薬、フロントライン代に使わせて頂いております。先を見据えてじっくり、しっかり支援を続けてゆきたいと思っております。全国のみなさん引き続きのご支援をよろしくお願い致します。

震災や災害が起きてからではなく、普段から飼い主としての自覚と責任を持つことが大切だと語る下机さんの声には、熱くて強い想いを感じました。

以下の送り先から「動物いのちの会いわて」への寄付や物資の援助が可能です。
詳しい活動内容などは、Webサイトをご確認ください。
保護した動物の新しい里親(飼い主)さんを募集する定例譲渡会も開催されていますので、気になった方はお問い合わせください。

動物いのちの会いわてhttps://inochiiwate.com/

[寄付金]
銀行振込:岩手銀行 矢巾支店 普通 1226098 動物いのちの会いわて
郵便振込:02250-1-58446 動物いのちの会・いわて

[支援物資送り先]
〒020-0507 岩手県岩手郡雫石町丸谷地37-42 動物いのちの会いわて・事務所 TEL:019-692-5920

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