ペットのトラブル法律相談所
CASE8 ペット虐待は器物損壊罪?動物愛護管理法違反?
i法律事務所の川内康雄先生がペットのトラブルに関するお悩み相談にわかりやすくお答えします!
ペット虐待は器物損壊罪?動物愛護管理法違反?
盲導犬が刺されたニュースを見ていたら、警察が「器物損壊罪」で捜査していると報じられていました。
犬が「器物」というのには違和感があるのですが、これはどうしてなんでしょうか。動物を傷つけたら動物愛護法によって罰っせられると聞いたことがありますので、動物愛護法違反で捜査したらいいと思うのですが
器物損壊罪(刑法第261条)は、およそ「他人のもの」を傷つけるときに成立する犯罪です。
気体、液体、動物、植物、不動産、自動車など、器物という表現に馴染むかどうかと関係なく、「あらゆる他人のもの」について成立します。その一方で、社会的に危険が大きい一定の器物については、特別に法律の規定により、器物損壊罪よりも重く罰せられることになります。
例えば住居を放火する行為は、単に家を燃やすだけで無く、その住民を危険にさらしますし、延焼によって被害を大きく拡大させます。そこで最高では死刑が科せられる重罪になっています。
また例えば浄水場の水源に毒を投げ込む行為は、その水系の住民全員に重大な危害を与えます。そこで器物損壊罪の倍の重さで罰せられます。
法律というのは社会的な意思形成の結果としての産物です。
動物に危害を与える行為が、他の「器物」とは異なる、特別の悪性があると認められるのであれば、今後法令改正や新法制定により、罰則が重くなるでしょう。
動物愛護管理法(正式名称は「動物の愛護及び管理に関する法律」)違反容疑で捜査をしないのは、動物愛護管理法の罰則の方が軽いからです。器物損壊罪の法定刑は「三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料」です。
一方、動物愛護管理法が禁止する「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者」(第44条1項)の罰則は「二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金」です。つまり、最高刑が、器物損壊が3年、動物愛護法違反が2年なのです。どうしてこうなっているかというと、器物損壊罪の法定刑の重さとのバランス問題です。
器物損壊罪が動物虐待に適用されるためには、被害を受けたのが「他人の」動物である必要があります。
つまり、自分が飼っている動物や、所有者が存在していない野良犬、野良猫を虐待して傷つけたとしても、器物損壊罪は適用されないのです。
動物愛護管理法第44条1項は、いってみればそのための規定で、たとえ自分の動物や自然の動物であったとしても、虐待をしてはいけないということを定めています。
「他人の所有物である動物」と「他人の所有物ではない動物」を傷つけた時に、重く罰せられるべきは前者であるため、そのバランスを取るべく、動物愛護管理法の方が軽くなっています。動物愛護管理法は、器物損壊罪では取り締まれない範囲を取り締まるためのものと考えてよいでしょう。
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