ペットのトラブル法律相談所

CASE6 ペットホテルで犬が熱中症にかかり、そのまま死亡してしまった。

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ペットホテルで犬が熱中症にかかり、そのまま死亡してしまった。

ジャック・ラッセル・テリアの飼い主だった者です。先日旅行に行くために近所のペットホテルに1泊2日で預けました。
2日目の午前中にペットホテルから電話があり、犬が熱中症にかかってしまったようだとの連絡がありました。
ペットホテルの担当者が動物病院に連れて行ったようで、私も旅行先から飛んで帰りました。
動物病院の先生は献身的に治療を行ってくれたのですが、衰弱が激しく、その日の夜までに息を引き取りました。
ペットホテルの話では、その日、想定外の熱帯夜だったというのです。そして空調を作動させていなかった一方で、窓も開けず、パソコンや冷蔵庫の放熱で室内の温度がどんどん上がっていたようです。

ペットホテルの責任者は私に謝罪し、一切の補償をすると話しています。しかし私の気が収まりません。家族で大事にしていた犬で、行儀が良く、とても家族になついていました。犬が当日味わった苦しみを思うと、不憫でなりません。管理責任を放置したペットホテルの責任者や担当者に処罰を受けさせることはできないでしょうか。


ペットホテルは、動物の預かり保管を専門とする事業者ですので、保管にあたって通常払うべき注意を払わずに、動物に危害を加えた場合には、飼い主に対して賠償責任を負う事になります。
今回の例では、犬が熱中症にかかりやすいことは、ペットホテルであれば当然知っていて然るべきです。たとえ想定外の気温であったとしても、それを見越して対策をしておくべきですので、飼い主に対して賠償義務を負うことになるでしょう。

具体的には、ペットの購入費用、葬儀費、治療費等が対象になります。
これらの「賠償」はいわゆる民事責任と呼ばれるもので、誰かと誰かの間の権利義務の有無の問題です。

一方、「処罰」は刑事責任と呼ばれる問題で、刑事法令に違反した者が、国から懲役、罰金等の処罰を受けるかどうかの問題です。刑事責任が発生するのは、問題が発生したときに既に存在している刑罰法規に違反した場合のみです。
ここで問題になるのが、ペットは法律上「物」として扱われているということです。
たとえば誤って人を傷つけてしまったときには、過失傷害罪という罪に問われます。一方、誤って人の物を壊してしまったときには、これを処罰する法令はありません。人の物を壊して処罰されるのは、故意的、つまりわざとやった場合だけなのです。刑法上の器物損壊罪もそうですし、動物愛護法上の処罰も故意的な場合だけです。そのため現在の法令では、このペットホテルの責任者や担当者に処罰を受けさせることはできないことになります。
ただ「処罰」そのものとは異なりますが、動物取扱業者としての登録を取り消させることはできるかもしれません。

熱中症が発生するぐらいですし、同時に被害に遭った飼い主がいるでしょうから、このペットホテルは運営基準に合致しない状態で運営されている可能性があります。
そこで被害拡大を防止するという意味で、監督官庁に申告し必要な調査をするよう告発するのです。
こういった活動の結果が出るかどうかは、告発者の熱意によるところが大きいですから、被害の状況をできるだけ、詳しく伝える方が良いでしょう。

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プロフィール

i法律事務所 川内康雄弁護士
大阪弁護士会所属。ITや知的財産に関連する事案を多く取り扱う。

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