ペットのトラブル法律相談所

CASE3 春のドッグランでの出来事です。

ペットのトラブル法律相談所

i法律事務所の川内康雄先生がペットのトラブルに関するお悩み相談にわかりやすくお答えします!


春のドッグランでの出来事です。

数ヶ月前、行きつけのドッグランに雄のトイプードルを連れて行って遊ばせていました。私は喉が渇いたので、テーブル席でコーヒーを飲んでいたのですが、なかなか戻ってこないので探しに行ったところ、なんと、建物の影になっているところで、他人の雌犬(チワワ)と交尾をしていたんです。そこにその雌犬の飼い主もやってきて、何とかお互いの犬を引き離しました。その場ではお互い「春ですから仕方が無いですね」と言って別れました。1ヶ月程度経ってから、またそのドッグランに行った際に、例の雌犬の飼い主がいて、「あの交尾で妊娠してしまったのだが、雑種を産ませたくないので薬を飲ませて中絶させた。その費用を半分負担してくれないか」と言われました。私は薬での中絶は犬の健康に望ましくないので、行うべきでは無いと考えているのですが、勝手に行われてしまった中絶の費用を負担しないといけないのでしょうか。


動物の交尾は自然界では自ずと発生する事で責任の問題が生じることはないですが、人が所有管理する動物については、責任の問題が生じ得ます。

他人の犬と自分の犬との不意の交尾については、お互いの犬の管理状態によって責任の有無が変わってくるでしょう。例えば、自分の雄犬が散歩中に逃げ出して、他人の家屋の敷地内に入り込み、そこで飼っていた雌犬と交尾を始めてしまった場合であれば、その結果について一定の責任を負う事になるでしょう。これは「飼い主として犬を管理下においておかないといけない」という義務に反したということと、「本来は勝手に入ってはいけない他人の敷地に入った」という義務違反から根拠付けられます。
その場合の対応は犬の健康にも関わることですから、飼い主同士が話し合って決めるべきことでしょう。ただ話し合いが着かない、又は、話し合いができない状況では、医療的処置が必要になる雌犬側の飼い主の意思が優先されるというべきです。

雌犬が避妊手術をしていれば妊娠しなかったのにと考える向きもありますが、避妊手術をする義務自体はありませんので、雌犬の飼い主に責任はありません。逆に、いつの間にか逃げ出して交尾を始める雄犬の飼い主について、去勢をさせなかったという義務違反の問題が生じえるでしょう。

今回の御相談のような、パブリックスペースでの責任の所在は判断が難しいです。
ドッグランといっても、広さや構造も様々でしょうし、会場の独自のルールも様々だと思います。

原則としては、ドッグランが、多くの犬の交流が不可避的に発生しうる場である以上、交尾のように生物的に自然発生する事象については、雄犬の飼い主が一方的に責任を負うということ無いでしょう。
ただ発情期だった犬から目を離してしまっていたということであれば、責任が何もないかというとそれは難しく、相手の飼い主と応分の責任を負担するのが妥当だと思います。この場合も話し合いが必要でしょうが、出産をさせるべきかどうかは、妊娠期間中や出産の負担、生まれた子犬への責任の問題から、やはり雌犬の飼い主の判断に委ねられることになります。

ですので処置の結果には不服かも知れませんが、「費用の半額負担」という結果自体は相当なもので、相談者さんが負担すべき費用であると考えられます。
なお裁判沙汰にまで発展したときには、妊娠の原因である雄が本当に相談者さんの犬かという立証・認定の問題が生じることになり、その結果によっても結論が分かれてきます。

バックナンバー

プロフィール

i法律事務所 川内康雄弁護士
大阪弁護士会所属。ITや知的財産に関連する事案を多く取り扱う。

こちらもおすすめ

page top