ペットのトラブル法律相談所
CASE1 愛犬の無駄吠えを理由に、隣人から精神科の治療費と薬代を請求されました!
i法律事務所の川内康雄先生がペットのトラブルに関するお悩み相談にわかりやすくお答えします!
愛犬の無駄吠えを理由に、隣人から精神科の治療費と薬代を請求されました!
マンションの2階でミニチュアダックスを飼っています。この部屋はペット飼育可の条件で借りました。
最近、ミニチュアダックスの無駄吠えが酷く、私が部屋にいるときは何とか止めさせているのですが、外出中も吠えていることがあるようで、隣室からクレームが来ました。隣室の住人が言うには、寝れなくて精神科にかかり治療費と薬代がかかった、その費用と迷惑料を払って欲しいとのことです。迷惑料とはいくらかと聞くと、3万円と言われました。私はこれらのお金を支払わないといけないのでしょうか。
状況により支払わないといけない場合があります。
犬は本来吠える動物ですから、単に吠えたことそれ自体で、慰謝料等の損害賠償責任が発生するわけではありません。もっとも、日本の裁判所では、「受忍限度論」という考え方が定着しており、「受忍限度」を超える迷惑をかけたときには、それ相応の賠償をしないといけないとされています。この受忍限度論はさまざまなシチュエーションで適用されるのですが、ペットの鳴き声による騒音についても、この考え方が適用されています。ペットの鳴き声を理由に損害賠償請求訴訟が提起されたケースは多数有り、裁判例がいくつもあります。
有名なのは、横浜地方裁判所昭和61年2月18日判決(判例時報1195号118頁)です。
この判決は・・・
「犬は本来、吠える動物であるが、無駄吠えを抑止するためには、飼い主が愛情を持って、できる限り犬と接する時間をもち、決まった時間に食事を与え、定刻に運動をする習慣をつけるなど規則正しい生活の中でしつけをし、場合によっては、専門家に訓練を依頼するなどの飼育が肝要である」と示し、必要なしつけをする事無く無駄に吠えさせて、隣家の住人に精神的苦痛を与えたとして、原告一人あたり30万円の損害賠償を命じました。
受忍限度を超えるとした理由は「一般家庭における飼い犬のそれとは大きく異なり、長時間にわたり、連日のごとく、深夜、早朝に及ぶなど、極めて異常」な状態であると認定したことにあります。
質問者さんのダックスの吠え方がどのような状況なのかによって、法的結論は変わってきますが、「普通ではない吠え方が続いている」ということであれば、損害賠償をする必要が出てきます。その場合、治療費の負担も必要ですし、一定の慰謝料の支払いが必要になります。
ペット可のマンションということですので、「住人はペットの鳴き声がすることをわかっていて入居した」という考え方もあり得なくはないですが、「ペットの鳴き声を我慢する意思で入居した」という認定をするのは難しいでしょう。
先の裁判例でも、「もともとペットを飼っていることがわかっている土地の隣地に家を建てたのだから、損害賠償請求できない」という被告の主張は、裁判所により却下されています。
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