ペットのトラブル法律相談所
CASE11 散歩中にリードが切れて通行人に怪我を負わせてしまいました。
i法律事務所の川内康雄先生がペットのトラブルに関するお悩み相談にわかりやすくお答えします!
散歩中にリードが切れて通行人に怪我を負わせてしまいました。
散歩用に新しくリードを購入しました。 とてもかわいいデザインで値段もそこそこ高かったのですが、一目惚れして購入したのです。
ところが使いはじめて1週間も経たないうちに、散歩中にそのリードが切れてし まいました。この時は犬が散歩に行きたがっていて、私をひっぱるようにしていたときでした。
リードが 急に自由になった愛犬が勢い余って通行人にとびかかってしまい、びっくりした 通行人の方は転んでけがをしてしまいました。
リードが切れた部分は、留め具の部分では無く、紐の中間部分あたりで、ちぎれたようになっていました。私はこの方の怪我について責任を負うのでしょうか。
メーカーにすべて対応をしてもらうことはできますか?
法的な責任と実際の対応が分かれる問題でしょう。
法的には、質問者さんは、通行人の方には100%の賠償責任を負う可能性が高いです。
法律上、共同不法行為という制度があり、複数名の行為が関連して誰かに損害をした場合には、その複数名が連帯して損害賠償責任を負うことになっています。
ここでの複数名の中の一人が、たとえ1%分の過失が無かったとしても、被害者に対する関係では、被害者を保護することを優先し、100%の責任を負うのです。
被害者の側は、その複数名の誰に対して請求してもよく、自分が被った損害の100%を請求する事ができます。
誰かから満額の賠償を受けることができれば、その後他の加害者に請求する事はできませんが、補償が100%になるまでは、どの加害者にも請求できるのです。
加害者側の誰かが100%分を賠償した場合には、加害者同士の責任を、事案に応じて分配して、他の加害者から回収することになります。
たとえば加害者がABCと3人いて、Aの過失が2、Bの過失が3、Cの過失が5の時に、Aが被害者に対して100%分の賠償をした場合には、Bから30%分を、Cから50%分を払い戻してもらう事ができます。
法律は、とにかく被害者には早く賠償をしてやって、後は加害者間で解決してと考えているのです。
質問者さんの事例も共同不法行為に該当しますので、自分の責任が完全に0%だと立証できない限りは、被害者に対しては100%の賠償責任を負います。
過失が0%だと立証することは非常に難しいので、責任を免れるのはかなり難しいでしょう。被害者に賠償をした場合には、その後、メーカー側の責任の割合に応じて、メーカー側からお金を返してもらう事になります。
メーカーが責任を負うかどうかは「当該製品が通常有すべき品質を欠いている」かどうかによります。
平たく言えば、「ふつうそんなことでは切れないでしょ」と言えるかどうかです。
そのため今回のリードが通常の使用できれるような品質であったということが立証できないといけません。
「絶対に切れない紐」というのが世の中には存在しないわけですので、リードとして通常の使用に耐えられないことを照明する必要があります。
実際には同じ製品が同じように切れるかどうかを検証することになるでしょう。
メーカー側の出荷時には正常でも店舗での展示中に損傷した可能性もありますが、その場合には店舗側の責任も発生し得ます。
以上が法的結論なのですが、読んでお判りの通り、法的にはかなり「難しい」対応になります。
質問者さんの無過失やメーカー製品の欠陥を立証することは、一般の方によっては容易なことではありません。そのため実際の対応としては、メーカーに対して、先頭に立って対応をするように求めるべきだと思います。これに対するメーカー側の反応はメーカーによってバラバラだと思います。最近は法的トラブルを毛嫌いする風潮もありますから、話を持ち込んでもけんもほろろな対応をするところも多いと思います。しかしインターネットメディアの発達により、風評リスクを避けることを優先するところも多く、自主的に対応をしてくれるところも多いはずです。
そのためまずはメーカー側の対応を求めるため、リードに問題があったことを具体的に説明し、それでもメーカー側が対応をしないときには、被害者側に説明をして、自分として責任を免れようとしてるわけでは無いものの、メーカー側の責任も追及して欲しいと依頼し、メーカー側を巻き込む形で解決していくべきだと思います。
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