ペットとシニア世代の関係

第3回 いつでも里子にだせるように育てよう。

ペットとシニア世代の関係

ペットと終生ともに暮らすシニア世代の支援をされている、NPO法人ペットライフネットさんに日本のペットとシニア世代の関係、そして犬猫殺処分数の現状についてお話しいただきます。


前回はシニアにとって飼いやすいペットについて考えてみました。では、いよいよペットを飼うことになりました。シニアのあなたなら、どのような心構えで臨みますか?
60歳を過ぎてペットを飼いはじめるのでしたら、「私にもしものことがあったら…」を大前提にしていただきたいものです。不吉な話で不快だと思われるかもしれませんが、飼い主が亡くなったために保健所(あるいは動物管理センター)に連れてこられるペットたちが多いのが現状です。保健所(あるいは動物管理センター)では遺棄されたペットの譲渡会などを開催し、引き取り手を探します。しかし、みつからないと殺処分されてしまいます。日本では、犬3.84万頭、猫12.34万頭、計16.2万頭が殺処分されています(平成24年度・環境省調べ)。自分の可愛がってきたペットが、もしもの場合このような最悪の事態になってしまわないよう、シニアがペットを飼うことにしたら心しておかなくてはならないことがあります。それは、「里子にだせるように育てる」という一言に尽きます。
では、あなただけの愛玩動物ではなく次の飼い主も可愛がってもらえるには、どのような育て方をすればよいのでしょう。忘れてはならない心構えを考えてみることにしました。

- 里子にだせる飼い方 -

【その1】: 人なつっこい子に育てよう。
動物管理センターで犬のトレーニングをされている方から譲渡会で引き取ってもらえる、すなわち殺処分がまぬがれることができるペットの特長を聞いたことがあります。答えは、犬種やブランド、年齢とは関係なく、他の人を怖がらないか、人なつっこいかのその一点でした。よくいわれる「社会性」を身につけているかどうかが最も大きな決め手となります。
犬の場合なら、毎日のように散歩に行く、時にはドッグカフェや犬と一緒の小旅行にでかけるなど、他の人や犬に触れる機会を積極的にもつことが大切です。外の環境に慣れると、突然の車のクラクションが起こってパニックになったり、他の犬にほえたり、人に噛みついたりする問題行動も防げるようになります。シニアにとっても、犬仲間という新しいつながりができ、社交的なおつきあいも増えます。犬の社会化に取り組むことは、シニア自身にとってアクティブな生き方を選び取ることになります。
猫の場合は、単独行動を好む習性があり、社会化はなかなか難しいといわれています。ただ生後2~7週間くらいまでに親猫に甘え、兄弟猫とたっぷり遊び、いろんな人間とも触れ、抱っこされて育つと社会性に富んだ性格になります。
成猫を里子にだすときは、ひとりで隠れることのできる秘密の場所や猫が好む段差のあるスペース、外界を見ることができる窓など、住環境を整えてあげることが大事です。

【その2】肥満にならないように育てよう。
猫を可愛がっているシニアの方から、こんな話を聞きました。「週一回は百貨店に行ってマグロのすり身を買ってきてやるの。ものすごく喜んでくれる。私が生きている間は、猫が大好きなものを好きなだけ食べさせてあげたい」。飼い主は、猫の食べっぷりをみてうれしいかもしれませんが、猫本人にとってこうした食事の与え方は本当に幸せなのでしょうか。
ペットは自分が食べたいものを自分で手に入れることができません。フード、量、回数、時間…すべてが飼い主の裁量で決められます。いってみれば、ペットを美食家にしたり肥満にしたりするのは、これ全て飼い主の管理責任です。
肥満のリスクは、猫なら心臓病、糖尿病、脂肪肝など。犬も、心臓病に肝臓病、さらには関節炎にかかります。いったん太ってしまったペットの体重コントロールは、食事の管理しかなく、とても難しいものです。それに肥満児は将来大病を患うかもしれません。里子にだそうとしたとき、新しい飼い主が、コロコロ太ったペットを果たして可愛いと思ってくれるでしょうか。

【その3】じっくり観察した育児日記をつけよう。
里子にだす際、かならず問題行動はないかチェックされます。トイレの粗相、噛み癖、無駄吠え、おびえ癖…など。これらの「問題」は、人間側が決めたことでペットは自分が問題だとは思ってもいないはずです。
仔犬がクッションをやたらと噛みだした場合、これは歯が生え変わる時の生理的な現象です。あるいは撫ぜようとして指をかまれたときは、遊びの延長か触って欲しくないところを触られてイヤだという意思表示でしょう。いずれの場合も、日ごろからペットをじっくり観察していたら、自分の子の気持ちはある程度推察できるものです。いつもの態度や行動と違っていたら、ペットに何かの異変が起こっていると考えるようにしてください。ペットたちはモノをいうことができません。それをいち早く感じとり、対処するのが飼い主の務めです。
そして、自分の子の性格やクセを育児日記にきめ細かく記載してあげてください。このノートが、次の飼い主の方へいのちをつなぐ絆になります。

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