ドッグライフプランはしもとさんの日日是好日コラム

大阪市内を中心に活動中のドッグライフカウンセラードッグライフプランはしもとさんによるワンちゃんとの暮らしにまつわるコラムです。

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数年前、あるマンションのペットクラブのお世話係をしている男性のところに、マナー啓発についてのお話で呼ばれた時の話です。
マナー啓発のお話の後、愛犬のしつけの話になりました。

そのお宅はご夫婦の2人で、オスの柴を飼っていました。
ご主人は実家で秋田など大型犬を飼っていたこともあり、ご本人曰く「軍隊式」の、昔ながらのしつけをしていました。犬になめられてはいけないと、少しでも間違ったことをすると叩いて、日ごろから厳しくしつけていたのです。
その甲斐あって、訓練はほぼ完ぺきです。オスワリ、フセ、マテは忠実に言うことを聞くようになりました。でも、その飼い主さんには悩みがありました。「他の犬や人と出会うと激しく吠える」「妻が全く扱えない」と言うのです。

部屋の隅には柴ちゃんがちょこんと座っていました。なんだか自信がなさそうで、不安げな顔をしていました。私はなんとなく、この子が吠えたり噛んだりするのは、気が強いのではなく、自己防衛のためなのではと思いました。性格に対して体罰や訓練が厳しすぎて、不安でいっぱいのように感じました。

そこで飼い主さんには「ダメもとで、半年、体罰をやめて、命令もやめて、散々甘えさせてください」とだけ伝えました。飼い主さんも愛犬への愛情は本物で、実践してくださいました。
しばらくして、いつも無表情だった柴ちゃんが、笑顔を見せるようになりました。うちの子の笑顔を初めてみた。と雷に打たれた思いだったそうです。さらに、これまでは寝ていても、何メートルか距離をとっていたのが、飼い主さんの横でくつろぐようになりました。
どんどん変化が見えてくるので、体罰や厳しい命令口調を封印する生活をさらに続けました。するとやがて、奥さんが愛犬と散歩に行けるようになりました。

そしてついに、他の犬を見ても、人を見ても、一切吠えることが無くなり、今では奥さんと柴ちゃんだけで、車に乗ってドッグカフェまで行って楽しめるまでになりました。
柴ちゃんの変化に、マンションのお友達も驚き、「いったいどんな訓練をしたのですか？」と聞かれたら、飼い主さんは胸を張ってこう答えるそうです。

－－－訓練をやめたんです。

・・・これは、しつけをきちんとしようという気持ちが強すぎると逆効果になってしまうことがある。という一つの例です。もしこの文を読んでいらっしゃる方の中に、訓練をこんなに頑張っているのに、愛犬の攻撃性や無駄吠えが治らない。という方は、一度、訓練をやめてみて、甘えさせてみてはいかがかな。と思います。