ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

第23回 1匹でお留守番できません、それって分離不安?

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のエッセイ -Wanderful Life-

ペット心理行動カウンセラー佐藤えり奈先生のワンちゃんの問題行動にまつわるエッセイです。


不思議なことに、この犬の問題行動を解決する行動カウンセリングというお仕事をしていると、同じような相談が続くことがあります。ここしばらく続いている相談は「1匹でお留守番ができません。」というお悩み。

1匹で留守番ができない=分離不安。と考える専門家も多いと思います。
分離不安とは、飼い主がそばにいないとき、犬が不安に感じること。そしてその結果、犬は不適切な排泄(普段はできているのに、おしっこやうんちをトイレ以外の場所でする)や、破壊行動、吠え続けるといった行動をします。
そのため、留守にしていて帰宅すると部屋がめちゃくちゃ!といった状態になっています。

しかし、私はこういった状態にある犬を「分離不安」とはいいません。
分離関連障害(Separation-related Disorder)と私は呼んでいます。

なぜなら、犬は不安だけではなく、不満や葛藤といったもっと複雑な心理状態になっていることもあるのです。
そして、部屋がめちゃめちゃになっているとき、それは不安という単純な理由だけでなく、不安だったり退屈だったり、様々な気持ちの葛藤の現れとして犬が部屋を荒らしていることもあるのです。

そのため、「お留守番ができません。」という飼い主さんには、まずはじめに留守中の様子をビデオ録画をしてもらい、その様子を拝見します。そこで初めて診断します。

先日、家の中で大型犬を飼っていらっしゃる方から、留守番ができないという相談がありました。
ビデオを見てみると、どうやら犬は少し不安を感じつつも、退屈という気持ちで部屋で大暴れをしていました。
普段は禁止されている机の上に上がって寝たり、まあそれはやりたい放題(笑)。まだ若い犬だったこともあり、その後さほど時間もかからず解決したようです。

分離関連障害というのは、病気ではありません。1匹でいることに対して自分自身で気持ちを処理することや、行動を抑制することを知らないだけなのです。
分離不安がある犬の場合、よくお留守番の時間帯をだんだんのばしていくという方法がとられることがありますが、私はそれ以前にまずは、犬に心の抑制法やその犬のメンタルキャパシティを広げてあげることを一番にもってきます。
犬自身に対処できる心の余裕を持たせてあげるのです。要は心のトレーニングです。
この方法は、おすわりやフセのように一瞬で学習するというわけではなく、それなりに時間はかかりますが、必ず解決します。

あなたが留守にしたとき、部屋は荒らされていませんか?
よく『留守にすると怒ってうんちやおしっこをしている』という飼い主さんがいますが、それは怒りのサインではなく、愛犬からのSOSかもれしません。

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プロフィール

佐藤 えり奈(さとう えりな)/京都市生まれ
ペット心理行動カウンセラー/行動コンサルタント/CAPBT MEMBER
伴侶動物行動学・養成資格
Diploma in the Practical Aspetcts of Companion Animal Behaviour and Training(英国COAPE公認資格)
ミネソタ大学 理学士
University of Minnesota Twin Cities B.Sc.
生物科学部生態進化行動学科卒業(米国)

幼少の頃から、大の犬好きが高じて犬の行動カウンセラーとなる。アメリカで行動学を、イギリスで犬猫の行動心理学を学び、現在は、関西を中心に犬の心理状態を考慮しつつ、行動学をもとに問題行動を解決するペット心理行動カウンセラーとして活動中。
著書に「イヌの「困った!」を解決する」(サイエンス・アイ新書)

◇関連リンク◇
佐藤えり奈先生のホームページ → http://www.petbehaviorist.info/

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